足の骨を折り、絶賛入院中の私。
今は絶対安静の身。身動きが取れないもどかしさは、想像を絶するものだった。
何より辛いのは、トイレすら自分一人の力ではままならないという現状だ。
さすがに個室の中までずっと見られているわけではないけれど、ズボンと下着を下ろされ、便座に腰掛けるまでは看護師さんの介助が必要になる。
そして用を足し終えるまで、彼女は扉のすぐ向こう側でじっと待っているのだ。
その気配を感じるだけで、いたたまれない気持ちになる。
だが、本当の「屈辱」はここからだった。
この病院では、自分で拭き終わった後、下着を履かせてもらう前に必ず「あそこ」とお尻をウェットシートで清拭される決まりになっている。
「女の子は、いつも清潔にしておかないとね。」
看護師さんの向けた優しい笑顔が、今の私には鋭く突き刺さる。
そして、差し出されたシートに変な物が付着していた時のあの屈辱感といったら……。
看護師さんは、汚れたシートをわざわざ私に見せつけるようにして、「ほら、少し拭き残しがありましたよ。」と丁寧に報告してくれる。
(……そんな報告、いらないから!)
心の中で叫んでも、言葉にはならない。
私はただ、熱くなる顔を伏せ、喉の奥から絞り出した消え入りそうな声で答えるしかなかった。
「……ありがとうございます。」
情けなさと恥ずかしさで、消えてなくなりたくなる日もあった。
というか、なんでウォシュレットじゃないのかが理解出来なかった。
問題は、まだあった。
私が入院しているのは大部屋なのだが、なぜか隣のベッドが男の子だったのだ。
……いや、それ自体は、半分「良いこと」でもあった。
彼の名前は浅見陽介くん。
彼も私と同じく足を骨折して入院している。
話してみると同い年で趣味も合い、本を貸し借りしたり一緒にゲームをしたりして過ごす時間は、私にとっても救いになっていた。
お互いベッドから動けず、触れ合える距離ではない。
けれど、それがかえって「友達」としての心地よい距離感を作っていた。
昼間、笑い合っているうちはそれで良かったのだ。
だが、残りの半分の問題は、夜に訪れる。
「星野さん、お体を拭きましょうね。」
看護師さんの声と共に、閉じられていた仕切りのカーテンが開かれる。
――そう、この時間だ。
この時間が、どうしても、どうしても恥ずかしくて仕方ない。
もちろん、清拭はカーテンで囲まれた密室の状態で行われる。
それでも、ほんの数十センチ先には、仲良くなったばかりの男の子が寝ているのだ。
薄い布一枚隔てただけの至近距離で、自分が無防備な姿にされていく。
もし彼と仲良くさえなっていなければ、単なる日常としてもっと割り切れたのかもしれない。
今日もまた、彼のすぐ横で、私はゆっくりと裸にされていく。
ママが探してくれた、ギプスをしていても脱ぎ着しやすいパジャマ。
これのおかげで、入院生活のストレスはだいぶ軽減されていたと思う。
けれど、その機能的なパジャマも、清拭の時間になれば無情に脱がされていく。
まずはパジャマを脱がされ、下着姿になる。
スポーツブラも手際よく外され、汚れ物用の袋に入れられた。
これは3日に一度、着替えと一緒にママが持ち帰って洗濯してくれることになっている。
問題はパンツだ。
いろいろ悩んだ末、私は使い捨てのタイプを選んだ。
もし、ひどく汚れてしまった場合……それをママに持ち帰らせて洗わせるのだけは、どうしてもためらわれたからだ。
役目を終えた使い捨てのパンツは、その都度看護師さんに捨ててもらっている。
申し訳ないし、恥ずかしいけど、そうするしかなかった。
私の恥ずかしいところを隠すその一枚も、すっと抜き取られてしまった。
これで、正真正銘の「すっぽんぽん」だ。
……前からずっと思っていたけど、せめて上半身と下半身、順番に拭いてはもらえないのかな。
それでも、毎日身体を拭いて貰えるのはありがたくもあるので、おとなしく従うことにしている。
(……恥ずかしいなぁ……)
最初は、顔から拭いてもらう。
これは素直にさっぱりして気持ちがいい。
一日も早く、自分の足で洗面台へ顔を洗いに行けるようになりたいな。
顔が終わると、そのまま体へと移る。
デコルテのあたりはいつもくすぐったくて、思わず身をよじってしまう。
そして、ここからが本当の試練だ。
「はい、おっぱい拭きますね。」
看護師さんの声は、決して大きくはない。
けれど、静まり返った夜の病室では、隣で寝ているはずの陽介くんに筒抜けではないかと気が気でなくなる。
出来れば、イヤホンでもつけて音楽とか聞いていてくれれば良いんだけどな……。
「梨沙ちゃん、おっぱい綺麗よね。Cカップだっけ? まだまだ大きくなりそうね。」
いつも拭いてくれる看護師さん、もちろん女性なんだけど、少しデリカシーに欠けるのよね……。
優しくていい人ではあるんだけども。
「私なんて中学でBカップだったから大人になったらもっと大きくなるって思っていたのよ。でも、高校に入ったらぴたっと成長止まっちゃってね。納得いかないよね。」
そんな話をあけすけに言うものだから、私は何も言えなくなってしまう。
「……んっ」
思わず、小さな声が漏れた。
温かいタオルが、乳首と乳輪を丁寧に、なぞるように拭きあげていく。
「梨沙ちゃん、乳首感じやすいよね。もう固くなってきちゃった。」
あまりに直球な指摘に、私はたまらず自分の口を手で押さえた。
この時間が一刻も早く過ぎ去ってくれることを、ただただ天に祈る。
すると、彼女はいつものチューブを取り出した。
「これ、梨沙ちゃんだけの内緒だからね。」
毎回そう言いながら、彼女は中身を指に取り、私の乳首にすり込んでいく。
彼女も愛用しているという、色素を薄くする薬らしい。
「梨沙ちゃんの乳首はピンク色でキレイだけど、早めにケアしておいた方だ将来的にも良いからね。」
そんなことを言われてしまうと、断りづらいことこの上なかった。
私だって、綺麗でいられるならその方がいいとは思うけども。
「……んっ……んぁっ……」
コリコリと先端をつままれる快感に、抑えた手の隙間から熱い吐息が漏れ出す。
(早く……お願い、早く終わって! 陽介くんに聞こえちゃう!)
心の中で叫ぶが、彼女の指先はなかなか止まってくれない。
やっと先端の愛撫が終わったかと思えば、今度は両方の親指で乳輪を円を描くようにマッサージし始めた。
他の患者さんも、体を拭いてもらう時にこんな恥ずかしいことをされているのかな……。
彼女のマッサージが始まってから、私の胸は以前よりもずっと敏感になってしまった気がする。
クリームの摩擦でしつこくクルクルと刺激され、ようやく終わりを告げる言葉が聞こえた。
「はい、これでおっぱいは終わりね。」
やっと解放された私の乳首は、痛いほどに勃起していた。
「じゃー、そのまま両手を挙げてね。」
促されるまま、私は無防備にバンザイのポーズを取る。
正直に言えば、私は胸を拭かれるよりも、ワキを処理される時間の方がずっと恥ずかしかった。
匂いや見た目も気になるけれど、やはり一番の問題は看護師さんの「デリカシー」だった。
「梨沙ちゃん、ちょっとわき毛が伸びてきちゃってるね。シェーバーあるから、剃ってあげようか。」
そんなことを彼女はさらりと言ってのける。
もちろん指摘されたら気になってしまうので、私は消え入りそうな声で「……お願いします。」と答えるしかなかった。
(陽介くんに、わき毛が生えてる女の子だって思われたらイヤだな……)
あまりの恥ずかしさに以前スマホで調べたことがあったけれど、普通の病院では看護師さんがサービスでわき毛を剃ってくれるなんてないらしい。
けれど、今の私にそんな指摘など出来るわけも無く、静かな病室にシェーバーの音が響いていた。
ジジジ……という毛を剃る音が、私にとって今一番恥ずかしい音なのかもしれない。
ワキの処理が終わると、看護師さんはおもむろに顔を寄せ、私のワキに鼻を近づけた。
そして、クンクンと鼻を鳴らして臭いを嗅ぎ始める。
「……うん、ちょっと汗のにおいがするから、しっかり拭いてあげるね。」
いつもそう言われるけれど、その言葉を額面通りに受け取っていいのか分からない。
(それって本当にただの汗……? それとも、私の体質的なにおいなの……?)
気になって自分でもこっそりワキを嗅いでみるが、やはり自分の体臭は自分では判断がつかない。
いつか勇気を出して、本当のところを彼女に聞いてみたいという思いはある。
けれど、もしそこで「実は……」なんて指摘されたら、私は二度と立ち直れそうにない。
陽介くんや学校の友達に、「実は臭い子」だと思われていたらどうしよう……。
そんな私の必死の葛藤などどこ吹く風で、看護師さんは鼻歌交じりに私のワキから腕にかけて、手際よくタオルを滑らせていく。
せめて、汗のにおいだけでも消し去って欲しいと願っていた。
「はい、腕は終わりね。」
そのまま少しだけ体を支えてもらい、背中を拭いてもらう。
これでようやく、上半身の行程はすべて終了した。
だが、本当の羞恥はこれからなのだ。
「次は下半身の方、いくわね。」
カーテンの向こうにいる陽介くんの存在が、一気に重くのしかかる。
パジャマも下着も失った私の、一番触れられたくない場所。
さらなる羞恥の幕が、静かに上がろうとしていた。
腰の下に防水シートが敷かれ、お尻の下にはお湯を受けるための便器のような物がセットされる。
「膝を立てて、足を大きく開いてね。」
何度繰り返しても、これだけは慣れることができない。
全裸で大股を開くことに慣れている女の子なんて、この世にいるはずがない。
……というか上半身終わったなら上着させてくれても良くないかな。
いや、それよりも一秒でも早く終わってくれた方が嬉しいか。
結局色々考えることを辞めて、両足をM字にゆっくり開脚した。
「梨沙ちゃんはここの毛が薄くて羨ましいな。私なんて濃いから、もう手入れが大変よ。」
看護師さんは笑いながら言うけれど、私にとってアンダーヘアが薄いことはずっとコンプレックスだった。
少し前までは全く生えてこず、病院に行くべきか本気で悩んでいたくらいなのだ。
ワキはあんなに早く伸びるのに……。
「ふふ、ここもぴったり閉じていて可愛いわね。じゃあ、中を確認するからね。」
宣告と共に、指先でそこを「クパッ」と左右に割り開かれる。
粘膜の状態や、傷、発疹がないかを確認するための処置だと分かってはいる。
けれど、その瞬間はいつも、どこを見ていいか分からず目を逸らしてしまう。
「小陰唇も小さくて綺麗だし、中もピンクで初々しいわ。本当に羨ましい。」
褒め言葉なのだろう。
けれど、とにかく恥ずかしくて、居たたまれない。
相手が同性だからこそ、自分の未熟な身体を細部まで品定めされる感覚が余計に羞恥を煽る。
もし、これが好きな男の子だったら……。
ふと陽介くんの顔がよぎり、私は全力でそれを脳内から振り払った。
陽介くんは仲の良い友達だ。
……というか、今の看護師さんの言葉聞いていないよね?
さすがに私の大事なところの情報が漏洩してしまっては困る。
カーテン越しにいるはずなのに、音が一切聞こえてこないことに一抹の不安を覚える。
「ひゃ!」
急にあそこにお湯がかけられて声を出してしまった。
「あ、ごめんね! 熱かった?」
「いえ……大丈夫です……」
色々話しかけてくれる割にこういうときは声をかけてくれないんだよね。
でも、私の汚れたところ洗って貰うんだから文句は言えないな。
心を落ち着けよう。
再度、あそこを無慈悲に割り開かれ、柔らかい布で粘膜のひだの一枚一枚まで丁寧に拭い去られていく。
「……ふっ、ぅ……」
どうしても、声が漏れてしまう。
看護師さんの処置はあまりに執拗だった。
器用に指を使い、私の最も繊細な場所を隅々まで掃除していく。
その刺激が膣内を通り、直接脳へと響き、体の芯がじわりと熱を帯びる。
(もしかして……私、エッチなのかな……)
胸を拭かれたときもそうだった。
この病院で清拭を受けるようになってから、私の体は自分の意思に反して、どんどん敏感に変質させられているような気がする。
「梨沙ちゃん、ちょっとヌルヌルしたのが出てきちゃったね。……気持ちいい?」
(そんなこと、聞かないで……!)
否定したいのに、言葉が出ない。
私の困惑をよそに、看護師さんはさらに踏み込んでくる。
「ここも綺麗にしておこうね」という言葉と共に、そこの上部をぐいっと引き上げられた。
「いやっ……!」
剥き出しにされたクリトリスへの衝撃が、稲妻のように背骨を駆け上がる。
「ふふ、小さくて可愛い。ここが匂っちゃうと、将来男の子に嫌われちゃうからね。」
彼女は事もなげに言いながら、指先でそこを転がすように洗い始めた。
自分でもほとんど触れたことのない秘部を、他人の手で弄ばれる。
「んんっ! いや、ぁ……っ!」
我慢は限界だった。
しかし、悶える私の耳元で、彼女が低く囁いた。
「……大きな声を出すと、陽介くんに聞かれちゃうよ?」
その瞬間、私は目を見開いた。
陽介くんに、こんなエッチな声を聞かれるわけにはいかない。
慌てて両手で口を強く押さえる。
こうなると、もう私が抵抗出来る術は無くなってしまった。
「気持ち良くなっちゃおっか。」
そんなの絶対におかしい。断らなきゃいけない。
そう思うのに、流れるような指使いに体は沈んでいく。
そこから漏れ出す「クチュクチュ」という卑猥な水音が、薄いカーテンを越えて彼に届いていないか、それだけが心配だった。
彼女の右手が秘部を、左手が乳首を同時に捉える。
上下からの逃げ場のない愛撫に、視界が白く染まっていく。
押さえた手の隙間から、荒い吐息が「ふっ、ふっ」と漏れ出した。
「乳首もクリトリスもパンパンね。……そろそろ、イッちゃう?」
残酷な宣告と共に、両方の突起がギュッと強くつままれた。
そのあまりの衝撃に、私の堤防はあっけなく決壊した。
「イクっ……!!」
手で防ぎきれなかった絶頂の悲鳴が、夜の病室に響き渡る。
膣内が激しく脈打ち、私が絶頂したことを確認すると、つまんでいた手をゆるめ、優しくなでるように愛撫してくれた。
その指の動きに合わせ、身体がビクビクと痙攣してしまう。
絶頂した私を見て、彼女は怪しい笑みを浮かべたような気がした。
彼女はそれで満足したのだろうか。
絶頂の余韻に浸る間もなく、処置は淡々と進められた。
過敏になったままのそこをタオルで手早く拭われ、肛門まで一気に洗い流される。
そして、新しい使い捨ての下着が、手際よく私の腰へと引き上げられた。
「パンツは病院の方で処分しちゃうからね。」
彼女はそう言い残し、脱ぎ捨てられた私のパンツを袋に閉じ込めた。
新しいパジャマに袖を通し、歯磨きまで済ませる。
ようやく清拭が終了し、就寝の準備が完了した。
この奇妙で背徳的な清拭だが、不思議なことに、すべてが終わると体は妙にすっきりとする。
普段なら、ここからお気に入りの音楽を聴きながら深い眠りに落ちていく。……はずだった。
だが、今日に限って妙に頭が冴え渡る。
追い打ちをかけるように、愛用のワイヤレスイヤホンは充電切れ。
音楽という「盾」で周囲を遮断することすらできない。
私が夜、音楽を聴き続けるのには理由があった。
一つは入眠のため、そしてもう一つ。
「陽介くん、お体を拭きましょうね。」
隣のカーテン越しに、あの看護師さんの声が響く。
そう、私は陽介くんが清拭されている時の音や会話を、どうしても聞きたくなかったのだ。
もし彼も、私と同じような目に遭わされていたら。
そう思うだけで、いたたまれない気持ちになるからだ
眠ることもできず、耳を塞ぐ術も持たない。
静まり返った病室で、初めて私は「お隣さん」の清拭の音を、真っ向から受け止めることになってしまった。
羞恥の清拭 -陽介の場合-に続く。

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