【前作、紗季の湯浴み着編はこちら↓】
紗季はいつものように一人旅を楽しんでいた。
誰にも気を遣わず、自分のペースでのんびりできるのが心地いい。
今回もふらりと旅に出て、海沿いの小さな温泉旅館を予約していた。
到着して受付を済ませようとすると、フロントの女性が申し訳なさそうに頭を下げた。
「申し訳ありません。実はダブルブッキングが発生してしまっておりまして…」
思わぬトラブルに、紗季は目を丸くする。
まさか、部屋がないとは。今から他の宿を探すにも、この辺りに空きがあるかどうか…。
「もしよろしければですが…」
オーナーと名乗る年配の男性が奥から現れ、そう切り出した。
「うちは民泊もやっていまして。よろしければそちらに宿泊されませんか?こちらと同じ食事もお出しいたします。」
少し考え込む紗季を見て、オーナーはにっこり笑ってこう付け加えた。
「温泉もあります。」
それを聞いた瞬間、紗季の表情が明るくなる。温泉──それは彼女にとって旅の最大の楽しみ。
「ぜひ、お願いしたいです!」
案内されたのは、町のはずれにある落ち着いた平屋の建物だった。
古びてはいるものの清潔に整えられ、どこか懐かしい雰囲気が漂っていた。
「昔、旅館だったのを買い取って住んでましてね。最近は旅行客も増えてきたので、いくつか部屋を開放してるんです。」
なるほど、それで温泉もあるのかと紗季は納得する。
ひと息ついてから温泉に入り、ゆっくりと体を温めたあと、夕食の時間になった。
食事は大広間で、宿泊者みんなでいただく形式だった。
紗季の隣には、夫婦とその子どもと思われる小学生の兄弟が座っていた。
「初めて来たんですけど、すごく落ち着きますね。」
そう話しかけると、夫婦もにこやかに応じてくれて、会話が自然と弾んだ。
普段あまり飲まない日本酒をすすめられ、紗季もつい杯を重ねてしまう。
「……ちょっと酔っちゃった。」
子どもたちにも話しかけたが、兄弟は恥ずかしがっているのかもじもじと頷くだけだった。
そんな和やかな時間が過ぎ、各自部屋へ戻ることに。
「また明日ね。」
紗季が笑って手を振ると、兄弟は小さく手を上げて隣の部屋へ入っていった。
紗季の部屋は、今どき珍しいふすまだけで仕切られていた。
どこか落ち着かない気もしたが、お酒のせいかすぐに眠気がやってきた。
──翌朝。
目が覚めた瞬間、肌寒さを感じて、思わず自分の体を見る。
浴衣ほとんど脱げかけていて、腰ひもでかろうじて押さえている状態であった。
「……えっ、うそ。わたし、寝相そんなに悪かったっけ?」
赤面しながら慌てて身なりを整え、昨夜の記憶を探るが、途中から曖昧だった。
やっぱり日本酒なんて飲むんじゃなかった、とひとり反省しながら朝食の場へと向かう。
ちょうど隣の部屋から兄弟が出てきたところで、紗季は笑顔で声をかけた。
「おはよう。」
その瞬間、ふたりともぴたりと動きを止め、目を合わせると赤面しながら小さな声で返事をした。
「……おはようございます。」
広間にはすでに両親がいて、明るく挨拶してくれる。
紗季も席につくが、兄弟たちはどこか落ち着きなく、顔は真っ赤で目を合わせてくれない。
少し不思議に思うが、今日の旅の予定も詰まっているのであまり気にすることはなかった。
旅行から帰り、紗季は久しぶりに自宅のソファでくつろいでいた。
荷ほどきもひと段落し、少し手持ち無沙汰になったところで、ふと思いつく。
せっかくだし、旅先で撮影したビデオを見返してみよう──。
カメラをテレビに繋ぎ、大画面で再生していく。
夕方の海、静かな駅舎、旅館の中庭。
あそこは綺麗だったな。あの道は少し危なかったな。
思い出がよみがえり、自然と頬がゆるむ。
そこで一日目の映像は終わる予定であった。
画面が切り替わり、最後の映像が流れた。
暗い室内──見覚えのある布団。あれは、自分が泊まった部屋だろうか。
違和感に眉をひそめた瞬間、画面がくるりと反転する。
映し出されたのは、兄弟のうちの下の子の顔だった。
「兄ちゃん、これ映ってるのかな?」
「壊すなよ。」
幼い声が、ひそひそと聞こえてくる。
部屋の中。真夜中のようだった。
どうやら、ふたりは夜中に紗季の部屋に忍び込んでいたらしい。
「お姉ちゃん起きてる?」
問いかけるような声。だが、返事はない。
酒が入っていた紗季は、その夜ぐっすり眠っていたはずだ。
映像は暗視モードに切り替わる。
緑がかった画面の中で、布団に横たわる自分の姿がはっきりと映っていた。
寝顔に近づくカメラ。
頬をぷにぷにとつつかれ、鼻を持ち上げられてブタ鼻にされている。
画面の向こうで、くすくすと笑い声が重なる。
思わず口元が引きつる。
あの兄弟め──と、怒りというより呆れに近い感情が胸の奥に広がっていく。
「兄ちゃん、布団どけちゃおうか?」
弟の小さな声が響いた。
それに対し、兄が慎重に言葉を返す。
「起きないようにしろよ。」
ふたりは、そっと、けれど確実に布団をめくっていく。
画面の向こうで進行する映像に、思わず「ちょっ…!」と声が出るが、当然止まるはずもなかった。
布団の下から現れた自分は、浴衣の胸元が少しはだけ、谷間がのぞいている。
一瞬、ホッとする。すべてが見られていたわけではない──けれど。
カメラの揺れが止まる。少年たちは無言だった。
その沈黙に、これまでの子どもらしい悪ふざけとは違う空気が漂い始める。
ふたりは顔を見合わせると、手を伸ばし、左右からゆっくりと浴衣を開いていく。
プルン、と弾むように胸が露わになった。
暗視カメラの映像越しに、それがはっきりと映っていた。
画面の中、自分の身体が無防備に晒されていく様子に、紗季は思わず息を呑んだ。
胸がはだけ、寝息すら聞こえている。どれだけ深く眠っていたのか、自分でも信じられなかった。
知らないうちに──いや、知らされることもなく。
こんなことをされていたなんて。
リモコンを握る手が汗ばむ。
恥ずかしさと怒りと、何より、どうしようもない悔しさがこみ上げてくる。
兄弟たちは無言のまま、カメラを固定して手を動かしている。
その動作に、一切の悪気が見えないのが逆に恐ろしかった。
まるで、ただの「探検」でもしているかのように。
まさか寝ている間にこんな事をされていたなんて。
でも下着を着けていなかった私も悪かったと少し反省してしまう。
そんな中、2人はそっと私の先端をつつきはじめた。
そして恥ずかしくも反応してしまう乳首。
私が起きないことを悟ったのであろう、遠慮無く揉みはじめた。
「……っ」
その場にいたら、きっとビンタの一つもしていただろう。
でも映像の中の自分はただ眠っている。何も知らずに。
再生は止まらない。時間だけが、淡々と流れていく。
画面の中で、カメラが下へと移っていく。
次の瞬間、遠慮のない手つきで、浴衣の裾が大きく捲られた。
「兄ちゃん、毛が生えてる…!」
驚きを隠せない声が響く。
「大人なんだから当たり前だろ。」
やり取りがあまりに無邪気で、それが逆にひどく現実味を帯びていた。
画面に映る自分の身体。
下半身まで露わになった姿に、リモコンを持つ指先が震える。
(なるほど…)
そう思った。
あの朝、目覚めたとき浴衣が腰ひもだけになっていた理由。
今さらながら繋がった。
妙に冷静だった。
いや、冷静でいようとしていたのかもしれない。
ここで終わるだろうと思っていたが、兄が無言で足を開いていく。
足と足の間にカメラを置いて。
「ここから赤ちゃんが生まれてくるらしいぞ。」
そんなところまで見るつもりなのか…。
カメラにはピタっと閉じているそれが映し出されている。
そして兄弟は2人で片方ずつゆっくり広げていく。
もうやめてくれと祈りながらそれを見守るしかなかった。
遠慮無く広げられ、画面いっぱいに中が映ったその瞬間、画面が大きく揺れた。
寝返りを打った自分の足が、ちょうどカメラを蹴り飛ばしたのだ。
「わっ!」
「逃げろ!」
慌てた声とともに、映像は途切れる。
ブツリと切れた無音の画面に、紗季はしばらく言葉を失っていた。
エピローグ
カメラには、すべてがはっきりと映っていた。
けれど──最後の一線だけは、きっと守られていたはず。
直接は、見られていない。見られているはずがない。
そう何度も繰り返しながら、紗季は顔を枕に埋めてばたばたと暴れていた。
思い出すたびに頭が熱くなる。
「あのエロガキどもめ……次会ったときは、ただじゃおかない……」
普段の自分では考えられないような言葉が、口を突いて出た。
けれど、どうしようもなかった。
子どもに好き勝手されてしまったという、取り返しのつかない事実だけが残っている。
ふうっと深く息を吐いて、天井を見上げる。
──お酒には、気をつけよう。
心からそう誓う、紗季であった。
【次作、紗季の骨折はこちら↓】




💬 ご意見・ご感想はこちらへ。