【創作羞恥小説】万引きの冤罪

創作羞恥CFNM

やっと授業が終わった。

急いで荷物をまとめ、教室を飛び出した。
目的地はコンビニ。今日から発売の、カード入りウエハースだ。
急がないと売り切れてしまう。

そんなわけで家まで走って帰り、学生バッグを放り投げるように置くと、手提げカバンだけを掴んで外へ出た。
コンビニやスーパーを数軒回るつもりだったから、自転車にまたがり、勢いよく漕ぎ出す。

「……完全に出遅れた。」

近所のコンビニやスーパーは、売っていた“形跡”だけが残っていた。
棚はすでに空で、どこも同じ。
ここまで人気があるとは、正直まったく予想していなかった。

結局家から少し離れた、これまで一度も来たことがないコンビニにたどり着いた。
「ここになかったら、駅一つ先のコンビニかな…。」
そう呟きながら、コンビニに入っていった。

店内に入ると、小さな子供が「キャー!」と奇声を上げながら走り回っていた。

(おいおい、親はいないのかよ…。)

心の中で小さく悪態をつきつつ、まっすぐお菓子コーナーへ向かう。
棚の前に立ち、視線を左右に滑らせた。

「えーと…。」

一旦カバンを床に置き、棚を指でなぞりながら、目当ての商品を探した。
だが、どこを探しても影も形もない。
売り切れならまだしも、陳列されていた形跡さえないのは珍しい。
さっき回った同系列の店では、中身がなくても空箱くらいは置いてあったのに。

がっかりしたまま顔を上げると、すぐ隣に、さっきまで奇声を上げて走っていた子どもが立っていた。
だが、いちいち相手をするのも馬鹿馬鹿しい。
次の店へ向かうため、俺は早足で店を出ようとした。

そして、扉に手をかけた――その瞬間だった。

腕を、ガッと掴まれる。

「……え?」

反射的に振り返ると、店員だろう女性が、こちらを鋭く睨んでいた。

「お会計していない商品、ありますよね?」

低く威圧的な声が店内に響いた。


当然、身に覚えなんてない。
欲しい商品は、置いてある形跡すらなかったのだから。

「え? 何も持っていませんけど?」

そう言うしかなかった。
すると店員は、こちらの返事を待つでもなく、手提げカバンをひったくるように奪った。

「中を確認させていただきます。」

少しムッとした。けれど、こんなところで揉めて足止めを食らうのも嫌だ。
早く次の店へ行きたい。
仕方なく、カバンの中身を探られる様子を黙って見ていた。

ガサガサ、と遠慮のない音。
ペンケース、財布、スマホ――次々に引っ張り出されていく。

そして。

カバンの奥から、見覚えのないお菓子が出てきた。

「……ほら。」

店員は勝ち誇ったように口角を上げた。まるで“やっぱりね”と言わんばかりだ。
頭が真っ白になる。

(え……?)

本当に、知らない。
そんなもの、入れた覚えは一ミリもない。

「え? そんなの入れてないですよ!」

思わず声が裏返った。
けれど店員は、こちらの必死さなど歯牙にもかけず、冷たく言い放つ。

「泥棒はいつもそんな言い訳するのよ。いいから裏に来なさい。」

言葉の一つひとつが、釘みたいに刺さった。
反論しようとしても、店員の目つきと声の強さが、有無を言わせない。

周りの視線が一気に集まるのがわかる。
レジ前の空気が、ピンと張り詰めた。

(違う。ほんとに違うのに――。)

喉が詰まって、うまく言葉が出ない。

「……わ、わかりました……。」

そう答えるしかなかった。
こうして俺は、店員に促されるまま、コンビニのバックヤードへ連れて行かれることになってしまった。


バックヤードに入ると、もう一人、女性の店員がいた。
二人とも、おそらくアラサーくらいだろうか。冷ややかな視線が突き刺さる。

先にいた店員が、俺の顔と制服をざっと見て言う。

「制服着てるから学生ね。学生証、出しなさい。」

逆らっても状況が悪化するだけだと思い、渋々学生証を差し出した。
受け取った店員が目を通し、もう一人に見せる。

「ああ、あの学校の生徒ね。学校に通報したら停学か、最悪退学ね。」

息が止まった。
冤罪なのに、退学なんて――そんなの、困る。いや、困るどころじゃない。

でも、カバンから“それ”が出てきたのも事実だった。
頭の中がぐちゃぐちゃになる。

「では、これから身体検査をします。」

そう言いながら、店員は当然のように俺のポケットに手を入れてきた。
探られる感覚が気持ち悪い。反射的に身を引きたくなるのに、引けない。

当然、何も出てくるはずがない。

「ポケットには無さそうね。」

その一言で、ほんの少しだけ胸が緩んだ。
――やっと終わる。そう思った。

けれど、終わらなかった。

「服の下にも隠してるかもしれないわね。制服、脱いで渡しなさい。」

……え?

「いや、それは……。」

言いかけた瞬間、店員が無言で電話に手を伸ばした。
その動きが、やけに現実味を持って迫ってくる。

「こっちの言うことを聞けないんだったら、警察に通報するしかないね。」

死の宣告みたいな言葉だった。
警察に電話なんてされたら、本当に終わる。
親に迷惑がかかる。学校にも連絡が行く。冤罪でも、人生が壊れる。

「……脱ぎますから。警察に、通報はしないでください……。」

喉が乾いて、声が小さくなる。
俺は震える指で制服の上着に手をかけ、脱いで渡した。

店員は上着を雑に広げ、ポケットや裏地を確かめるように探る。

「こっちには何も無さそうね。次はズボンも脱いで渡しなさい。」

……やっぱり来た。そんな気はしていた。

俺は歯を食いしばって、ズボンも脱いで渡す。
ワイシャツとパンツだけ――急に、身体の輪郭が剥き出しになるみたいで、足元が心許ない。

すると、もう一人の店員が淡々と言った。

「シャツも脱いで渡しなさい。そこにもポケットがあるからね。」

……ワイシャツの胸ポケットに、何が入るっていうんだ。
言い返したいのに、さっきの“通報”の言葉が喉に刺さっている。

結局、俺はワイシャツも脱いで渡し、肌着だけの姿になる。
部屋は暑くもないのに、汗が噴き出してくる。
背中がぞわぞわして、指先が冷たい。

そんな俺に、さらに追い打ちが来た。

「じゃあ、その下のシャツとパンツも脱いで渡しなさい。」

さすがに、それはおかしい。
そんなところに隠せる商品なんて、あるわけがない。

「そこまでしなくても良くないですか? もう何も持っていないって、わかりますよね?」

必死に抗議した。
でも、その言葉は、電話に伸ばされた手ひとつで簡単にかき消された。

「……やるの? やらないの?」

視線が刺さる。
逃げ道が、ない。

女性二人の前で、全裸になるしか道はない。
そう理解した瞬間、腹の底が冷えていった。


仕方なくシャツを脱いで渡した。

「あら、意外と引き締まった身体しているわね。」

一人の女性が、ちょっと楽しそうに言う。何が楽しいんだか、と心で悪態をつきながら、俺はパンツに手をかけた。
だが、指が言うことをきかない。

「あらあら、恥ずかしいのかな? でも、犯罪者に人権なんて無いからね。」

とんでもないことを言う。まだ犯罪者じゃないだろ――と心の中で叫びながら、俺は一気にそれを下ろした。
空気にさらされた瞬間、全身がぞわりと粟立つ。

「……ぷぷ、小さいね。」

「そんなこと言っちゃ可哀想よ。小さくて皮被っているけど、まだ学生なんだから。」

二人の女性は笑いながら、遠慮なく品評してきた。
視線だけでも耐えがたいのに、言葉が刺さってくる。俺は歯を食いしばり、ただ俯いた。

「これ、剥けるの?」

「……一応、剥けます。」

もう抵抗する気は失せていた。
一刻も早く、この異常な空間から逃げ出したい。
それだけを考えていた。

「かなり小さいけど、何センチくらい?」

言葉の一つひとつが心をえぐってくる。
計ったことなんてあるはずがない。

「測ったこと……ないです。」

「自分の身体で知らないことがあるのは良くないね。これで計ってみましょう。」

もう一人の店員が、どこからか事務用の定規を取り出してきた。
そして、一人が指先でつまみ上げたそこへ、無慈悲に定規の目盛りを押し当てる。

「……うーん。おまけして、4センチかな。だいぶ小さいね。」

……小さいことは理解していた。けれど、そんなふうに言い切らなくてもいいだろ。
胸の奥が、じわりと痛む。

「剥いて中も見てあげましょう。もしかしたら、皮の中に何か入れているかもしれないからね。」

冗談めかした口調でそう言うと、彼女は先端の包皮をグイッと根元の方へ押し下げた。
ツルリと剥け、露わになったピンク色の亀頭が、蛍光灯の下で情けなく晒される。

「あらあら、綺麗な色しちゃって。これは確実に童貞ね。」

「そりゃそうでしょ。こんな短小包茎じゃ、恥ずかしくて女の子に見せられないもんね。」

二人の笑い声が響く。
容赦のない言葉の礫が、俺のプライドをズタズタに切り裂いていく。

冤罪なのに、なぜ自分はここまで辱められなければならないのか。
視界がじわりと熱くなり、涙がこみ上げてくる。
だが、ここで泣いてしまったら、本当に心が折れてしまう。それは完全な敗北を意味していた。
俺はただ、唇を噛み締め、この地獄のような時間が過ぎ去るのを耐えるしかなかった。


「じゃあ最後に、たまたまの中に隠していないか確認しましょう。」

……いったい何を言っているんだ?
思考が追いつかない。
パニックに陥る頭をよそに、一人の店員が事務的にベビーローションを取り出した。

「怪我させるわけにはいかないからね。これで傷つけないようにやるよ。」

手のひらに広げられる透明な液体。嫌な予感は、最悪の形で現実となった。

「こんな美人のお姉さんに奉仕してもらえるなんて、幸せ者ね。」

冗談じゃない。
確かに顔立ちは整っているかもしれないが、こんな状況で、こんな屈辱的な場所で、喜びを感じるはずがない。
俺は心の中で、絶対に反応してやるものかと固く誓った。

「触っていくから痛かったら言いなさい。」

ローションを纏った温かな掌が、剥き出しで敏感な亀頭を包み込む。
その温もりに心臓が跳ねた。
指先が裏筋を、そして先端を容赦なく、かつ巧妙に刺激していく。
人生で初めて他人に、それも女性にそこを弄られ、もたらされる快感に抗えるはずもなかった。

「あらあら、大きくなっちゃって。若いっていいわ。」

彼女はしみじみと、感心したように呟く。

「あ、そのままそのまま。大きなったサイズも測っちゃうからね。」

執拗に動いていた手がピタリと止まり、再びあの冷たい定規が当てられた。

「うーん、7……いや8cmかな。さっきと比べると大分大きくなったね。」

「でも私の手の中に隠れちゃうからね。勃起しても短小よ。」

また笑い声が響く。
どれだけ尊厳を踏みにじれば済むのか。

それでも、彼女の手が再び動き出すと、意識は強制的に先端の器官へと集中させられてしまう。

「う……ぐ……っ。」

快楽に屈しそうになる俺の漏らした声を聞き、二人の口角が吊り上がる。

「やっぱり童貞の包茎は早漏なのかな?」

「もしかしてもう出ちゃう? いくらなんでも早すぎるわよ?」

挑発的な言葉を投げかけながら、もう一人が背後から睾丸をねっとりと愛撫し始めた。
未体験の激しい刺激。こんな女たちの手で果てたくない。抗いたい。
しかし、抗いようのない熱い塊が、容赦なくせり上がってくる。

「も、もう出ちゃいます……。」

情けない告白を聞いた瞬間、彼女の手のスピードが一段と跳ね上がった。

「あ……あぁ……ああ!」

頭の中が真っ白に染まった。ビュビュビュッ、と先端から白濁した液体が勢いよく放出される。
手の動きに合わせ、何度も、何度も、俺の意志を無視して吐き出されていく。

それでも、彼女の手は止まらなかった。

「も、もうイッてます……!手を離してください……!」

俺の情けない懇願は届かない。
それどころか、逃げられないように背後の女性が俺の腰をがっしりと固定した。
一度果てた後だというのに、粘膜を擦り上げるような扱きは止まらない。

「ほ、本当にダメです!ち、ちんちんが壊れる!」

そんな叫びこそ彼女達の餌なのだろうか。
口角は上がり、目はつり上がる。まるで悪魔のように見えた。

「もう一度イキなさい!」

さらに手の速度が上がり、また射精感がせり上がってきた。
もうイキたくないのに、無理矢理絞り出される。

それに耐える術など、どこにもなかった。

「い、イク……っ!」

その絶叫と共に、再び精液がぴゅっと吐き出された。
ヌチャヌチャという卑猥な音だけが充満する空間。

……そして、ようやく手が離された。
背後で腰を支えていた力が失われた瞬間、俺は糸が切れた人形のように、その場に崩れ落ちた。

「あらあら、そんなに気持ちよかった?」

目の前には、手に白いものをべったりと付着させたまま、勝ち誇った笑みで見下ろしてくる悪魔が立っていた。


ボーゼンとする俺。
そんな俺を見下ろして、二人の店員は歪んだ優越感に浸りながらニヤニヤと笑い続けている。

そんな中、バックヤードのドアが急に開かれた。

「おはようございまーす。」

場違いなほど明るい声が響き、二人の店員がハッとして振り返る。
床に伏したまま入り口を見上げた俺の目に飛び込んできたのは、見慣れた学校の制服姿だった。

そこには、俺の通う高校の制服を着た女の子が立っていた。
というか……クラスメートの藤原さんだった。

部屋の中の異様な空気に少しひるんだ様子を見せたが、全裸で力なく床に倒れている俺を見つけると、顔色を変えた。

「大丈夫ですか!」

慌てて駆け寄ってくる。
正直、一番見られたくない格好だったが……。

そして、俺を認識したようだ。

「あれ? 赤塚くん……? どうしたの、これ……?」

完全にはてなマークが出ている。

すると、店員の一人が勝ち誇ったように声を張り上げた。

「その子はね、万引きをしたのよ。だから今、たっぷりお仕置きをしていたところなの。」

相手がバイトの女子高生だと分かったからか、妙に強気だ。
その言葉を聞いて、藤原さんが俺に問いかけてきた。

「赤塚くん。本当に万引きしたの?」

「いや、そんな覚えはないんだ。でも、知らない間にカバンにお菓子が入っていて……。」

俺が必死に絞り出すと、もう一人の店員が冷笑を浴びせる。

「まだそんな言い訳しているのね。いい加減、やったって白状したらいいのに。」

その声を聞いた瞬間、藤原さんの眉がピクリと跳ね上がった。
彼女はゆっくりと立ち上がり、二人の店員と真っ向から対峙した。

「赤塚くんは万引きなんてするような人ではありません。何かの間違いじゃないですか?」

凛とした声だった。まさか彼女が自分を庇ってくれるなんて。
情けなさと感謝で、視界が熱くなる。

「でも、カバンにお菓子が入っていたんだから、動かぬ証拠じゃない?」

確かにそれはそうだ。
自分が知らなくても、カバンに入っていたまま店を出てしまえば、万引きになってしまう。

「では、カバンに入れた瞬間を『直接』見たのですか?」

藤原さんの指摘に、二人は急にしどろもどろになった。

「監視カメラで見たのよ!その子がカバンにお菓子を入れる瞬間を!」

……え?それはおかしい。
だって俺は、本当に入れていないんだから……。

「じゃあ監視カメラの映像を見ましょう。それで本当かどうか確認できます。」

藤原さんの言葉に、二人の店員は目に見えてたじろいだ。

「ざ、残念! 監視カメラのログは店長権限がないと見られないのよ。あんたたちには無理ね!」

……そんなもの、店長が来るまでの時間の問題のような気がするが。

「わかりました。私が店長に、見ていいか確認をします。」

そう言って藤原さんはスマホを取り出し、電話をかけた。

「女子高生のバイトに許可なんて出すわけないでしょ。」

店員たちは小声でそんなことを言い合っている。
しかし、どこか顔色が悪い。

「……はい、はい。ありがとうございます。失礼します。」

電話が終わったようだ。
藤原さんはにっこりしながら、言い放った。

「店長から、見て良いと許可をいただきました。」

その言葉に、バックヤードの温度が凍りついたように下がった。


藤原さんは無造作に置かれた服をかき集め、俺に渡してくれた。

「赤塚くんは服、着てね。」

……そういえば、俺はまだ全裸だった。

藤原さんに、出したばかりの小さいちんちんを見られてしまった。

「あ、ありがとう!」

慌てて服を着て、監視カメラのある部屋へ行くことになった。

モニターには店内の各所を映し出す複数の映像が並んでいる。
藤原さんは迷わずお菓子コーナーのカメラを選択した。

「お菓子コーナーはね、子どものいたずらとかがあるから、しっかり映るようにしてあるんだよ。」

そう言いながら、藤原さんが時間を巻き戻す。

大体、俺が来た時間に合わせると、俺が歩いてきた。
そして、お菓子を物色している。

「お菓子を買いに来たの?」

「あ、ああ。お目当ての物はなかったけどね。」

そんな気まずい会話を交わしながら画面を見つめる。
映像の中の俺は、一度カバンを足元に置き、さらに棚の奥を覗き込んでいた。
すると、その横に一人の小さな子供がすり寄ってきた。

「あれ? この子……。」

藤原さんが何かに気づいたように呟く。
その直後、映像の中の子供は、俺が目を離した隙に手に持っていたお菓子をカバンの中にポイと放り込んだ。

「いま、この子、お菓子カバンに入れたね!」

「本当だ!」

その瞬間、重く垂れこめていた霧が晴れ渡るように、俺の心に光が差した。
俺は思わず隣にいた藤原さんの手を握りしめ、勝利を確信して喜び合った。

対照的に、二人の店員は顔をひきつらせ、今すぐこの場から消え去りたいという風に視線を泳がせている。

「こ、子供のいたずらなら仕方ないわよね……。災難だったわね。」

そう言って、何食わぬ顔で部屋から逃げ出そうとした。

「ちょっと待ちなさい。」

藤原さんが入口に立ちふさがった。

「さっきの子、山田さんのお子さんですよね?」

山田さん?

さっき俺の腕を掴んだ店員の名札を見ると、確かに「山田」と書かれている。
どういうことだ?

「わ、私が子どもに指示してやらせたとでも言うの!?」

逆上する山田店員の言葉を聞いて、すべての点と線が繋がった。
彼女は自分の子供に万引きの偽装の手伝いをさせ、それを利用して俺をバックヤードへ連れ込み、あのような陵辱を楽しんでいたのだ。

「もう自白したようなものじゃないか……。」

あまりの悪辣さに、怒りを通り越して呆れが込み上げてくる。

「う、うるさい! どきなさい!」

山田が藤原さんを突き飛ばそうと手を伸ばした。
しかし、身の潔白が証明された今の俺に、もう怯える理由などない。
俺は咄嗟に前に出ると、山田の腕をがっしりと掴んで押さえ込んだ。

「なんでこんなことをしたんですか?」

素直な疑問だった。

「うるさい! あんた達みたいなガキに言うことなんて何もないわよ!」

この期に及んで……。

「店長、もう少ししたら来ますからね。言いたいことがありましたら、店長にどうぞ。」

藤原さんの言葉に、山田は観念したようだった。


それからは怒濤だった。

店長が到着するなり状況を把握し、顔面蒼白になって俺に平謝りを繰り返した。
一方で、山田を含む二人の店員は別室で厳しい事情聴取を受けることになった。

調べが進むにつれ、彼女たちの悪質な余罪が次々と明るみに出た。
手口はいつも同じだった。
自分の子供を「工作員」として使い、ターゲットのカバンに商品を入れさせて万引きの既成事実を作る。
そうして弱みを握ったところでバックヤードへ連れ込み、「暇つぶし」と称して陵辱を繰り返していたのだ。

あの子供は、「万引きを仕立て上げたら遊びに行っていい」と母親に言い含められていたらしい。
客観的に見ればあまりに杜撰な犯行だったが、彼女たちは確信していたのだ。
俺くらいの年代の男子なら、脅せば警察を恐れて口を閉ざすし、万が一他人に打ち明けたとしても、女性店員からの性的な被害など本気にしてもらえないだろう、と。

実際、もし藤原さんが現れてくれなければ、俺は今ごろ警察や学校への通報を盾に取られ、屈辱に耐えながら絶望の淵に沈んでいただろう。

本当に恐ろしい事件だった。


エピローグ

そんな俺は、なぜか今、あのコンビニのレジに立っている。
あんな凄惨なトラウマを植え付けられた場所に、なぜ自ら戻ってきたのか。

その理由は、すぐ隣にあった。

「赤塚くん、そろそろレジ慣れた?」

藤原さんのまぶしい笑顔が、そこにある。

あの事件のあと、俺は正式に藤原さんにお礼をした。
そして、あの日どうしても欲しかったカード付きウエハースの話もした。

すると驚いたことに、彼女もその作品の大ファンであることが判明し、二人の距離は一気に縮まった。
そこから話は一気に弾み、気づけば連絡を取り合うのが当たり前になっていた。
何度かデートを重ねるうちに自然と想いは通じ合い、俺たちは晴れて恋人同士になったのだ。

そして、「例の件で人手が足りなくなっちゃったから、一緒にバイトしない?」という彼女の誘いを受け、俺はここで働くことを決めた。

「ああ、大分慣れたよ。」

店長も気を利かせてくれているのか、二人だけのシフトをよく入れてくれた。
だから今も、店内にいるのは俺たちだけだ。

「……ところで、あっちの方はどう?」

客が途切れた一瞬を見計らい、藤原さんが少し神妙な面持ちで尋ねてきた。

「あー……うん。全然ダメなんだ……。」

俺は力なく首を振った。
あの事件の傷跡は、想像以上に深く俺の心に刻み込まれていたらしい。
あの日以来……勃たなくなっていた。
半勃ちくらいまではいくのだが、いざ射精まで導こうとすると、あのバックヤードの冷たい空気と嘲笑を思い出して萎えてしまうのだ。
事件から三ヶ月が経とうとしていたが、俺は一度も射精することができずにいた。

「そうなんだ……。」

なぜか藤原さんが、申し訳なさそうな顔をする。
そして、彼女は意を決したように声を潜めてこう言った。

「今日さ、親が法事でいないんだよね。……うち、来ない?」

「……え?」

頬を真っ赤に染め、俯きながらも上目遣いで俺を見つめる彼女。
その健気で愛らしい表情を見た瞬間、死んでいたはずの股間が、たしかな熱を帯びてピクリと反応した。

END


ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

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