本作品は『医療機器の治験バイト』の続編となります。
良ければそちらも読んでみてください。

「金が……ない。」
大学の夏休みが始まって一週間。
アパートの自室で預金残高を表示したスマホを眺め、深いため息をついた。
画面に並ぶ数字は、およそ「大学生の夏」を謳歌できるような代物ではない。
なぜ春から真面目にバイトをしてこなかったのか。
自堕落な自分を呪ったところで、過ぎた時間は戻らない。
だが、この夏にはどうしても譲れない予定があった。
「バーベキューキャンプ……これだけは、絶対に行かないと。」
夏休みの終わりに企画されている、サークルの恒例行事。
気になるあの子も参加すると聞いている。
ここで「金欠だから」と欠席すれば、秋学期からのキャンパスライフは灰色に染まるだろう。
藁にもすがる思いで大学のポータルサイトを開き、アルバイト募集の掲示板をスクロールした。
即金、短期、高収入――。
都合の良い言葉を並べて検索するが、ヒットするのは引っ越し作業や警備など、体力的にもスケジュール的にも厳しいものばかりだ。
最悪、実家の親に土下座して借りるか……。
そんな情けない考えが脳裏をよぎった瞬間、ある募集要項で目が止まった。
『新型医療機器の動作確認・臨床調査モニター募集(短期)』
いわゆる「治験」だ。正直なところ、体に正体の知れない新薬を投与されるのは抵抗がある。
副作用で一生を台無しにするリスクを考えれば、手は出さないのが賢明だ。
しかし、詳細を読み進めると意外な一文が目に飛び込んできた。
【条件】投薬なし。外部計測機器の使用のみ。
「投薬なし……?それならリスクは低いな。」
内容を精査すると、どうやら開発中の「女性用検査機器」のデータ収集が目的らしい。
「なんだ、女性用か。いい案件だと思ったのに……」
ガッカリしてブラウザを閉じようとしたその時、募集人数の欄にある奇妙な一文を見つけた。
【募集人数】女性 10名 / 男性 1名
「え?男でもいいのか?」
女性用の機器で男性が何を検査するというのか。
半信半疑ながらも、背に腹は変えられない。
「性別:男」の欄に迷わずチェックを入れ、必要事項を入力して送信ボタンを叩いた。
「よし、とりあえず……今日はフードデリバリーで日銭を稼ぐか。」
期待半分、不安半分。
気合を入れ直すと、愛車の自転車に跨り街へと駆け出した。
その日の夜。
クタクタになって帰宅しメールボックスを開くと、一通の新着通知が届いていた。
件名:治験ボランティア応募に関する選考結果のお知らせ
この度はご応募いただきありがとうございます。つきましては、適性判断のための事前身体検査を行いたく存じます。明日午前10時に、大学病院・第三研究棟受付までお越しください。
「……本当に通った。」
合格の文字に安堵しながらも、胸の奥で小さな違和感が疼く。
女性用機器の治験に、たった一人の男。
その違和感の正体を深く考える前に、肉体の疲労が眠気を連れてきた。
「まあ、明日行けばわかるか……。」
スマホを充電器に差し込み、その日は早めに床についた。
当日、指定された大学病院の第三研究棟へ向かうと、そこには他にもう二人同年代と思しき男性が待機していた。
(……男は一人じゃなかったのか?)
募集要項には「男性一名」とあったはずだ。
おそらく、今日の身体検査の結果次第で、最も「適合」した一人だけが選別されるのだろう。
健康には自信がある。
だが、何の説明も受けていない「女性用機器」の治験において、自分の何が評価対象になるのかが全く読めない。
その不透明さが、じわじわと不安を煽った。
検査自体は拍子抜けするほどスムーズだった。
身長、体重、視力といった基本項目に加え、血液検査と尿検査。
どこにでもある健康診断と何ら変わりはない。
「本日の検査は以上です。明日までに結果をご連絡し、その中から一名だけ、本採用とさせていただきます。」
白衣を着た事務的な担当者の言葉に、は小さく頷いた。
やはり、三人のうち二人はここで弾かれてしまうようだ。
(受かっていると良いなぁ。)
すると担当者から一枚の茶封筒を差し出された。
受け取ると、中にはピンとした五千円札が一枚入っている。
「本日の交通費および事前検査料として、先に五千円をお支払いします。後日、本番の検査を受けていただいた際に、残りの二万五千円をお支払いする形になります。」
「……あ、ありがとうございます!」
拘束時間はわずか三十分程度。それで五千円。
もし本番まで進めば、合わせて三万円という破格の報酬が手に入る。
(ダメだったとしても、これだけで十分な日当だな……)
想定外の臨時収入にホクホクしながら、病院を後にした。
その日の夜、合格の通知がメールに届いていた。
指定された当日。
期待と緊張を胸に再び病院を訪れると、そこには昨日までの事務的な担当者ではなく、一人の白衣を着た女性が立っていた。
「佐川悠人さんですね。お待ちしておりました。」
どうやら女医さんのようだ。
20代後半くらいだろうか。
目鼻立ちの整った美人でドキッとしてしまった。
「担当医の成瀬です。……では、まずはこちらで着替えをお願いします。」
促されるまま手渡されたのは、一着の検査着だった。
それはよくある上下に分かれたセパレートタイプではなく、膝丈まであるワンピース型のものだ。
(……このタイプは初めてだな。女子用じゃないのか?)
「洋服はすべて脱いでください。下着も、アクセサリーや時計も、何も身につけない状態でお願いしますね。」
「えっ……下着も、ですか?」
思わず聞き返してしまった。
「はい。検査の精度に関わりますので、邪魔なものは一切排除していただきます。」
にこりと微笑んだ。
柔和な笑みではあるが、その瞳には有無を言わせない迫力があった。
「……わかりました。」
おとなしく検査着の下は全裸で頑張ろう。そう思いながら更衣室の扉を閉めた。
着替えを終え、更衣室の扉を開けると、そこに立っていたのは先ほどの女医ではなく、一人の看護師だった。
自分と同年代くらいだろうか、小柄で愛らしい顔立ちをした女性だ。
「検査室へご案内しますね。」
柔らかな声に導かれ、彼女の後に続いた。
なんとなく、前を歩く彼女のお尻に意識が吸い寄せられてしまう。
そんな不謹慎な自分に自己嫌悪しつつ、案内された部屋の扉が開いた。
そこには、先ほどの女医と、部屋の中央に鎮座するカーテンに囲われた小さな“箱”のような装置があった。
(……レントゲンか、それともCTの新型かなにかかな?)
首を傾げていると、女医が淡々と説明を始める。
「これは現在、開発段階にある最新の計測器具です。乳房のしこりから内臓の微細な異常まで、迅速かつ簡易的に特定することを目指しています。」
「乳房のしこり……。やっぱり、女性用の機械なんですね。」
「ええ。ですが今回は、このシステムを男性用へ転用するためのデータ収集を行いたいのです。基本構造を共通化できれば、より多くの人を救えますから。」
なるほど、と納得した。
医療の発展に貢献しつつ、高額な報酬を得られる。
それなら、この妙な緊張感も報われるというものだ。
「では、その中に入って検査着を脱いでください。」
看護師さんの指示に従い、装置を囲うカーテンの中へと足を踏み入れた。
狭い空間。外部からは遮断されている。
全裸になったとしても、直接見られるわけではないだろう。
自分に言い聞かせ、脱いだ検査着をカーテンの隙間から差し出した。
その直後だった。
看護師が手元のボトルから、ブチュッとジェルを絞り出す音が聞こえた。
「失礼しますね。」
そんな声と共に、カーテンの隙間から彼女の白く細い手が迷い込んできた。
そして、無防備な胸元へ、冷たい感触が一気に押し当てられた。
「うひゃ……っ!」
唐突な刺激に、変な声が漏れる。
驚きで強張る体などお構いなしに、彼女の指先は円を描くように、執拗に胸の周りへジェルを塗りたくっていく。
(……なんだこれ、めちゃくちゃ冷たい。けど……)
驚きが引いた後にやってきたのは、柔らかな指の腹が肌の上を滑る、得も言われぬ心地よさだった。
女性にこんな風に触れられるのは人生で初めてだ。
バクバクと暴れる心臓の鼓動が、彼女の手のひらを通じて筒抜けになっているのではないか。
顔が熱くなるのを自覚し、自分の経験不足を痛感した。
(……つくづく女慣れしていない自分が情けないな。)
だからこそ、夏のキャンプには絶対に行きたかった。
お金のためだ。頑張ろう。そう思い、少しだけ気合いを入れ直した。
「では、胸をぴったりと機械につけてください。」
女医さんの声に促され、指示通りジェルの塗られた胸板を目の前の滑らかなガラス面に押し当てた。
その直後だった。
「失礼しますね。」
短い断りの言葉と同時に、背後のカーテンが勢いよく左右に跳ね上げられた。
「えっ!?ちょっと!」
背中に走る開放感と、予想だにしない展開に心臓が跳ねる。
いくら前を向いているとはいえ、お尻は丸出しだ。
無防備に晒された背中から臀部にかけて、室内の冷たい空気が容赦なく触れる。
だが、動揺をよそに、女医さんと看護師さんの作業は淡々と進められた。
背後から伸びてきた太いベルトが、体を機械へと強く押しつけ、逃げ場を奪うようにがっしりと固定していく。
自由を奪われた状態で、再びカーテンが「シャッ」と音を立てて閉じられた。
「……びっくりした……」
密室に戻った安堵感で膝の力が抜けそうになる。
すると、マイクを通して女医さんの声が聞こえた。
「——佐川さん、機械の温度に不快感はありませんか?」
言われて初めて、自分の胸が触れているパネルの感触に意識を向けた。
医療機器にありがちなヒヤリとした冷たさは一切ない。
それどころか、人肌に近い絶妙な温もりが肌を包んでいる。
「あ、はい……あったかくて、気持ちいいです。」
「それは良かった。被検者にストレスを与えないための仕様なんです。」
検査って好きこのんでやる物じゃ無いから、不快なものは極力取り除いて欲しい。
そう言った意味でこれは嬉しい配慮だと思う。
……なくても良いとは思うけど。
目の前のモニターに、ぼんやりとした熱源反応が映し出された。
サーモグラフィーのような画像だ。
腰から上が赤や青、黄色といった原色で色分けされ、自分の体温の分布が可視化されている。
(……腰から上で助かったな。)
そんな安堵も束の間。
女医さんの声がスピーカーから響く。
「では、スキャンを開始します。動かしますね。」
次の瞬間、胸を押し当てている暖かなパネルが、生き物のようにうねり始めた。
ゆっくりと上下に、左右に。胸板をこねるような、なぞるような不思議な動き。
それに連動して、モニターの中の自分もぐにゃぐにゃと形を変えていく。
(完全に女性用……。乳房のしこりを探すための動き、だよな)
そう思っていると、ふとあることに気付いてしまった。
今回の募集人数は、女性十名。そして、男性一名。
つまり、このパネルの上には十人の女子大生たちが同じように素肌を、その胸を、この暖かなガラス面に押し当てていたのだろう。
つまり……間接おっぱい……。
一度そう思うと、もうダメだった。
ここ数日、生活費とキャンプ代を稼ぐためのデリバリーバイトに明け暮れ、今日の検査に備えてオナニーを控えていた。
溜まっていたエネルギーが、不謹慎な妄想を呼び水にして一気に一点へと集中していく。
(……やばい、よりによってこんな時に!)
そんな願いもむなしく、大きくなってしまったそれは機械の下の部分に当たってしまっていた。
パネルが胸元で上下にスライドするたび、その下部構造が、硬く反り上がった先端に何度も、何度も接触する。
「っ……ふ、……っ」
機械的な摩擦が、包皮を通してちんちんに伝わる。
「勃起しました」なんて言えるわけがない。
脂汗を浮かべ、ただ奥歯を噛み締めて嵐が過ぎ去るのを待つしかなかった。
「……佐川さん。心拍数が急激に上昇しています。どこか苦しいですか?」
女医さんの鋭い指摘が突き刺さる。
モニターには体温だけでなく、心拍データも克明に記録されているのだ。
「い、いえ!大丈夫です!なんでもありません!」
必死に声を振り絞るが、上ずったトーンは動揺を隠しきれていなかった。
「では、次の工程に移りますね。」
女医さんのその言葉と共に、胸を揉むようなパネルの動きがようやく止まった。
助かった……。
心底安堵したが、依然として状況は最悪のままだった。
がっしりとバンドで固定されているせいで、機械の下部には、限界まで反り上がった先端がぴったりと密着したままだ。
今のままカーテンを開けられれば、言い逃れのできない醜態を晒すことになる。
一刻も早く、この熱を鎮めなければならない。
しかし、追い打ちをかけるように無慈悲な宣告が下された。
「次は、機械に細かな振動を与えて、組織の深部まで詳しく調べます。」
(……振動?なんだよそれ、そんなの必要なのか!?)
それよりも、機械に勃起したちんちんが触れていることがまずい。
今振動なんて来たら最悪なことになる。
——ヴ、ヴ、ヴヴヴヴ……。
重低音に近い、鈍く力強い振動が胸から腹、そして機械を通じて「そこ」へダイレクトに直撃した。
「……っ!ぅ、ぐぅ……!」
逃げ場のない密室で、腹の底か呻き声が漏れる。
「佐川さん、苦しいですか?」
不意に、心配そうな声と共に看護師さんが俺の顔を覗き込んできた。
至近距離にある、若々しくかわいい顔。
ふわりと鼻腔をくすぐる、石鹸のような清潔な女性の匂い。
彼女の顔が、想い人である香澄ちゃんの面影と重なってしまった。
数日間の禁欲、異性の匂い、そして機械的な高周波振動——。
すべての歯車が、最悪のタイミングで噛み合った。
「あ、ああ!すみません……!出ちゃ、いますっ!!」
叫びにも似た声を上げた瞬間、体はバンドで固定されたまま大きく跳ねた。
熱い衝撃が、幾度も先端からほとばしり、震える機械を汚していく。
「せ、先生!すぐに止めてください!」
看護師さんの悲鳴のような鋭い声が響き、慌ただしい操作音と共にようやく機械が沈黙した。
静寂が戻った検査室。
俺は肩を上下させ、荒い呼吸を繰り返しなたまま、顔を上げることが出来なかった。
「カーテンを開けますね。」
看護師さんの声と共に、シャッとカーテンが開けられた。
同時に背中を固定していたバンドがパチンと音を立てて解除され、支えを失った体は彼女の柔らかな肩へと預けられた。
「……なるほど。この手順で射精に至る可能性は、設計段階で考慮していなかったわね。」
カーテンの中、白く汚れた機械を冷静に観察しながら、女医さんがつぶやく。
「……本当に、すみませんでした。」
消え入るような声で謝ることしかできない。
情けなくて、惨めで、消えてしまいたい。そんな様子を察してか、看護師さんがそっと椅子に座らせ、優しい声をかけてくれた。
「いいえ。想定していなかったこちらの落ち度ですから。恥ずかしい思いをさせてしまいましたが、おかげで貴重なデータが取れました。今後に活かせます。」
かわいい笑顔に少しホッとする。
「横島さん、佐川さんの陰茎を清拭してあげて。機械の掃除は私がやるわ。」
看護師さんは一度席を外すと、温かいお湯の入った洗面器とタオルを手に戻ってきた。
「恥ずかしいかもしれないけど、少し我慢してくださいね。」
そう言うと、彼女は躊躇なくちんちんをそっと指先でつまみ上げ、湿った温かいタオルで丁寧に拭き取り始めた。
彼女は場を和ませるように話し始めた。
「佐川さん、この大学の学生さんですよね?」
「……はい」
「じゃあ、横島香澄って知ってますか?」
その名前に心臓が跳ねた。まさに、思いを寄せるあの香澄ちゃんだ。
「あ、はい。友達にいます。」
「本当ですか!私、香澄の姉なんですよ。」
パッと明るくなった彼女の顔を見て、二度驚いた。
確かに、よく見れば目元や鼻筋が香澄ちゃんにそっくりだ。
さっき、機械の振動の中で面影が重なったのは、単なる妄想ではなく血縁ゆえの必然だったのか。
「そうかそうか、君があの悠人くんかぁ。」
(えっ……もしかして香澄ちゃん、家で俺の名前を出してくれてるの?)
それは何より嬉しい情報だった。
だが、同時に心配事がこみ上げる。
「あの……香澄ちゃんには、絶対内緒にしておいてください。」
「何を?」
きょとんとする彼女に、必死に訴えた。
「その……さっき射精しちゃったこととか、あと、その……そこが小さいこととか、皮が被ってることとか……。」
それを聞いた横島さんは、我慢しきれずに吹き出してしまった。
「あはは!言うわけないでしょ、仕事には守秘義務があるんだから。」
彼女は笑いながら、再び「そこ」をつまんで、まじまじと観察し始めた。
「確かに小ぶりだけど、そんなに気にすることないですよ。サイズにこだわる女の子なんて本当に一部なんだから。」
そう言いながら、彼女の手が包皮をゆっくりと下げる。
「包茎も、こうして手でちゃんと剥けるから大丈夫。立派な『仮性包茎さん』ですよ。」
立派な仮性包茎——。
褒められているのか貶されているのか分からない言葉に、複雑な心境になった。
そもそも「小さい」ことはプロの目から見ても事実だと確定してしまった。
……やっぱり小さかったか……。
「プライバシーに立ち入るつもりはありませんが、確かに佐川さんの陰茎のサイズは小さいです。でも、機能的には何の問題もありませんよ。そんなことでコンプレックスを抱いて、女の子と付き合う機会を逃す方が人生の損失ですよ。」
いつの間にか女医さんが背後から覗き込んでいた。
また「小さい」と念押しされてしまったが、不思議と、この二人にならすべてをさらけ出してもいいような、奇妙な開き直りが芽生え始めていた。
見せてダメならその時に考えればいい。
少しだけ、男としての勇気を貰った気がした。
「さて。では、次の検査に移りましょうか。」
気づけば先ほどの機械は手際よく片付けられ、部屋の中央にはゲームセンターで見かけるような、ダンスゲームの筐体に似た大型の装置が運び込まれていた。
全裸のまま、今度はあの上で何をさせられるのか。
再び新たな不安と期待の波が押し寄せた。
「では、こちらに足の裏を合わせるようにして座ってください。」
足の裏をくっつける?あぐらを崩す感じかな。
看護師さんの指示に従い、装置の上で足の裏同士をくっつけ、膝を左右に割るような姿勢を取った。
股関節が大きく開かれ、最も無防備な部分が露わになる。
言われるがまま前傾姿勢を取ると、睾丸と、先ほど果てたばかりの柔らかな竿の先端が触れた。
やはりこの機械もほどよく暖かくて気持ち良かった。
「失礼しますね。」
横島さんが装置から伸びる固定用のバンドを手に取り、「ちんちん」を固定し始めた。
だが、その作業の手がふと止まる。彼女は少し困惑したような表情を浮かべ、女医さんのもとへ小走りで駆け寄った。
「あの、先生。バンドが大きすぎて……すっぽり隠れてしまうのですが。」
「え?あれは幅5センチ設計よ。それなら普通、先端が出るはずじゃない?」
「それが、佐川さんの陰茎……平常時は3センチほどしか……」
「さっき見たけど、そんなに小さかったかしら?」
二人は小声で相談しているつもりなのだろうが、静かな室内ではその会話は丸聞こえだった。
(……聞こえてる。全部聞こえてるからな……)
先ほど貰いかけた自信が、音を立てて崩れていく。
屈辱と悲しみで顔が熱くなるが、検査は残酷にも続行された。
「仕方ないわね。横島さん、勃起させられる?」
「あ、はい。大丈夫です。」
横島さんが再びジェルボトルを手に戻ってきた。
「すみません佐川さん。ジェルを塗り忘れたのでちょっと外させて貰いますね。」
そう告げられ、パチンとベルトが解かれる。
そこには、情けないほど縮こまった「3センチ」の現実が鎮座していた。
彼女はそこにジェルを塗り込み、指先で丁寧に、かつ手慣れた手つきで刺激を加え始める。
快感はある。だが、直前のショックが大きすぎて、なかなか反応が追いつかない。
「……悠人くん。私を香澄だと思って、想像してみて?」
唐突な提案に、バッと顔を上げた。
至近距離で見つめる彼女の横顔は、確かに愛しい香澄ちゃんに瓜二つだ。
だが、俺は反射的に彼女の手を止めた。
「……あの、香澄ちゃんをそんな目で見たくないです……」
急に手を掴まれて驚いたのか、俺の顔を見る。
そして、ニヤニヤし始めた。
「そうかそうか、佐川さ……いえ、悠人くん。」
不意に下の名前を呼ばれて驚く。
「香澄のこと好きなのね。」
図星を突かれ、耳まで真っ赤に染まった。
全身の血流が激しく巡り、体温が急上昇する。
「本当にわかりやすい子ね。……じゃあ、良いことを教えてあげる。」
彼女は耳元に唇を寄せ、そっと低い声で囁いた。
「香澄ね、今は明るく振る舞ってるけど、高校まではすごく引っ込み思案だったのよ。……だからあの子、まだバージンよ。」
——ドクン。
自分の知らない、そして誰もが触れていない彼女の真実。
急激に心臓が動き出す。
心臓が血液を送り、下半身に一気に集まった。
「わあ……。私に触られるより、『香澄がバージン』って情報のほうが興奮するんだ。」
「……すみません。」
「ふふ、謝ってばっかね。いいわ、これから私のことは『お義姉さん』って呼びなさい。」
急に変なことを言い出した。
「悠人くんのこと気に入っちゃった。香澄に本気みたいだし、応援してあげるわ。」
そう言いながら、彼女は力強く反り上がった「それ」に、今度はぴったりとバンドを締め直した。
「今から5分間、振動を送ります。頑張って耐えてね。あ、ちなみにこの機械、射精は『想定内』だから気にしなくていいわよ。」
なんかむちゃくちゃなことを言っている。
これ、人権とか大丈夫な機械なのだろうか。
「では先生、お願いします。」
その声と共に、脳髄まで揺さぶるような強烈な振動が、剥き出しの睾丸と陰茎を同時に襲った。
「無理無理無理……っ!」
逃げ場のない振動に絶叫した。
しかし、スピーカーから流れる女医さんの声はどこまでも冷徹だ。
「なるべく動かないでください。一度プログラムを走らせたら、五分間は止まりません。」
脳まで痺れるような高周波の振動が、全裸の股間に直撃し続ける。
さっき一度果てた直後ということもあり、一分ほどは何とか耐えられた。
しかし、そこに看護師さん——いや、お義姉さんが再び耳元で囁いた。
「ねえ、悠人くん。十人の女の子たちもね、君と同じようにここに直接座って、今の振動を受けたのよ。」
「え……っ、これを、女の子が……?」
「そう。それでね……みんな、我慢できなくてお漏らししちゃったの。」
その瞬間、脳内に強烈なヴィジョンが弾けた。
自分と同じように全裸の女子大生たちが、羞恥に顔を染めながらこのパネルに跨がり、抗えない振動に翻弄され、そして——。
さっきは「間接おっぱい」だったが、今、自分が座っているこの場所は「間接おマンコ」なのだ。
もう、理性という名のダムは決壊していた。
「あああ!出ます!イッちゃいます……っ!」
その言葉と共に、ベルトに固定されたちんちんからビュビュッと精液が吐き出された。
「悠人くんは本当に想像力豊かだねぇ。」
お義姉さんは感心したようにモニターを覗き込んでいる。
そこにはサーモグラフィー化された股間が映し出され、睾丸の脈動から精管を通って射精に至るプロセスが、青から赤へ、そして鮮烈な白へと変化しながら克明に記録されていた。
どうやら、射精した方が検査的には都合が良いようだ。
(……一体、何の検査なんだよ、これ……!)
射精したことにより、振動が一段階上がったようだ。
萎えるまもなく、次の絶頂が近づいていた。
凄まじい振動が止まらない。
視界の端でモニターを凝視する女医さんと「お義姉さん」の表情は、驚くほど真剣だった。
(ふざけてるわけじゃない……本当に、これが医療に必要なデータなんだ……)
さっきはそんなことをしてはいけないと思っていたのに、脳みそが拒否出来なくなっていた。
看護師姿の香澄ちゃんに、サーモ状態の陰茎をしっかり見られている。
その感覚に、坑がう事は出来なかった。
「ま、また……っ!また出ます……!!」
限界を超えた叫びと共に、先端から飛沫が上がった。
しかし、短時間に三度も繰り返されたそれは、先ほどまでとは比較にならないほど薄く、水っぽくなっていた。
「……ぐ、ぅ……」
顔からは完全に血の気が引き、脂汗が床に滴り落ちる。
その尋常ではない様子を見て、ついにお義姉さんが女医さんのもとへ駆け寄った。
「先生、これ以上は彼の身体が心配です。少し早いですが、データは十分取れたと思います。」
「そうね……これ以上は被検者の心身に深刻な影響を及ぼしかねないわ。」
三分を経過したところでようやく機械が止められた。
同時に刺激を失ったちんちんも急速に熱を失い、力を失って萎れていく。
極限まで張り詰めていた糸が、ぷつりと切れた。
拘束から解放された体は、そのまま後ろへと倒れ込んでいった。
「悠人くん!!」
駆け寄るお義姉さんの、悲鳴に近い叫び声。
その柔らかな腕の感触を背中に感じながら、俺の意識は深い闇の中へと沈んでいった。
次に目を覚ました時、視界に飛び込んできたのは真っ白な天井だった。
「あ!目が覚めた!よかったー、本当に心配したんだから!」
声のした方を向くと、そこには「お義姉さん」が、安堵に満ちた表情でこちらを覗き込んでいた。
すぐに彼女に呼ばれて女医さんが姿を現し、手際よくバイタルをチェックしていく。
「……どうやら日頃の疲れと、極度の緊張による脱水症状が重なったみたいね。水分補給の管理を怠った私の落ち度だわ。本当に申し訳ありませんでした。」
白衣の襟を正し、深々と頭を下げる女医の姿に、慌てて体を起こした。
「いやいや!俺の方こそすみません!検査があるってわかってたのに、昨日もギリギリまで夜更かししちゃってて……」
互いに「いえいえ」「こちらこそ」と謙遜し合う奇妙な時間が流れ、室内の重苦しい空気はようやく霧散した。
一通り落ち着いたところで、女医さんが一通の封筒を差し出してきた。
「本日の報酬です。中を確認してください。」
封筒の中には、当初の予定よりも多い、三万円が入っていた。
「今日は本当に、想定以上の負荷に耐えて頑張ってくれたわ。今回は少しだけ、色をつけさせてもらいました。」
思いがけないボーナスに胸は躍った。
女医さんは「仕事が残っているから、ごめんなさいね。」と言い残し、颯爽と部屋を後にした。
病室に残されたのは、俺とお義姉さんの二人きり。
不意に彼女が歩み寄り、ギュッと抱きしめた。
戸惑っている俺に、彼女が囁いた。
「今日は本当にありがとう。香澄の件、期待しておいてね。」
そして、そっと体を離した。
「でも、もし香澄を泣かせるようなことがあったら……その時は、覚悟しておきなさい?」
口元は笑っているが、目は本気そのものだ。
これは肝に銘じておかないといけないな。
結局、お義姉さんと連絡先を交換し、意気揚々と病院を後にした。
しかし、その日の夜。布団に入った俺を待っていたのは、安らかな眠りではなかった。
目を閉じると、まだ股間が微かに振動し続けているような、奇妙で倒錯した違和感が消えない。
最新鋭の医療機器が刻み込んだ「快楽の残滓」に翻弄されながら、俺は香澄ちゃんの笑顔を必死に思い浮かべ、浅い眠りの中へと落ちていった。
エピローグ
ピロリン、と枕元のスマホが小気味よい音を立てる。
画面を覗き込んだ瞬間、心臓が跳ね上がった。
通知欄には、『香澄ちゃん』の名前が表示されていた。
慌ててメッセージを開く。
香澄ちゃん:悠人くん、いつの間にお姉ちゃんと知り合ったの?悠人くんキャンプ初めてだから、持っていく物とか一緒に買いに行ってあげてって言われちゃった。明日とか暇かな?
心臓が止まるかと思った。
お義姉さんも、結構ストレートな援護してくれたんだな、と感謝しつつ返信を送った。
悠人:明日暇です!キャンプ初心者なので、いろいろ教えてもらえると助かります。よろしくお願いします!
送信ボタンを押して数秒、すぐに既読がついた。
香澄ちゃん:ほんとのこと言うと、私もキャンプ初心者なんだ。明日は一緒にいろんなお店回ろうね。楽しみ。
「……明日、俺、死ぬのかもな。」
あまりの幸福感に、天井を見上げて呟いた。
三万円の報酬、そして香澄ちゃんとの買い物とはいえ初デート。
あの地獄のような治験の苦労が、一気に報われた気がした。
そんな多幸感に浸っていると、再び「ピコン」と通知が鳴る。
今度の表示は『お義姉さん』だった。
開いてみると、そこには一枚の画像が届いていた。
すやすやと無防備に眠っている香澄ちゃんと、その横でピースサインをして自撮りするお義姉さんのツーショットだ。
お義姉さん:エッチな写真はあげられないけど、かわいい香澄の写真ならいっぱいあげるからね。たまには私のこともかまうんだぞ。
もしかすると、とんでもない人を味方に出来たのかもしれない。
喜びをかみしめながら画像を保存していると、立て続けに三枚の写真が送られてきた。
「……え?」
そこには、病院のベッドの上で「ちんちん」を丸出しにして眠っている自分の姿が、鮮明に写し出されていた。
全体像、アップ、そしてお義姉さんの指で「剥かれた」状態の接写。
続いて、一言だけのメッセージが届く。
お義姉さん:香澄を泣かせたら……わかっているよね?
「……あ、あの人……っ!」
もしかすると、とんでもない人を味方にしてしまったのかもしれない。
あんなに心配そうな顔をして介抱してくれていたはずなのに、ちゃっかり「弱み」を握っていたのだ。
最強の味方は、同時に最凶の監視役でもあった。
それでもなぜか、心の中に暖かい物を感じ、そっとスマホを閉じた。
あの無機質な病院の一室で始まった奇妙な縁が、自分の止まっていた時間を動かしてくれたのは間違いない。
キャンプが終わったら、次は紅葉を見に行く計画を立てよう。
できれば……香澄ちゃんとお義姉さん、三人で。
END


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