【創作羞恥小説】肛門科の出来事

お姉さん(CMNF)

お尻が……痛い。
血が出ているわけじゃない。でも、トイレに行くたび、ズキッとした痛みがある。
切れている感じでもないし、痔ってわけでもない……と思いたい。
だけど、このまま放っておくのも不安だった。

恥ずかしいけれど、もう肛門科に行くしかないか。
よりによって“あの場所”を診てもらうなんて──想像しただけで顔が熱くなる。
けれど、痛みは確実にそこにあるのだ。

早速近所の肛門科をスマホで検索してみた。
できれば女医さんのいる病院がいい。恥ずかしさを少しでも和らげたかった。
けれど、そんな都合のいい条件を満たす病院はなかなか見つからない。
表示されるのは、ほとんどが男性の医師ばかりだった。

いろいろと調べていくうちに、家からそう遠くない場所に評判のいいクリニックを見つけた。
口コミを読み、公式サイトを開いて医師の紹介ページを見るとそこには年配の男性医師の写真が載っていた。
──おじいちゃん先生。

若い男性に見られるよりはマシかもしれない。
そう自分に言い聞かせて、意を決して電話をかけることにした。


当日。
憂鬱な気持ちを抱えながら、クリニックへと足を運んだ。
入口をくぐると、受付には明るくハキハキとしたおばちゃんがいた。

「予約した村田です。」と声をかけると、
「はいはい、村田さんね。じゃあ、症状とかここに書いてね。」と問診票を渡された。

名前、住所、電話番号……そして症状の欄に、「お尻の中に違和感あり」「痛みを感じる」と記入する。
次の項目で、ふと手が止まった。

「性経験……?」

まさかこんなことまで書かされるとは思わず、思わず顔が熱くなる。
お付き合いしている人はいる。けれど、まだそういう関係にはなっていない。
嘘を書くわけにもいかず、「未経験」に丸をつける手が、自然と震えた。

「……書きました。」

問診票をおばちゃんに渡す。
すると──

「あら、あなた可愛いのに処女なのねぇ!」

驚くほど大きな声。
待合室にいた人たちの視線が一斉にこちらに向いたのが、肌でわかる。
まさか、こんな形で辱めを受けることになるなんて……。

「じゃあ、ちょっと待っててね。順番になったら呼ぶからね。」

その声に頷きながらも、心の中では「正直、もうこの場にいたくない」と思っていた。
男性もいるのに、どうしてあんな言い方をするんだろう。
羞恥と居心地の悪さに、胸が締めつけられるようだった。


診察の順番が来て名前を呼ばれ、重たい足取りで診察室に入る。
中には、落ち着いた雰囲気のおばちゃん看護師と、年配のおじいちゃん先生がいた。

「お尻の中の方が痛むんだね。まずはお腹の触診からかな」

先生の声は穏やかで、事務的な印象だった。
いきなりお尻を診るわけではないらしいとわかり、少しだけ安堵する。

看護師さんが手際よく服をめくり、下腹部に聴診器が当てられる。
「うんちは毎日ちゃんと出てるかな?」

たったそれだけの質問なのに、やはり顔が熱くなる。
「……はい。」

「じゃあ、便秘ではなさそうだね。固い便で切れたわけでもなさそうだし」

先生はお腹を軽く押さえながら、淡々と問診を進める。

「じゃあ次に、胸の診察もしておきましょうね」
先生の声は淡々としていて、特別なことではないような調子だった。

「えっ、胸も……ですか?」

思わず聞き返してしまった。
なぜ肛門科の診察で胸の検査が?と戸惑ったが、先生はすぐに補足する。

「肛門周辺の血流やホルモンの影響を見るうえでも、全身の状態を診ておきたいからね。乳腺の張りや痛みがあったら教えてください。」

看護師さんが優しく笑いながら、「リラックスしてね〜」と声をかけ、手早く服をまくり上げる。
そのままブラジャーのホックを外され、前を開かれた瞬間、肌が一気に空気に触れる感覚に包まれる。

──ああ、やっぱり恥ずかしい。

胸が露わになったことよりも、それを“他人に見られている”という事実が何より辛かった。
無意識に腕で隠そうとしたが、看護師さんにそっと手を上げられる。

「ごめんね、聴診のときに腕があると聞こえづらいの」

そう言われてしまえば従うしかない。
先生は、片手で聴診器を胸に当てながら静かに確認していく。

「うん、心音ちょっと速いね。緊張してるかな?」

それはもう、当然だった。
おじいちゃん先生とはいえ、男性に胸を見られるなんて、人生で初めてのことだったのだから。

「じゃあ触診していくからね。」

やはり触られてしまうのか…。

「痛みや違和感はないですか?」

「……ないです。」

声が少し震えてしまった。視線のやり場がわからず、診察室の天井をじっと見つめる。

「うん、しこりなども見当たらないね。柔らかかったし問題なさそうだよ。これは何カップかな?」

なんてことを聞くのだろうかと思ってしまった。
しかし反抗する気はもう無くなっていた。

「Cカップです…。」

「なるほどね。」

そう言いながら、先生は視診と軽い触診を続けた。
医師としての手つきなのはわかっている。
だけど、他人に見られたことのない場所を、しかも触れられたことのない相手に診られているという事実が羞恥心を刺激する。

「ちょっと乳腺の張り具合も見ておきましょうね。周期によっては痛むこともあるから。」

その説明すらも、胸の中でわずかな抵抗感と混乱を生む。
そっと指先が動いた。くすぐったいような、気まずいような感覚に、呼吸が浅くなる。

(これは……本当に、医療行為……)

そう思わないと、目の前の現実を受け止めきれなかった。
看護師さんが優しく背中を支えてくれるのが、せめてもの救いだった。
しかし、先生が乳首をつまんだ瞬間声が出てしまった。

「んぁ…!」

「はは、若い子は反応が良いね。」

キュッキュッと摘まんでいく。

「はい、診察は大丈夫そうですね。じゃあ、次は下のほうを診ていきますよ。」

やっと終わった、と思ったのも束の間。
本題はこれからなのだと気づいて、ますます心拍数が上がっていくのがわかった。


「では、お尻を診ますので、スカートと下着を脱いでくださいね。」

穏やかな声だったが、その内容は衝撃的だった。
一応、診察を意識してスカートを履いてきたけれど、それでも脱がないといけないとは…。

言われた通り、スカートと下着を脱ぐ。
そっと手で前を隠しながら、「……脱げました。」と、小さな声で伝えた。

「では、こちらのベッドにうつ伏せで横になってください。お尻を見えやすいように少しだけ上げてくださいね。」

(そんな……)

検索した時は「横向きで恥ずかしくない体勢」と書いてあったのに。
現実はずっと現実的で、ずっと恥ずかしい。

お尻を少し浮かせると、看護師さんがそっと体を支えてくれた。
そして──股のあたりを優しく清拭される。
それがまた恥ずかしかった…。

「はい、準備できましたよ。先生、お願いします。」

その言葉に、思わず体が強張った。
いよいよ、誰にも見せたことのない場所を診られてしまうのだ。

「では診ていきますね。」
先生の声は落ち着いていて、表情も真剣だった。

肛門のまわりをそっと確認していく。
「うん、周囲に傷はないようですね。……あ、虫眼鏡持ってきて。」

(虫眼鏡……!?)

羞恥の限界を突破しかける。

「うん、やっぱり中のほうですね。ちょっと確認しますよ。」

そう言った次の瞬間──
「うっ……!」

思わず声が漏れた。
肛門に指が入る感覚。軽い痛みと、何とも言えない異物感。

「うん、ここですね。イボができてます。初期の症状ですね。」

診断が下されたらしい。でも、羞恥と不思議な感覚で頭がぼんやりする。
(やっと……終わる?)

そう思った矢先だった。

「じゃあ、肛門の毛を少し剃りますね。毛深いと薬が届きにくいので。」

(もう……恥ずかしすぎて穴があったら入りたい……)

羞恥の波は止まることを知らなかった。
だけど、先生も看護師さんも淡々と動いている。
あくまで“診察”として、当たり前のように進んでいくことが、逆に恥ずかしさを助長するのだった。

「じゃあ、お尻の毛を剃りますね」
看護師さんがあくまで事務的な声で告げる。

「……はい。」

それだけの返事を返すのが、精一杯だった。

「ちょっと剃りにくいから、足をもう少し開いてもらえますか?」

(お願いだから、これ以上言わないで…)

内心で叫びながらも、言われたとおりに足を広げる。
スースーとした空気が肌に触れ、羞恥心はさらに募っていく。

「村田さん、ちょっと毛深いわね〜。最近の若い子ってけっこうツルツルだから、逆に新鮮よ。」

(お願い、ちょっと黙って…。)

どうやら看護師さんは、悪気なく思ったことをそのまま口に出すタイプらしい。
だからこそ、返って恥ずかしい。
顔は下を向いているのに、体はまるごと見られている。その感覚がひしひしと伝わってくる。

「はい、剃り終わりました。先生お願いします」

先生が再び診察室に現れる。
お尻を出したままの体勢のまま、再び視線を受ける。

「ふむ……じゃあ、記録も兼ねて写真を撮っておきましょうか。」

(……え?)

「えっと、それって……撮る必要が……?」

思わず声が出た。

「記録として残すだけですよ。治療前と治療後で変化を比べるのは大事ですからね。もちろん、外部に出すものではありません。」

説明としてはもっともらしい。
でも、“撮影される”という事実に、どうしても抵抗感があった。

「はい、じゃあ撮りますね。ちょっとだけお尻を…ご自身で、こう開いてもらえる?」

無理だった。恥ずかしさが勝ち、手が動かない。

「大丈夫ですよ〜、こっちでやりますね。」

そう言って看護師さんがサッと手を伸ばす。
そして、軽い力で肌が左右に開かれる感覚──羞恥の極地だった。

「準備できました。お願いします」

カシャ、という無機質な音が診察室に響いた。

その瞬間、心がどこか遠くへ飛びそうになる。
羞恥と戸惑いと、身体の緊張が重なって、息をするのも忘れていた。

「はい、じゃあ次は下も記録しますね」

「……え、下……?」

一瞬、何を言われているのかわからなかった。

「患部が広がっていないか確認のためです。粘膜の状態もしっかり残しておかないとね。ほら、医療記録ってやつですよ。」

あくまで説明は淡々としていたが、その内容の衝撃で、顔から火が出るかと思った。

「じゃあこっちも、少し開きますね。ごめんね〜、未経験の子はやっぱり綺麗ね。」

――その言葉に、意識が一瞬止まった。

(なにを……なにをさらっと言ってるの……!?)

「はい、先生、準備できました〜。」

返事をする間もなく、再びカメラのシャッター音が鳴る。

──カシャ。

羞恥という感情は、もう限界を超えていた。
何もかもが他人の手で進められていく。自分の意思では止められないという現実が、余計に心を掻き乱した。

「ふむ、綺麗な状態だね。薬もしっかり効くでしょう。」

先生の声すら、もう遠くに聞こえる気がした。

「では、肛門に薬を塗って終わりにしましょう。……その前に、下を拭いてあげて。」

先生が何気なくそう告げた。

(拭く……? “下”って、どこを?)

意味がわからず思考が止まったその瞬間、看護師さんが容赦なく手を伸ばし、ふたたび足を開かれた。
そして──

「失礼しますね、少し汚れてますので…」

柔らかいガーゼが、信じられない場所を拭っていく。

(うそ……なんで……?)

拭かれて初めて、そこに“潤い”があることに気づいた。
どうしてそんな状態になっていたのか、自分でもわからない。
ただ、羞恥が一気に爆発した。

顔から火が出そうなほど真っ赤になり、息すら詰まる。
なのに、看護師さんは気にも留めず、淡々と清拭を終えた。

「はい、綺麗になりましたよ。じゃあ、薬を塗りますね。」

先生の声で、現実に引き戻される。
軟膏が肛門に塗られる感覚が、妙に冷たく感じた。

「これで診察は終了です。薬を出しますね。治らないようだったら、また来てください。」

(……二度と来るかっ!)

心の中で強く叫びながらも、口では「はい、ありがとうございました。」としか言えなかった。
全身に残った羞恥の余韻が、診察室を出てもまだ消えなかった。


エピローグ

お尻の症状は、驚くほど綺麗に治った。
あれほど痛かったのが嘘みたいで、処方された薬もよく効いたらしい。
あれだけ恥ずかしい思いをしたけれど、結果が出たのなら……まぁ、許してやらなくもない。
きっとあの人達に悪意はないのだ。
ただ、倫理感が昭和で止まっているだけなのだ。

そんなふうに、ほんの少しだけ前向きになっていたある日。
ふと、あることを思い出した。

──あの時、撮られた写真。
あれって……ちゃんと消されてるんだろうか?

なんとなく気になって、クリニックのホームページを開いてみた。
そして、ある表示が目に飛び込んでくる。

「NEW 5/10 内痔核症例写真追加」

嫌な予感がしてクリックすると、そこに映っていたのは──
肛門のドアップ写真。
そして、横にはこう書かれていた。

「20歳女性 Mさん」

文章にはこうも添えられていた。

「内痔核はこのように外からは見えないことがあります。違和感を覚えたら早めの通院をおすすめします。」

……まさか、あれ、私?

血の気が引いた。慌ててクリニックに電話をかけた。
勝手に写真を使うなんて許されるわけもない。

「あら〜、あなた問診票に“写真を使用しても構いません”ってところに○つけてたのよ。ダメだった?ごめんなさいね〜。」
受付の女性は、まるで世間話のように笑いながら言った。

そういえば……性経験の欄に気を取られて、他の項目をちゃんと見ずに丸を付けたかもしれない。

画像はその日のうちに削除された。
だけど、ネットの世界は広い。

後日、とある掲示板のスレッドで──あの写真が保存され、出回っていたという話を耳にした。
恐る恐る検索してみると、思わず目を背けたくなる書き込みが目に飛び込んでくる。

「昔肛門科のサイトにあったんだけどすげー綺麗な肛門じゃねw」

──終わった、と思った。
恥ずかしさも怒りも、通り越して、ただ頭の中が真っ白になった。

今でも、ときおり“見かけてしまう”ことがある。

(でもまあ……今の私のお尻のほうが、もっと綺麗だから)

自分を励ますように、そう考えることにしている。

END


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