夏が近づいてくると、どうしても気になってくる。
半袖、スカート、水着……露出が増える季節。
毎年ギリギリになって慌てて自己処理をしてきたけれど、今年こそはちゃんと全身脱毛をしようと決めていた。
早速カウンセリングの予約を入れてみることにした。
カウンセリング当日、駅から少し歩いた先にある白を基調としたクリニックへ向かった。
外観は清潔感があり、まるでカフェやブライダルサロンのようなおしゃれな雰囲気だった。
看板も控えめで、落ち着いた印象を受ける。
中に入ると、やさしいアロマの香りとふんわりとした照明に包まれたロビーが広がっていた。
受付には白衣を着たスタッフが立っており、丁寧な口調で出迎えてくれる。
建物は全体が脱毛専門の施設になっており、施術室やカウンセリングルームなどが整然と配置されている。
“評判のクリニック”という言葉に違わず、細部にまで気を配られている印象だった。
「どうぞ、こちらへ。」
案内された個室には、優しそうなカウンセラーの女性が座っていた。
笑顔がやわらかくて、少しだけ緊張がほぐれる。
最初は、脱毛の仕組みや施術の流れについて丁寧に説明してくれた。
そこまでは良かったのだけれど──いよいよ料金の話になったとき、私は思わず黙ってしまった。
「……やっぱり、全身となるとこれくらいはかかってしまいますね。」
「……そうですよね……」
想像していたよりも、ずっと高かった。
分割払いや学割もあるというけれど、大学生の私にはかなり厳しい金額だった。
きっと顔に出ていたのだろう。
カウンセラーのお姉さんが、少し声をひそめて言った。
「実は……モニターのご案内もできるのですが、いかがですか?」
「モニター……ですか?」
「はい。条件つきにはなりますが、施術費は全額無料になります。内容としては、施術中の写真と動画の撮影にご協力いただく形になります。」
やっぱりか、と思いながら話を聞くと、条件は以下の通りだった。
・施術中の写真と動画を撮影
・写真はホームページに使用(顔出しなし・デリケート部分は修正済み)
・動画は社内研修用に使用(同様に修正あり)
・いずれも、使用前に事前確認が可能
「もちろん、無理にとは言いません。でも、実際にモニターで受けられた方の満足度は高いですよ。気になるようでしたら、一度検討してみてくださいね。」
そう微笑まれて、正直、少し気が緩んだ。
(……確認できるなら、大丈夫かもしれない)
(……恥ずかしいけど……無料はやっぱり魅力だし)
(……うん、やってみようかな)
迷いながらも、私は頷いていた。
「……モニター、受けてみたいです。」
そう伝えると、カウンセラーは軽く頷いて、追加の説明を始めた。
「ありがとうございます。それでは、施術は一週間後になります。未成年ですと問題がありますので必ず身分証をお持ちください。」
「そのあいだ、ムダ毛の処理は一切しないようお願いします。」
「本来はご自身で処理してきていただくのですが、モニター様は研修用の撮影も含まれますので──剃毛のシーンから撮らせていただく形になります。」
「……剃るところから……ですか?」
「はい。こちらで丁寧に対応しますし、撮影部分にはすべて修正を入れますので、ご安心ください」
思わず一瞬、口元に手を当ててしまった。
処理前の状態なんて他人に見せたことないし、それを撮られるなんて──
(恥ずかしい……けど、今さらやめるって言い出すのも、なんか逃げみたいだし)
(……修正されるし、顔も出さないし……大丈夫、大丈夫)
「……わかりました。大丈夫です。」
自分に言い聞かせるように、私はそう答えた。
施術当日の朝。
鏡の前に立ち、自分の体をじっくりと見つめた。
そこまで体毛が濃い方ではない。
腕や足も、よく見れば生えているのがわかる程度で、そこまで目立つわけじゃない。
でも──問題は別の場所だった。
ワキは、もうしっかりと生えそろっている。
黒く太めの毛が、何本も主張するように伸びていた。
いつもなら見つけ次第すぐに処理しているのに、ここ数日は我慢していたせいで余計に気になる。
そして、アンダーヘア。
しばらく放置していたせいで、明らかに“剃り頃”になっているのが分かる。
下着の中でごわつく毛の存在が、今さらながらに気になって仕方なかった。
(……これを見せるのか……)
思わずため息が漏れる。
いくら顔は出さないって言われても、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。
それでも、自分からモニターをやると決めた以上、いま剃ってしまうわけにはいかない。
(大丈夫。ちゃんと修正は入るって言ってたし……)
(もう、やるしかない)
私は、腕や足があまり出ない服を選んだ。
少し丈の長いカーディガンを羽織り、風通しは悪いけれど気になる部分は隠せる。
なんとなく周囲の視線が気になる気がして、マスクも着けた。
心臓の鼓動がいつもより少し速いまま、私はクリニックへと向かった。
クリニックに到着すると、すぐに受付に名前を告げた。
「お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ。」
通されたのは前回と同じカウンセリングルームだった。
担当してくれたのは、あの穏やかなカウンセラーの女性だった。
「本日はよろしくお願いしますね。」
そう言って微笑まれると、少しだけ安心した。
簡単な問診のあと、肌の状態を確認される。
赤みやトラブルもなく、問題はないとのことでいよいよ撮影に入ることになった。
「では、まずは撮影スタジオの方へご案内しますね。」
案内されたのは、壁が白くライティング機材の整った部屋だった。
背景用のスクリーンと、カメラ。
そこには、白衣を着た女性スタッフが数人待機していた。
「こちらで衣服をすべて脱いでください。」
その一言に、思わず一瞬だけ動きが止まった。
──全裸。やっぱり、そうなるのか。
一呼吸置いて、私はゆっくりと服を脱ぎ始めた。
上着を脱ぎ、インナーを脱ぎ、最後にショーツまで下ろす。
何も身に着けていない自分の姿が、照明の中に晒されていく。
「では、スクリーンの前に立ってください。手は真上に上げて、足は肩幅くらいでお願いします。」
言われるまま、私は両手を上げた。
その瞬間、脇の毛があらわになったのがわかった。
そして当然、股間も隠せない。
まさか、ここまであけすけに撮られるとは思っていなかった。
写真はパーツごとに撮るものだと勝手に想像していたのだ。
スタッフの指示で何枚か撮影が行われる。
正面、斜め、側面、背面。
背中側も、当然丸見えのまま撮られた。
「次はパーツごとの撮影に移りますね」
場所を少し移動して、今度はアップでの撮影に入る。
腕、ワキ、おへそ、脚。
それぞれの部位が丁寧に、そしてしっかりと撮られていく。
「では、続いてVIOの撮影に入ります。こちらのベッドへどうぞ。」
言われるがまま、移動する。
シーツの敷かれたベッドに仰向けに寝かされ、Vラインの撮影が始まった。
「脚は軽く開いてくださいね」
やや開かされた状態で、カメラが股間に近づいてくる。
レンズが明らかにVラインを捉えているのがわかる。
照明の熱がじんわりと当たるたび、汗ばむ感覚が伝わった。
「次はIラインに移ります。両膝を立ててください」
両足を曲げると、より股間が開く。
そこを、まず普通にアップで撮られた。
次に──
「すみません、ご自身で開いていただけますか?」
「えっ……自分で、ですか?」
「はい。左右にしっかりと。もう少し、大きく。」
言われるまま、戸惑いながらも股を開いた。
指で、左右の脚の付け根を思い切り広げるようにして。
羞恥がこみあげてくるが、もう止められない。
「はい、ありがとうございます。では、Oラインに移ります。体をうつ伏せに。」
体勢を変えると、今度はお尻が大きく露出する。
スタッフにより左右の尻をそっと開かれ、肛門がしっかり見える状態でカメラが近づいてきた。
(……こんなにまで……撮るんだ……)
すこし、後悔の気持ちがよぎった。
けれど、もう遅かった。
「では、これから剃毛に入りますね。撮影も引き続き行いますので、よろしくお願いします。」
私は再びベッドの上に寝かされ、照明の当たる中何も身に着けていない自分の体をさらけ出していた。
まずは腕。スタッフが優しく電気シェーバーを滑らせる。
次に足。ふくらはぎから太ももまで、ていねいに剃られていく。
そこまでは、まだよかった。
「続いて、ワキを処理していきますね。……あっ、しっかり生えてますね。」
言われた瞬間、顔が熱くなるのがわかった。
わかってはいた。数日間、我慢していたのだから当然だ。
でも、あらためて他人の口から言われると、どうしてこんなに恥ずかしいのだろう。
「はい、終わりました。では、こちらアップ撮らせていただきますね。」
剃りたてのワキを、すぐさま至近距離で撮られる。
カメラのレンズが、さっきまで毛が生えていた場所をじっくりと捉えていく。
「……あ、すみません。乳輪のところに毛が生えてますね。」
「えっ……?」
思わず声が漏れた。
自分ではあまり気にしていなかったけど、確かに産毛のようなものが数本、乳首のすぐ近くに伸びていた。
「こちら、まだ撮影していなかったので、一度撮らせてください。」
言われるまま、照明がそちらに向けられ、乳首のアップを撮影された。
その後、毛抜きを手にしたスタッフが言った。
「こちらは剃らずに、一本ずつ抜いていきますね。」
細い指先が、自分の乳首の近くに触れる。
毛をつまんでは、引き抜かれる。ぴっ、ぴっ、と地味な痛みが走るたびに、胸の先が少し反応してしまいそうになる。
「はい、抜き終わりましたので、もう一度撮りますね。」
また、カメラが近づいてくる。
何度も、乳首の周りをシャッター音が包んだ。
「続いて、VラインとIラインの処理に移りますね。」
体勢を変え、脚を大きく開かされる。
「他の部位は比較的薄めですが……陰毛は広範囲に生えてますね。」
その一言に、またも顔が真っ赤になる。
羞恥のあまり、言葉が出ない。
スタッフは特に気にする様子もなく、淡々と処理を進めていく。
毛の流れに逆らうように、シェーバーが肌の上を滑っていく。
痛みはない。むしろ──
Iラインの処理に移ったとき、シェーバーを支える指が、思わぬ場所に触れた。
ちょうど、敏感なところをかすめるようにして。
(やば……っ、これ……)
身体が一瞬びくりと震えそうになるのを、なんとか堪えた。
声が出ないように、唇をかみしめる。
「はい、きれいに剃れましたよ。撮影しますね。」
そう言われて、VとIラインのアップをまた撮影される。
「……綺麗な形してますね。」
そんな一言が、さらに恥ずかしさを煽る。
「最後に、Oラインを処理していきますね。うつ伏せになってください。」
体勢を変えると、スタッフが何かクリームのようなものを手に取った。
「少しマッサージを入れますね。」
そう言って、指先が肛門のまわりをゆっくりと撫でるように動く。
ひんやりしたクリームの感触と、柔らかい手つき。
くすぐったさと、妙な気持ちよさが入り混じる。
(声……出ちゃいそう……)
必死に息を止め、震えを抑える。
Oラインの処理が終わり、肛門まわりもツルツルになったところで、
「では、こちらも撮影しますね。」
と、またシャッター音が響いた。
処理と撮影がすべて終わったかと思ったとき──
「すこし確認いただきたいのですが、こちらですね……」
モニターに映し出されたのは、撮ったばかりのIラインとOラインの画像だった。
まじまじと見ることなんてなかった、自分のあそこ。
しかも、恥ずかしいほど鮮明に、拡大された画像。
「綺麗に剃れていますね。問題ないかご確認ください。」
「…………はい……」
かろうじて返事をしながら、私はただただ、顔から火が出そうな気持ちを抱えていた。
施術ベッドに横になり、いよいよ脱毛照射が始まった。
まずは腕から。
ジェルを塗られ、パチッと軽い刺激が走る。
それほど痛くもなく、スムーズに終わった。
足も同様だった。
照射のたびにわずかな熱を感じるものの、思っていたよりもずっと楽だった。
ワキに移っても、その印象は変わらなかった。
「はい、ワキもきれいですね。」
淡々と進む施術に、私は少しホッとした。
(思ったより、全然平気かも……)
そう思った次の瞬間だった。
乳輪に照射されたとたん、ビリッとした刺激が胸に響いた。
なぜかその痛みが、どこか気持ちよくて──
「あっ……」
反射的に声が漏れ、乳首がピンと立ってしまった。
「ふふっ……敏感みたいですね。」
スタッフの女性に、くすっと笑われる。
(やば……恥ずかしい……)
胸のあたりがじわじわ熱くなるのを感じながら、次はVラインへ。
ここでも、ジェルを塗られ、同じようにパチンと照射される。
けれどそのたびに、下腹部にズンとした快感が走った。
気づけば、自分でもわかるほど、そこが濡れてきている。
(なんで……こんな……)
混乱しながらも、脚を開いたままじっと耐える。
続いて、Iラインに移る前に、スタッフが声をかけてきた。
「少々、失礼しますね。」
そう言うと、左右の脚を開かされた。
そして──クパッと広げられ、濡れていた部分を無言でティッシュで拭かれてしまう。
「……っ!」
あまりの羞恥に、思わず両手で顔を覆った。
こんなこと、見られたくなかった。
それなのに、自分の体は──勝手に感じてしまっている。
Iラインの施術が始まる。
脚を大きく開いた状態で、押さえてくれている手が敏感なところをかすめるたびに、身体が震えそうになる。
照射の痛みが、どうしてか、快感に変わっていく気がしていた。
(ダメ……こんなの……)
けれど、もう止められなかった。
「もうすぐ終わりますね。」と言われた直後、体がびくんと跳ねる。
勝手に、腰が浮いてしまう。
「あっ……あ……!」
ついに──イッてしまった。
「あの、お客様。」
スタッフの女性が、少しきつめの口調で言った。
「こちら、そういうお店ではありません。がまんしてください。」
「施術中にイッてしまう方なんて、普通いませんよ?」
真顔で言われ、その場にいたたまれないほど恥ずかしかった。
そして最後はOライン。
お尻を高く突き出すように体勢を変えさせられる。
「では、お尻の処理に入りますね。」
またも、指にクリームを取ると、肛門のまわりをやさしくなぞられる。
それだけで、息が詰まりそうになるほど敏感だった。
けれど──お姉さんの指は、なぜか、ずっとクリトリスのあたりにも触れている。
(えっ、そこ……っ)
お尻の照射が始まると、その刺激もまた、快感に変換されてしまう。
「……んっ……!」
思わず、声が漏れてしまった。
「お客様、二回もイクなんて恥ずかしいこと、しませんよね?」
またしても、淡々としたトーンで諭される。
(やめて……そんなこと言わないで……っ)
それでも、もう自分では止められなかった。
Oラインの処理が終わると同時に、私の体はまた震えた。
恥ずかしいくらいに、絶頂を迎えてしまっていた。
「失礼しますね。」
何も言えない私の脚を左右に思いきり開いて、スタッフは下の処理を始める。
拭かれるたびに、余韻が波のように襲ってくる。
カメラが、どこかで回っていることなんて──
そのときの私は、もう忘れていた。
こうして、モニター初回の施術は終わりを迎えたのだった。
施術がすべて終わると、部屋を出て再びカウンセリングルームに案内された。
あの優しいカウンセラーのお姉さんが、変わらぬ笑顔で出迎えてくれる。
「お疲れ様でした。いかがでしたか?」
(……あのこと、知られてない……?)
あんなにも激しく体が反応してしまったのに、表情一つ変えずに接してくれるその姿に、少しだけホッとした。
「……恥ずかしかったですけど、なんとか終わりました。」
そう答えると、カウンセラーはやわらかく頷いた。
「よかったです。今回が初回でしたが、全部で10回ございます。あと9回、同様のモニターを続けていただけますか?」
一瞬だけ迷ったが──あの恥ずかしさを乗り越えた今なら、もう大丈夫な気がした。
「……できれば、やらせてください。」
「ありがとうございます。」
後日、画像と動画のチェックの日が設けられた。
専用の個室で、修正済みの写真と編集された動画がモニターに映し出される。
画質はとてもクリアなのに、不思議なくらい「大事な部分」が何も見えない。
乳首や局部、アナルまわりも、すべて丁寧に修正されていた。
動画の方も、あの──思わずイッてしまった場面がどうなるのか心配だったが、
ちょうどその直前からフェードアウトし、自然に他の部位の映像に切り替わっていた。
(……すごい。これなら……誰が見ても、わたしだなんてわからない)
「こちらの内容で問題ありませんか?」
「はい、大丈夫です。」
そう答えた私に、お姉さんはそっと封筒を差し出してきた。
「よろしければ、こちらでお茶でも飲んでください。」
中には、一万円札が一枚入っていた。
「えっ、でも……これは無料のモニターで……」
「はい、あくまでお気持ちです。撮影にご協力いただいたお礼として。どうしても、受け取っていただきたいのです。」
丁寧に頭を下げられ、断り切れずに封筒を受け取る。
(無料どころか、お金までもらえるなんて……)
恥ずかしい思いはしたけれど──
それでも、結果的には悪くなかったのかもしれない。
そんな気がしてしまった自分に、少しだけ苦笑いした。
エピローグ
彼女は、まだ知らなかった。
表向きには、誠実な施術と丁寧な対応で評判の高い脱毛クリニック。
公式サイトにも、スタッフ紹介や施術風景、モニターの声が並んでいる。
すべてが清潔で、安心できる場所──そのように見えていた。
しかし、その裏には、もうひとつの顔があった。
限られた一部の者しかアクセスできない、裏サイト。
そこでは、無修正の画像と映像が、すべて公開されていた。
「20歳、JD。顔A、美マン度A。Dカップ、乳首の色ピンク。」
「2回絶頂。詳細は画像で。」
「動画販売中。」
「トイレ、シャワーあり。」
「わき毛、陰毛後日オークション開催。」
プロフィールには、彼女の身分証明書の写真まで添えられていた。
あの日、何気なく提出した学生証──それすらも、金で買われた変態たちの欲望を刺激する道具に成り果てていた。
今後、あと9回。
彼女はこの場所で、何も知らぬまま“記録”されていく予定だ。
画像や動画が世に出回ることは決してない。
しかしそのすべてが、密かに保存され、
選ばれた変態たちの慰み者として、消費され続けていく。
彼女は、それを知ることはない。
──END


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