今日は、心待ちにしていた会社の慰養旅行だった。
一泊二日の短い旅程だけれど、僕にとっては特別な意味があった。
学生時代は少し体が弱くて、家族以外と一緒に旅行へ行く機会なんて一度もなかったからだ。
観光バスに揺られて名所を巡り、ようやく辿り着いた老舗の旅館。
夕食の前に同僚たちと連れ立って、賑やかに大浴場へと向かった。
洗い場で丁寧に体を洗い、さあ湯船に浸かろうと腰を上げた、その時だった。
隣でシャワーを浴びていた先輩が、じっと僕の下半身を見つめていることに気がついた。
「? どうかしましたか、先輩?」
首を傾げて問いかけると、先輩は少しだけ神妙な、どこか同情の混じったような顔で口を開いた。
「お前……それ、ずいぶん小さいな。」
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
反射的に先輩の股間に目を向けて、僕は絶句した。
そこには、僕のものとは明らかに規格の違う「雄」の象徴が鎮座していた。
控えめに言っても、僕の倍はあるだろう。
慌てて周囲を見渡すと、さらに残酷な現実が突きつけられた。
楽しげに笑い合う同僚たち、湯船から上がる上司。
誰もが、僕よりもずっと立派なものを携えていたんだ。
これまで他人と裸で並ぶ機会がなかった僕は、自分のそれが「普通」だと思い込んでいた。
もちろん、AVなどで見るものは大きいと思っていたけれど、それは特別な男優だからこその特権だと思っていた。
でも、現実は違った。 誰かが特別大きいんじゃない。僕だけが、極端に小さかったんだ。
「……そ、そうですかね。あはは……」
乾いた笑いを返すのが精一杯だった。 顔が熱い。
それがお湯の熱気のせいではないことは、自分が一番よく分かっていた。
「まあ、元気出せよ。ちんこの大きさが男のすべてじゃないからな!」
先輩はガハハと豪快に笑いながら、僕の背中をバチンと叩いて湯船の方へと歩いていった。
励ましの言葉が、かえって僕の惨めさを増幅させる。
賑やかな宴会の気配が漂う旅館の中で、僕の心には、小さな棘が深く刺さった気がした。
テーブルには立派なごちそうが所狭しと並んでいる。
普段の僕なら、きっと子供みたいに目を輝かせていただろう。
けれど、浴場でのあの一件が、心の底に沈殿して離れなかった。
せっかくの料理も、砂を噛んでいるようでほとんど味がしなかった。
宴もたけなわになり、周囲には赤ら顔の同僚が増え、お酒の匂いが会場に充満し始めた頃だ。
件の吉田先輩が、千鳥足で僕の隣にどっかと腰を下ろした。
「なんか暗いなー。お前、もしかしてさっきのこと気にしてるのか?」
鼻をつく猛烈なアルコール臭。相当酔っているようだ。
「いえ、そんなことは……」
精一杯の拒絶を込めたつもりだったけれど、先輩は僕の背中を、逃げ場を奪うようにバン!と叩いた。 そして、大きな声で言い放った。
「別にちんこが小さいくらいで落ち込むなって! ああ、包茎はどうにかした方がいいかもしれないけどな!」
その瞬間、沸き立っていた宴会場が、嘘のようにしん……と静まり返った。
ガハハと笑っていた先輩も、さすがに異様な空気に気づいたらしい。
この時、僕は一体どんな顔をしていただろう。
先ほどの小さな棘が、今度は心の奥深くまで、ぐりぐりと食い込んでいくのを感じた。
「い、いや、こいつが自分のちんこの小ささに悩んでたみたいだったからさ……」
空気を読もうとしたのか、先輩がさらに追い打ちをかける。
女子社員もいるこの場所で、僕の、僕だけの秘めておきたかったはずの屈辱が、無残にさらけ出されてしまった。
その時だった。
「ちょっと、吉田先輩! そんなことをみんなの前で言うなんて、いくらなんでも酷すぎます!」
隣に座っていた同期の小池さんが、鋭い声を上げた。
周囲を見渡せば、他の社員たちも冷ややかな「白い目」で先輩を射抜いている。
居心地が悪くなったのか、先輩は「あはは……」と力なく笑いながら、逃げるように自分の席へと戻っていった。
小池さんが怒ってくれたのは、確かに嬉しかった。
けれど、それ以上に「同情されるほど惨めな自分」という事実が、僕の喉を締め付ける。
優しさが、今の僕にはどんな毒よりも痛かった。
僕はそれ以上何も考えたくなくて、普段は口にしないアルコールを、逃げるように煽り続けた。
「古賀くん、大丈夫……?」
同期の古賀くんは、さっきの騒動以降、明らかにペースを乱してお酒を煽っていた。
その体は危なっかしく左右に揺れ、今はもう、こっくりこっくりと船を漕いでいる。
「らいじょうぶ、らいじょうぶ……もっと飲む……。」
ろれつも回っていない。これは絶対に大丈夫なわけがない。
このまま放っておけば、急性アルコール中毒にだってなりかねない。
「……部屋に連れて行ったほうが良さそうね。」
横から凛とした声がした。片桐先輩だ。
私と古賀くんの面倒をいつもよく見てくれる頼りになる人。
「小池さん、右側を支えて。私が反対から持つから。」
私は急いで古賀くんの右側に回り込み、二人で彼を無理やり立ち上がらせた。
「うーん……まら、飲む……。」
古賀くんが何かぶつぶつ言っているけれど、今は無視したほうがいい。
一刻も早く部屋に運んで、布団に寝かせないと。
片桐先輩と二人、肩を貸して廊下を歩く。
襖を開けると、修学旅行のように整然と布団が敷かれていた。
「よし、古賀くん。今日はもう寝なさい。」
片桐先輩が優しく囁くように促す。
けれど、古賀くんは頑として布団に入ろうとしなかった。
「まだ飲めるって! お酒ちょーらい!」
普段はあんなに真面目で控えめな彼が、ここまで乱れるなんて。
「はいはい、また明日ね。明日飲みましょう。」
先輩が子供を諭すような口調でなだめる。
けれど、古賀くんの口から飛び出したのは、卑屈な叫びだった。
「……どうせ、二人とも僕のことバカにしてるんだろ?」
「えっ……? 古賀くん、誰もそんなこと思ってないよ。ほら、もう寝よう?」
私は彼を布団へ誘導しようとした。
けれど、古賀くんは必死に抵抗を続ける。
「ちんちんが小さくて、悪かったな……!」
……やっぱり、さっきの件だ。
あれはさすがに先輩のデリカシーがなさすぎて、私も思いきり怒ってしまったけれど、古賀くんの受けたダメージは想像以上に深かったみたいだ。
「別に、小さいからってバカにしてないでしょ。」
片桐先輩が少し呆れたように、ため息混じりに言った。
そりゃそうだ。私たちは直接見たわけでもないのだから。
「ろうせ二人とも、見たら笑いものにするんらろ? 知ってる!」
知っていると言われても困るけれど、古賀くんは完全に「酒の闇」に飲まれてしまっている。
遅々として進まない介抱に、ついに片桐先輩が痺れを切らしたようだった。
「わかったわ。――見てあげるから、笑わなかったら大人しく寝なさい。」
「……え?」
耳を疑った。 片桐先輩は、一体何を言っているんだろう。
「よし! みてくらはい!」
そう言いながら、古賀くんは勢いよく浴衣の前をはだけた。
露わになった彼の胸元や腹部に、私はとっさに目を逸らしてしまった。
「パンツは自分で脱ぐ? それとも、脱がした方がいい?」
片桐先輩の冷静な問いかけに、ハッとする。
……そうか、まだパンツは履いていたんだ。
いや、そもそも同期のパンツをまじまじと見るなんて、人としてどうなんだろう。
そんな自問自答が頭の中をぐるぐると駆け巡る。
「小池さん、嫌だったら見なくていいからね。」
片桐先輩が、私の反応を気遣ってこそっと囁く。
だが、興味がないと言えば嘘になる。
生まれてこの方、私は「おちんちん」というものを生で一度も見たことがなかった。
そういった事柄にどうも縁がないまま、今日まで経験せずに過ごしてしまったことは密かなコンプレックスにすらなっていた。
どうやら、古賀くんのそれは小さいらしい。
それなら――初めて見る対象として、私でも受け止められるかもしれない。
そんな気持ちがどこかにあった。
……それに、古賀くんのことを嫌いじゃないっていうことも、私の背中を押していた。
私は自分に都合の良い言い訳を心にしまい込むと、「いえ、私も見ます」とはっきり答えた。
(ごめんね、古賀くん。でも、ちゃんと見届けるからね……。)
「じぶんでぬぎます! みてくらはい!」
そう宣言すると、古賀くんは躊躇うことなくパンツを下ろした。
今度は見ると心に決めていたから、私は目を逸らさなかった。
下着の隙間から、ぷるんと顔を出したもの。
それは、私が想像していたよりもずっと「かわいい」ものだった。
教科書などで見た「ペニス」という無機質な名称より、よっぽど「おちんちん」という響きがしっくりくる。
「先輩、これって……小さいんですか?」
念のために尋ねてみた。
「もしかして小池さん、初めて見るの? これは、だいぶ小さいわよ。」
片桐先輩が、古賀くんに聞こえないよう耳元でこそこそと教えてくれた。
なるほど……やっぱりこれは、一般的には小さい部類に入るんだ。
「なにこそこそ話してるのら! やっぱり、僕のことバカにしてるんだ!」
不穏な空気を感じ取ったのか、古賀くんがまた騒ぎ出した。
この状況をもし他の誰かに見られたら、取り返しのつかないことになる――そんな予感がして、心臓の鼓動が早くなる。
すると、片桐先輩が古賀くんのそれに手を伸ばし、キュッと指先でつまみ上げた。
「古賀くん。確かに今は小さいけれど、そんなのは男同士の見栄でしかないのよ。女に見せるつもりなら……勃起させなさい。」
「勃起……っ!?」
あまりに扇情的な言葉に驚き、私は先輩の顔をまじまじと見た。
けれど、先輩は至って真面目な、どこか挑戦的な表情を崩さない。
先輩の指先が、怪しく、滑らかに動き始めた。
私が唖然として見守る中、古賀くんの小さかったそれは、まるで独自の意志を持ち始めたかのようにぐんぐんと天を仰いでいく。
私は生まれて初めて、おちんちんが勃起するその瞬間を、目の当たりにしてしまった。
……どうして、こんなことになっているのだろうか。
片桐先輩が僕のちんちんを触っている。
そのすぐ横で、小池さんがそれをまじまじと見つめている。
さっきまで確か宴会場で飲んでいたはずなのに、記憶が追いつかない。
片桐先輩の手が、僕のそれを上下にさすりあげる。
時折、皮の上から亀頭を揉み、カリカリと爪で先端をなぞられる。
初めて味わうその強烈な感覚に、お酒の酔いはすっかり冷めてしまっていた。
「先輩、大きくなりましたね。こんなの初めて見ました。」
「小池さん、本物もエッチな動画とかも見たことないの?」
「……はい、お恥ずかしながら……」
「別にいいんじゃない? かわいいんだから、その気になれば彼氏なんてすぐにできるでしょ。」
「……そうですかね。私、全然男の人に縁がないんですよ。」
「うーん、おちんちん小さいけど、古賀くんとかはどうなの?」
「いえ、嫌いじゃないですけど……」
僕のちんちんをいじりながら、二人でガールズトークが始まってしまった。
というか、小池さんの前ではっきり「小さい」って言われたな……。
片桐先輩は社内恋愛中だから、僕も彼氏さんに会ったことがある。
やっぱりあの人も、僕なんかよりずっと大きいのを持っているんだろうな……。
そう思うと少ししょぼんとしてしまうけれど、それ以上に差し迫った問題があった。
先輩の無意識(?)な手コキのせいで、僕はもう射精寸前なのだ。
「あ、先輩、先っぽがすごい濡れていますよ。」
「これが我慢汁ってやつね。もうすぐ射精する合図みたいなものよ。」
解説しながら、先輩の手のスピードが上がる。
グチュグチュと、静かな部屋に淫猥な水の音が響き渡る。
「せ、先輩、出ちゃいます……っ!」
耐えきれず、情けない声が漏れた。
「一回出しちゃいなさい。それから話をしましょう。小池さん、そこのティッシュ取って。」
手を止めずに的確な指示を出す。
こんな状況でも、やっぱり仕事ができる人なんだな……。
妙な感心をしながら、僕は一気に絶頂へと上り詰めた。
「……っ!?」
声にもならない衝撃に体が痙攣する。
そこからビュビュッと、白濁した液体が勢いよく吐き出された。
小池さんが差し出してくれたティッシュに、二度、三度とぶつけるように射精する。
それを見つめる小池さんは、口をあんぐりと開けて固まっていた。
本当に、一度も見たことがなかったんだ。
先輩は僕の包皮を丁寧にめくり、その中までしっかりティッシュで拭き取ってくれた。
もう、男としての立つ瀬なんて、どこにも残っていなかった。
すごいものを見てしまった……。確かに、知識としては知っていた。
けれど、実際の「射精」があんなに迫力のあるものだとは思わなかった。
古賀くんのおちんちんから、精液がビュビュッと、ティッシュを突き破らんとする勢いで吐き出されていく。
……いや、さすがにそれは私の誇張かもしれないけれど、少なくとも私の目にはそう映ってしまった。
あんなに小さかったおちんちんが、その瞬間だけはものすごく男らしく見えてしまったのだ。
「さて、古賀くん。いつから酔いは覚めていたの?」
古賀くんは乱れた浴衣を整え、片桐先輩の前で借りてきた猫のように正座している。
「あの、先輩が……僕のちんちんを掴んだあたりから……」
「そう。もしかして、会話も全部聞いていた?」
「……はい、すみません……」
古賀くんが縮こまりながら返事をする。……というか、ちょっと待って。
会話を全部聞いていたってことは、古賀くんに「私がまだ未経験だ」ってことがバレてしまったんじゃ……。
その瞬間、火が出るほど顔が熱くなった。
よりによって同期の男の子に、私の恥ずかしい秘密を知られてしまったのだ。
なんなら、大学生の頃に彼氏いたよ?みたいな話もしてしまっていた。
恥ずかしい……。
ただの見栄っ張りの処女だと思われてしまったに違いない。
私は古賀くんと共に、その場に小さく丸まってしまった。
そんな私たちを見て、片桐先輩が呆れたようにため息をつく。
「別に、処女と童貞でもいいじゃない。経験の有無で人間性が変わるわけでもないわよ。」
それはきっと正しい。
正しいのだけれど、そう簡単に割り切れるものでもなかった。
「わかったわかった。古賀くん、私たちの会話を盗み聞きした『罰』を受ける気はあるかな?」
……また先輩が変なことを言い出した。
一体、次は何をさせるつもりなのだろう。
「……今日のことを内緒にしてくれるなら、罰は受けます。」
古賀くんまでそんなことを言い出した。
よく考えろ、古賀くん。君は別に罰を受ける必要なんてないんだ。
どう考えても、酔っているからと油断して本音を漏らした私が悪いのだから。
「小池さんも顔を上げて。いい機会だから、もうちょっと男慣れしなさい。そうすれば、処女なんてすぐに捨てられるわよ。」
……だから、あんまり処女と連呼しないでほしい。
でも、もしかしたら、これも何かのきっかけになるのかもしれない。
そう思って私はゆっくり顔を上げた。
同じタイミングで、古賀くんも顔を上げた。
どうやらお互い、何かしらの覚悟を決めたようだ。
片桐先輩が、チラリと部屋の様子を見渡した。
「古賀くん、まだパンツは履いていないわよね。じゃ、ちょっと小池さんの前に立って。」
促されるまま、僕は正座している小池さんの目の前に立った。
至近距離で僕を見上げる小池さんは、驚くほど可愛かった。
そして、お風呂上がりの恐らくすっぴんであろう女性の顔が、こんなに生々しくつややかだとは思ってもいなかった。
嫌でも意識してしまい、心臓の鼓動がうるさいほど早くなる。
「小池さんは、古賀くんの浴衣の裾を捲り上げなさい。……いい? 自分が『できる』と思う範囲で構わないわよ。」
また小池さんに見られるのか……。小池さんは嫌がっていないんだろうか。
そう不安に思った瞬間、彼女の口から意外な言葉が飛び出した。
「わかりました。思いっきり見てやります!」
……あれ? 意外とノリノリだ。なんだか、吹っ切れたような清々しさすら感じる。
まあ、嫌がられていないのなら、いいんだけどさ。
「古賀くん、めくるね。」
彼女の宣言に、僕はまたドキドキしてしまう。
さっき先輩に出して貰ったとはいえ、「小さい」というコンプレックスが消え去ったわけではない。
「うん、いいよ……」
そう答えるやいなや、浴衣がガバッと思い切りよく開けられた。
展開の早さに面食らう。
もしかして、小池さんも結構お酒が回っているんじゃないだろうか。
可愛い女の子の目の前で、僕の「小さいそれ」が無防備に晒されている。
やはり耐えがたい羞恥心に襲われ、僕はとっさに両手でそこを隠してしまった。
すると、先輩の手が僕の手を優しく掴んだ。
「古賀くんも恥ずかしいと思うけど、これは『小さい』っていうコンプレックスを解消するチャンスかもしれないよ?」
先輩は、悪戯っぽくにっこりと笑ってそう言った。
……確かに、そうかもしれない。
僕は勇気を振り絞り、自分を隠していた手をゆっくりと離した。
「うわー……」
小池さんが、何やら感心したように見入っている。
触れられているわけでもないのに、視線だけで肌がむず痒くなっていく。
その時、僕は気づいてしまった。
小池さんの浴衣が、大きくはだけていることに。
もちろん、大事な部分が見えているわけじゃない。
けれど、胸元から覗く白い谷間や、露わになった生々しい太もも……。
生で見る本物の女の子の身体は、童貞の僕にはあまりに刺激が強すぎた。
「わ、触ってないのに大きくなった!」
小池さんが驚きの声を上げる。
視界に飛び込んできた熱を帯びた光景に、僕の身体は正直に反応してしまった。
これは……僕は、悪くないよね。
「まぁ、勃起したのはちょうど良かったとも取れるかな。古賀くん、触ってもいい?」
さっき触っていたのに何を、と一瞬思った。
けれど、今の僕からしたら拒絶する理由なんてどこにもない。
むしろ、もっと触れてほしいという渇望が勝っていた。
小池さんも可愛いけれど、片桐先輩だってかなりの美人だ。
いつも薄手のシャツから漂う微かな香りに、僕は隣で仕事を教わるたび密かに胸を高鳴らせていた。
おまけに先輩はいつも膝上のスカートを穿いている。
以前、ふとした拍子に彼女の下着を見てしまったときは、しばらくそれを思い出しては一人で「夜の慰み」に耽っていたことさえあった。
つまり、僕にとっては社内の憧れトップ2とも言える女性たちが、今まさに僕のちんちんに触れようとしているのだ。
「は、はい! 大丈夫です!」
裏返った大きな声が出てしまい、先輩が「ふふっ」と可笑しそうに口元を綻ばせた。
「では小池さん、私と一緒に触りましょうか。これも立派な性教育だと思ってね。」
先輩はそう言うと、小池さんの震える手を導き、そっと僕の熱い塊に添えさせた。
おずおずとした感じで指先が触れる。
「わ……固い。それに、すごく熱いね……」
いつも以上にガチガチに膨らんだそれを、小池さんはゆっくりと愛撫する。
自分でするのとは次元の違う、形容しがたい充足感。
女の子に触れられるということは、これほどまでに脳を痺れさせるものなのか、と僕は身をもって思い知らされていた。
「古賀くんは……まぁ包茎なんだけど、剥いてあげようか。」
その言葉に、小池さんが困惑したような表情を浮かべた。
「あの、ほうけいって何ですか? 友達が話していた気もするんですけど、その手の話題は苦手で詳しく聞けなくて……」
小池さんは、僕の想像以上に「何も知らない」のかもしれない。
大学時代に彼氏と旅行したという話も、やはり虚勢だったのだろう。
そう思うと、彼女の強がりが急に愛おしく、微笑ましく感じられた。
「そうね、変な先入観がつくと困るから、私より古賀くんが説明してあげて。」
先輩がニヤニヤと意地悪く微笑む。
自分が一番のコンプレックスに思っている部分を、あえて初心な女の子に解説させるなんて……。
だが、どうしたことだろう。
羞恥に焼かれるはずの僕の身体は、逆に内側から熱を帯びていく。
無知な女の子に、自分の秘部について説いて聞かせる――その倒錯したシチュエーションが、僕を激しく興奮させた。
「えっと……おちんちんは大人になると、皮が剥けるようになるんだ。まだ皮が被っている状態を『包茎』って言うんだよ。」
小池さんは顔を真っ赤に染めながら、一言も漏らすまいと僕の説明に聞き入っている。
「じゃあ……古賀くんは、まだ『子供のおちんちん』なの?」
その無垢な、しかしあまりに直球な発言に先輩がついに吹き出した。
「ご、ごめんね。絶対笑わないって決めていたのに……っ」
口を押さえ、肩を震わせる先輩。
小池さんは先輩と僕の顔を交互に見ながら、自分の発言が正しかったのか分からず、不安そうに眉を寄せている。
「……う、うん。包茎だし、まだ誰かと『使った』こともないから、子供と言えば子供かな……」
少し気落ちして俯いた僕に、先輩がフォローを投げた。
「補足しておくと、皮が被っているから子供ってわけじゃないわよ。古賀くんみたいに手で剥けるなら機能的には何の問題もないわ。そういうのを『仮性包茎』って言って、日本人の半分以上はそれなんだから。」
先輩は一呼吸おくと、含み笑いと共に断言した。
「もし仮性包茎が大人じゃないって言うなら、日本の男に『大人』なんてほとんどいなくなっちゃうわよ。」
そうだったのか。
僕自身、自分の身体のことなのに、そんな知識さえ持っていなかった。
「さあ小池さん。おちんちんの先を優しくつまんで、ゆっくり下ろしてみて。」
僕の先端を摘まむ小池さんの指に、先輩が自分の手を重ね、ゆっくりと皮を押し下げていく。
脳髄を突き抜けるような、ゾクゾクとする未知の快感。
そして、つるんと剥き出しになった真っ赤な亀頭が、初めて彼女たちの眼前に晒された。
「わ、こんな風になっているんだ……。古賀くん、痛くないの?」
ちんちんを摘まんだまま、潤んだ瞳で僕を見上げる小池さん。
お風呂上がりのつややかな顔でそんな風に見つめられて、心臓が爆発しそうだった。
「うん、痛くはないよ。……むしろ、気持ちいいくらいだ。」
僕の告白に応えるように、剥き出しになった先端から透明な雫がツーッと一筋、彼女の指先を汚して滴り落ちた。
「よし、このままじゃ古賀くんも苦しいわよね。小池さん、優しく握ってゆっくり上下に擦ってあげて。」
先輩に促され、小池さんが「これでいいのかな……?」と探るような手つきで扱き始めた。
彼女なりに加減しているのだろう、力を入れすぎない柔らかな愛撫。
そのソフトな感触もまた、これまでにない心地よさを僕に与えてくれた。
先ほどから溢れ出ている透明な液体が、彼女の手のひらでクチュクチュと密やかな音を立てる。
静かな部屋に僕の荒い息遣いだけが混じり始めた。
「き、気持ちいい? 痛くない?」
小池さんが心配そうに、上目遣いで僕の顔を覗き込む。
「うん、気持ちいいよ……」
嘘ではない。確かに気持ちいい。
けれど、優しすぎるその手つきでは、どうにも絶頂まで届かない「生殺し」のような感覚に陥っていた。
クチュクチュ、クチュクチュ……部屋に淫らな水の音が響き続ける。
見かねたのか、片桐先輩が背後から小池さんの手を上から包むように握り込んだ。
「もうちょっと力を入れて握ってもいいのよ。小池さんだって、自分でする時に優しすぎちゃイケないでしょ?」
その言葉に、小池さんが火がついたように慌て出した。
「わ、わわ! 私は自分でそんなことなんかしません! しませんってば!」
あまりに必死なその慌てよう。
――もしかして、あの小池さんが、一人で? その想像が脳裏をよぎった瞬間、一気に跳ね上がるような熱が僕の股間を突き抜けた。
「あ! 出ちゃいます……っ!」
片桐先輩がニヤリと唇を歪めた。
小池さんの手を借りたまま、先輩が容赦なくスピードを上げる。
「いいわ、そのままイッてしまいなさい。」
グチュグチュという激しい音が鳴り響き、ついにその瞬間が訪れた。
「うああああ!?」
情けない絶叫と共に、白濁した液体が勢いよくほとばしる。
「キャッ!」
射精の余韻に浸る間もなく、僕は悲鳴の上がった方へ視線を走らせた。
……絶句した。
小池さんの、あのつややかな頬に、僕の吐き出したものがべったりと張り付いていた。
まさか二回目なのに、これほどの勢いで出るとは思いもしなかったのだ。
先輩もさすがに「これはまずい」と思ったのか、慌ててティッシュを引っ張り出した。
「古賀くん! そこにあるウェットティッシュ取って!」 「は、はい!」
呆然とする小池さんの顔を、僕たちは必死になって拭った。
「ごめんなさい……本当にごめんなさい……」
平謝りする僕に、小池さんは顔を赤くしながらも、ふっと微笑んでくれた。
「いいよ、気にしないで。寝る前にまたお風呂に入る予定だったから、大丈夫。」
どうやら本気で怒ってはいないようだった。
僕は胸を撫で下ろしたけれど、小池さんは少し不満げな顔で先輩に向き直った。
「……あの、私、本当に一人でなんかしませんからね。」
その念押しに、先輩はまたしても噴き出してしまった。
「あはは! あれはね、唐突にエッチなことを言われると、男性は一気に興奮度が増すのよ。『言葉責め』……とまでは行かないけど、その一環ね。」
なるほど、そんな心理的なテクニックがあるのか――。
僕が感心していると、先輩が僕の耳元にスッと顔を寄せ、小さな声で囁いた。
「……小池さん、絶対オナニーしてるわよ。あの反応は間違いないわ。」
その囁きに、僕の股間がまたしても熱く疼きそうになった。
先輩は僕の背中をバンと力強く叩いた。
「古賀くん、もう酔いは醒めたかしら? 大丈夫なら、みんなでお風呂に行きましょう。汗もかいちゃったしね。」
確かにその通りだ。小池さんの顔も、ちゃんと洗い流してもらわないと困る。
「ここのお風呂、混浴はないけれど一人で大丈夫?」
「大丈夫です!」
そんなやりとりをする中、小池さんは手鏡を覗いていた。
拭き取ったとはいえ、やはり顔に残った感触が気になっているようだ。
「早く、お風呂に行きましょ。」
僕たちは連れ立って、再び夜の湯殿へと向かった。
エピローグ
翌朝。朝食会場へと向かう途中で、件の吉田先輩に呼び止められた。
「……古賀。昨日は本当にすまなかった。あんな場所で、君を傷つけるような発言をしてしまって。」
先輩は、昨日の豪快さが嘘のように深々と頭を下げた。
だが、僕の心にはもう、あの「棘」は残っていなかった。
「先輩、頭を上げてください。今度、焼肉をご馳走してくれるなら、それで手を打ちますよ。」
僕が冗談めかして言うと、先輩は心底ホッとしたような表情を浮かべた。
どうやら僕のいない間に、周囲の人から相当絞られたらしい。
いつも大きく見えていた先輩が、今は二回りほど小さく見えた。
正直、自分のコンプレックスが周囲に露呈したことなんて、もうどうでもよかった。
小池さんと片桐先輩――社内の憧れであるあの二人に「中身」をさらけ出し、その手で抜いてもらった。
その圧倒的な優越感に比べれば、小さな悩みなど消し飛んでいた。
「古賀くん、おはよう! 早く朝食に行こう?」
僕を見つけて、小池さんが小さく手を振りながら駆け寄ってきた。
昨夜の出来事以来、彼女との距離は劇的に縮まった気がする。
今日の観光も一緒に回る約束をしているし、少しだけ、ほんの少しだけきっかけをくれた吉田先輩に感謝したいくらいだ。
……まあ、本人に言うと調子に乗るから、絶対に教えないけれど。
「二人とも、朝食はバイキングよ。なんと朝からステーキがあるんですって。」
後ろから軽やかな声で話しかけてきたのは、片桐先輩だ。
先輩も、以前よりずっと親しみやすい表情を見せてくれるようになった。
恥ずかしい出来事から始まったこの物語は、それを遥かに凌駕する「もっと恥ずかしい出来事」を乗り越えて、僕たちを新しいステージへと運んでくれたようだ。
横を歩く小池さんと、いつかプライベートでも並んで歩けるような男になりたい。
そんな決意を胸に、僕はステーキの香りが漂うバイキング会場へと力強く足を踏み入れた。
END


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