【創作羞恥小説】コピー機の落とし穴

先輩(CFNM)

深夜のオフィス。壁に掛けられた時計をちらりと見ると、短針は11と12の間を彷徨い、長針は8を指していた。

「23時40分か……。また終電ギリギリだ……。」

大きく息を吐き、誰もいないフロアを見渡す。
同僚たちはとうの昔に席を立ち、今やこの空間に満ちているのは、サーバーの駆動音と僕の微かなぼやきだけだ。
ここ最近、オフィスの鍵を閉めるのは決まって僕の役目になっていた。

「はぁ……。この資料だけコピーしたら、今度こそ帰ろう。」

疲労はピークに達していた。
思考能力が低下し、どこか現実感がふわふわと浮ついている。
手に持った資料をコピー機のガラス面にセットし、スタートボタンを押した。

ピカッ!

鮮烈な光が走り、見慣れた複写が出てくる。
その機械的な、あまりに当たり前な動作を眺めているうちに、ふと、魔が差した。

「……少しだけ、遊んでみるか。」

誰もいない、自分だけの城。溜まったストレスが、奇妙な好奇心へと形を変える。
僕はコピー機のカバーを跳ね上げると、冷たいガラス面に自分の顔を押し付け、目を閉じてスイッチを押した。

ピカッ!

強烈な光がまぶたの裏を突き抜ける。
吐き出された紙には、ガラスに押し潰され、歪な表情を浮かべた自分の顔がフルカラーで印刷されていた。

「ふふっ……なんだこれ。」

こみ上げるおかしさに、思わず独り言が漏れた。
もちろん、こんな「証拠」を放置するわけにはいかない。
僕はその紙を素早くカバンに押し込み、その日は足早に帰路についた。

それ以来、一人で残業をするたびに、僕はコピー機へと向かうようになった。
最初は顔、次は掌。回を重ねるごとに衝動はエスカレートしていく。
気づけば、自宅に持ち帰ったコピーを繋ぎ合わせれば、等身大の「僕」が出来上がるほどになっていた。

もちろん、それだけでは満足できなくなる。

「誰も、見てないんだしな……。」

自分に言い聞かせるように呟き、僕はついに最後の一線を越えた。
ネクタイを解き、シャツを脱ぎ、着々と全裸の自分を複写していく。
今日は胸部。次の日は腹部。
少しずつ裸のパーツをコピーしていく。

そしてついに、僕はパンツすら脱ぎ捨てた。
剥き出しのまま、冷ややかなガラスの上に自身の股間をぴったりと密着させる。
背徳感で心臓がうるさいほどに脈打つ中、スタートボタンを押し込んだ。

ピカッ……!

吐き出された紙には、見事に僕のちんちんが映っていた。

満足して、僕の中でこの遊びは、そこでひとまず終焉を迎えた。
ちなみに、ガラスは丁寧に掃除しておいた。


それからしばらくは、何事もない平穏な日々が過ぎていった。
あの夜の背徳的な儀式は、自分だけの胸に秘めた遠い記憶になりかけていた。

そして迎えた、久しぶりの残業。
だが、今夜の僕の心は不思議と弾んでいた。
なぜなら、憧れの遠藤先輩も一緒に残っているからだ。

遠藤先輩。僕が新人の頃に手取り足取り仕事を教えてくれた教育担当であり、僕が密かに恋心を抱き続けている女性だ。

「小西くん、終わりそう?」

先輩がふいに声をかけてくれる。
その澄んだ声が、静かなオフィスに心地よく響いた。

「はい、あともう少しです。」

時計の針は夜の8時を回ったところ。フロアには僕と彼女の二人きり。
ただ仕事をしているだけなのに、この時間が終わってしまうのが少しだけ名残惜しいとさえ感じていた。

「よし、終わった。」

クライアントへのデータ納品を終え、パソコンをシャットダウンする。
ふぅ、と息を吐いて、うーんと伸びをした——そのとき。
僕の横のデスクの椅子に、先輩がすっと座ってきた。
手にはカバンを持っている。

(……もしかして、一緒に帰れるのかな?)

そんな淡い期待が胸をかすめる。

「小西くん、お疲れ様。」
「先輩もお疲れ様です。すみません、僕の段取りが悪くて残らせてしまって……。」

今回のプロジェクトは先輩と二人の共同作業だ。
僕が手間取ったせいで、結局彼女にも残業を強いてしまった。

「気にしないで。8時に終われたなら御の字でしょ。」

先輩はいつものように優しく微笑む。
その笑顔を見るたびに、早く彼女に追いつけるくらい一人前になりたいと強く思う。

「……ところで、小西くん。ちょっといいかな?」

そう言いながら、先輩はカバンを漁り始める。

なんだろう、と思った瞬間だった。
先輩が取り出したのは——一枚の紙。

その瞬間、汗がぶわっと噴き出した。

「小西くん、これ……何かわかる?」

そこには、僕がこの世で最も他人に見られてはいけないもの――あの夜、僕がコピー機のガラスに押し付けた「僕のちんちん」が、生々しく写し出されていた。

心臓が跳ね上がる。なぜだ。確実に、あの紙は全てカバンに入れて持ち帰ったはずなのに。

「そ、それは……何ですか? 」

声が震える。喉が引き攣り、まともな思考ができない。
しどろもどろになりながら、必死に誤魔化そうと言葉を紡ぐ。

「そうなんだ。知らないんだ?」

先輩のトーンがわずかに変わった。
彼女はカバンから、さらにもう一枚の紙を取り出し、机の上に重ねた。

そこには、ガラスに顔を押し付けて、間抜けな表情を浮かべている僕の顔が鮮明に印刷されていた。

「じゃあ、これにも心当たりはない?」

逃げ場は、もうどこにもなかった。


先輩はほほえみを浮かべながら、僕の顔が映っている紙をひらひらさせた。
完全に袋小路だ。逃げ道がない。

もう、こうなったら——。

「……申し訳ありませんでした! 完全に、その……気の迷いだったんです!」

僕は椅子から飛び退くようにして、深く、深く頭を下げた。視界に入るのは自分の靴先だけだ。
心臓の音がうるさすぎて、自分の声が上擦っているのがわかる。
しかし、疑問は消えない。なぜ、処分したはずのものが先輩の手にあるのか。

「顔、上げて。」

優しい声がする。
反射的に、バッと顔を上げた。

先輩は右手に僕の顔、左手に僕の股間が写った紙を持って、どちらもひらひらさせていた。
その表情は、妙に楽しそうだった。

「どうして私がこれを持っているのか、不思議でしょう?」

いたずらっぽく、先輩が聞いてくる。

「この会社のコピー機はね、メモリーが残る設定になっているのよ。」

そう言って、彼女はカバンからもう一枚の紙を取り出した。
そこには、切手ほどの小さなサムネイル画像が無数に並んでいる。

「わかる? こうやって、過去にスキャンされたデータが履歴として残るの。誰が何をコピーしたか、管理者は確認できるのよ。」

愕然とした。一覧の中には、見覚えのあるビジネス文書の縮小版が並んでいる。
だが、その中にポツポツと、場違いな肌色のパーツが混じっていた。

「変だなーって思って、試しに印刷してみたのよ。そうしたら、びっくりよね。」

さっきよりニヤニヤした顔で、先輩が僕を見つめる。

まさか、データが残るだなんて……。
それと同時に、不安が一気に膨らんだ。

「あの……これ、他の皆さんも知っているんですか……?」

もしかして、僕が知らないところでみんなに笑われていたのかもしれない。
完全に僕が悪い。だから仕方ない。
……でも、考えたくはなかった。

「ふふ、安心して。今のところ知っているのは私だけ。このログを閲覧できる権限を持っている人なんて、社内でも限られているから。私が定期的にチェックして、必要ないものは消去しているのよ。」

その言葉に、一瞬だけ安堵が広がった。
すぐに社会的に抹殺される事態だけは避けられたようだ。

「……余計な仕事、押しつけて。」

小さく、恨みがましい呟きが聞こえたけれど、僕は聞こえなかったふりをした。

「あ、あの……このことは内密にしてほしいんですが……。」

先輩はブツブツ言うのをやめて、僕の顔を見直す。

「そうねー。どうしようかな。」

彼女は手元の二枚の紙――僕の顔と、僕の「秘部」――を交互に見比べながら、わざとらしく考え込むポーズをとった。
よりによって、片方の紙には僕の最もプライベートな部分が鮮明に写っているのだ。

「さすがに……その、自分でも……ちょっと恥ずかしいです……。」

僕がそう漏らした瞬間、先輩の目が、きらりと光ったように見えた。


「そうよね、恥ずかしいよね。なんでこんなこと、しちゃったんだろうね。」

そう言いながら先輩は、デスクにちんちんの写った紙を置いた。
そして僕の顔と、その紙を交互に見始める。

不意に、彼女の口元から小さく笑いが漏れる。

「小西くん、意外とかわいいおちんちんしていたのね。まだ、皮を被っちゃっているじゃない。」

紙に写っているそれを、先輩は指で、すりすりとなぞる。
僕の顔が耳まで真っ赤になっていくのが、自分でもわかった。

「あら、ちょうど良いものがあるわね。」

先輩は机の筆立てから、プラスチックの定規を抜き取った。
カチリ、と硬い音がして、定規が紙の上に置かれる。

「うーん。小西くんのご自慢のおちんちんは……5cmくらいかな。」

先輩は定規の5cmの目盛りを指先で押さえ、それを僕の目の前まで突き出した。

「ねえねえ。このくらいのおちんちんって、大きいかな? 小さいかな?」

すごく楽しそうな顔で聞いてくる。
……もしかして先輩、Sっ気があるのかもしれない。

「ち、小さいです……。」

喉の奥で震える声を、ようやくの思いで絞り出した。

「そうだよね、小さいよね。どうしてこんなにかわいいものを、わざわざフルカラーでコピーしようと思ったのかな?」

その問いに、心臓の鼓動が早くなる。
理由なんてない。ただ、誰もいない真夜中の解放感に当てられただけだ。

「……もしかしたら、残業のストレスが溜まっていたのかもしれません。」

先輩は定規で、僕の頬をぺちぺちと叩いた。

「そうなんだ。ストレスが溜まってたんだ。」

一拍置いて、先輩がにやりと笑う。

「今日も残業だよね。……じゃあさ。今から、ストレス発散しちゃおうか。」

正直、先輩が何を言っているのか、僕には理解できなかった。


「……一体、どういうことでしょうか?」

混乱する僕に、先輩は至近距離まで顔を寄せ、先輩がそっと答えた。

「小西くんの……おちんちん、見せて?」

笑顔の先輩の頬は、ほんのり赤い。
一瞬、照れているのかと思った。でも違う。目が、熱を帯びている。

先輩は——どうやら気分が昂揚しているようだ。

「いや、さすがにそれは……。」

躊躇する僕に対し、証拠の紙を掴み、目の前でひらひらと揺らして見せた。

「あ、そうなんだ? じゃあ、これ……女子社員のグループチャットに共有しちゃおうかな。」

そう言いながら、彼女は迷いなくスマートフォンを手に取った。
そんなことをされたら本当に終わってしまう。とんでもない脅し方をしてきた。
先輩の目は、少し瞳孔が開いているように見えた。

「わ、わかりました! それだけは、本当にそれだけは勘弁してください!」

静まり返ったオフィスに、僕の悲痛な叫びが響く。
先輩は満足そうに、スマホをデスクへ置いた。

「うん、いい子ね。……じゃあ、まずは立って。ズボンを脱ごうか。」

もはや、抗う術など残されていなかった。
僕は椅子から立ち上がり、震える手でベルトに指をかけた。
だが、極度の緊張で指先に力が入らず、上手く外せない。

「ベルト、外してあげようか。」

先輩が僕の手を跳ね除け、ベルトをカチャカチャと器用に弄る。
そして、シュッという鋭い音と共にベルトを引き抜いた。
そのままズボンのボタンを外し、ジッパーをゆっくりと下ろしていく。

そして、ストンと足元にズボンが落ちた。

「お手伝いはここまでね。……あとは、自分でどうぞ。」

先輩はキャスター付きの椅子を少しだけ後ろに滑らせ、特等席を確保するように僕を見上げた。
憧れの女性に、僕のすべてを見られてしまう。
しかも、こんな情けない形でお披露目することになるなんて。

「……先輩の言う通り、脱ぎますから。画像だけは、本当に、ばらまかないでください……。」

観念してパンツのゴムに手をかけたその時、先輩の表情がスッと冷めた。
不機嫌そうな影がその美貌をかすめる。

「……心外ね。私は小西くんのストレスを解消してあげようって言っているのに。それじゃあ、まるで私が無理やり脱がせているみたいじゃない。」

…ええ。
おちんちん見せてと言ったのは先輩じゃないか…。

喉元まで出かかった言葉を飲み込む。

「私にちゃんとお願いしなさい。おちんちん見てください、ってね。」

いつも優しかった先輩の顔は、今まで見たことのないような光悦とした表情を浮かべていた。
だが、その顔がとても美しいと思ってしまった。
先輩に全てを見て貰いたい、そんな気持ちになっていた。

「……先輩。僕の……おちんちんを見てください。」

僕は自分を曝け出すように、ゆっくりと下着を下ろした。

「……よくできました。」

先輩は、満足そうに、そう呟いた。


椅子に深く腰掛けたまま、先輩がゆっくりと白く細い手を伸ばしてきた。
しかし、女性にそこを直接触れられた経験のない僕は、本能的な羞恥と動揺から、つい腰を後ろに引いてしまった。

すると先輩は不満げに眉をひそめ、上目遣いで僕を見上げる。

「……私に触られるのは……いや?」

心臓が喉から飛び出しそうなくらいに鳴り響く。
そんな潤んだ瞳で見つめられたら、拒めるはずがない。
……いや、それは卑怯な言い訳だ。

僕は、ずっとこの瞬間を、先輩に触れられることを望んでいたのだ。

「……先輩に、触ってもらいたいです。」

そう言うと、先輩はにっこり笑った。

「そうよね。……じゃあ、たっぷり触ってあげる。手は後ろに組んで。足は肩幅に開いて、もっと腰をこっちに突き出しなさい。」

命じられるまま、僕は屈辱的なポーズを取る。
もはや、隠すものも、隠すすべも、僕には残されていなかった。

ついに先輩の手が伸び、僕の小さなそれを、熱を持った掌で包み込んだ。

「ふふ、本当に小さいわね……。まるで小学生のおちんちんを見ているみたいだわ。」

普通の男なら深く傷つくであろうその言葉。
だが、今の僕の心は、罵倒されるたびに歓喜で跳ねていた。

憧れの先輩に触れられ、コンプレックスを容赦なく抉られ、それでもなお僕の身体は熱くたぎっていく。

「あらあら……こんなに大きくしちゃって。生意気ね、小西くん。」

先輩が上目遣いに、にらみつけてくる。
そして、大きくなったそれを、ぎゅっと握った。

「先輩の目の前で勃起するなんて、失礼だと思わないの?」

理不尽なことを言ってくる。
触られたら、大きくなるのは仕方ないじゃないか……。

すると突然、彼女はそれから手を離し、キャスター付きの椅子を後ろに滑らせて距離を取った。
そして、デスクに置いてあったスマートフォンを僕の方へと向けた。

「自分で小さくしなさい。」


「あ、あの……自分で小さくって、一体……」

混乱し、聞き返す僕を、先輩は鼻で笑った。

「いつも家で一人でシコシコやってるんでしょ? 小西くん、彼女いなさそうだもんね。」

そう言いながら、彼女は空中で右手を上下に動かしてみせる。
僕が勝手に作り上げていた「清楚な先輩」という仮面が、音を立てて砕け散る。
けれど、その破片の下から覗いた露悪的で下品な素顔は、どんな毒よりも甘く、僕の理性を真っ向から焼き尽くしていった。

……どうしようもなく、興奮してしまう。

僕は自分の右手を伸ばし、自己主張を繰り返すそこを握った。
そして、見せつけるように、先輩の目の前で腰を突き出し、手を動かし始める。

「はじまった、はじまった……。男の子がシコシコしてるところ、一度じっくり見てみたかったんだよね。」

先輩がスマートフォンのレンズを僕に向ける。
当然録画はされているのだろう。
今、僕は大好きな先輩のスマホを、自分の卑猥な姿で汚しているんだ――。
その背徳的な事実に、手の速度はさらに加速していった。

「うわぁ、そんなに速く動かすの? 動くたびに、先っぽの皮から頭がひょこひょこ見えてるよ。」

静まり返ったオフィスに、先輩の実況解説が響く。
先端からは透明な液体が溢れ出し、グチュグチュという生々しい水音がフロアの空気を震わせた。

毎日働いているこの職場で、ずっと片思いしていた先輩の前で。
倒錯しきった自慰行為に、絶頂への階段を駆け上がる時間は、もう長くは必要なかった。

「せ、先輩……っ、もう、出ちゃいます……!」

僕がかすれた声で訴えると、先輩はまたクスリと笑った。

「あら、もう出ちゃうの? いいわ、その瞬間をしっかり私に見せなさい。――短小包茎の、早漏くん。」

その容赦ない蔑みの言葉が、最後の一押しだった。
もはや手は止まらない。視界は白く染まり、思考は弾け飛ぶ。

「い、イク……っ!!」

ビュッ、ビュビュ……ッ!

先輩への秘めた想いをすべてぶちまけるように、僕は激しく脈打つそこから白濁した液体を放出した。
二度、三度。波打つような射精の余韻に身を任せ、ようやく荒い呼吸を整えた。

その時、僕は見てしまった。

放たれたばかりの生々しい液体が、先輩のスマートフォンを汚してしまったところを。

「あ…………っ。」

心臓が凍りつく。
一気に血の気が引き、僕はその場に立ち尽くした。


恐る恐る先輩の顔を見る。だが、そこにあるのは怒りではなかった。
むしろ、深い満足感に満ちた表情だった。

「……すごいね。こんなにたくさん出ちゃうんだね。」

先輩は、白濁した液体が飛び散ったスマートフォンと自分の手元を、感心したように眺めている。それどころか、顔を近づけてクンクンとその匂いを嗅ぎ始めた。

「す、すみません! スマホを汚してしまって……! すぐに、すぐに拭きますから!」

僕が慌てて言うと、先輩は笑顔で首を振った。

「あー、いいよいいよ。私がやらせたことだもんね。」

そう言って、彼女は手慣れた様子でウェットティッシュを取り出し、スマホと自分の手を丁寧に拭き始めた。
先ほどまでの下品な雰囲気は消え失せ、そこには僕が憧れていた「優しい先輩」がいた。
一体、どちらが本当の彼女なのか。混乱する僕の思考を置き去りにして、彼女の手が再び伸びる。

「……おちんちんも、拭いてあげるね。」

先輩はためらうことなく、射精を終えて小さく縮こまった僕のそれを指先で摘まみ上げた。

「うんうん、やっぱり小さい方がかわいいわ。……ねえ、これ、剥いちゃってもいい?」

返事も待たず、彼女の指先がツルリと包皮を押し上げる。
露わになった、瑞々しいピンク色の亀頭を、彼女は優しく、けれど丹念に拭き取っていく。

「綺麗なピンク色ね。……ねえ、小西くんって、もしかして童貞?」

オブラートをかなぐり捨てたストレートな問い。けれど、もう隠すことなど何もない。
僕の恥部も、情けない性癖も、すべて彼女の掌の上にあるのだ。

「……はい。童貞です。彼女がいたことも、一度もありません。」

拭き終わった亀頭を、彼女はまた丁寧に皮の中へと仕舞ってくれた。

「そうなんだ。どうして作らなかったの?」

無邪気な質問が、僕のコンプレックスに深く突き刺さる。

「それは……その……小さいから、自分に自信が持てなくて……。」

僕が俯きながら答える間も、先輩は包皮の先端を指先でつまみ、右に左にと弄んで遊んでいる。

「別に女の子は、おちんちんの大きさで彼氏を決めるわけじゃないと思うけどね。」

今度は、皮を剥いたり戻したり、リズミカルな動きを繰り返す。
出したばかりだというのに、そんなことをされて反応しないはずがない。
僕の意思に反して、そこは再び熱を持ち、ゆっくりと膨らみ始めた。

「おお、また大きくなっちゃった。……ふふ、元気だね。」

先輩は困ったように言いながら、でも楽しそうに笑う。

「仕方ない。……今度は、お姉さんが小さくしてあげようか。」

そして先輩は、逃げ場を奪うみたいに、ぎゅっと握った——。

正直、先輩が何を言っているのか、まだ理解できていなかった。


先輩は、僕のそこをギュッと握り締めたまま立ち上がり、有無を言わさぬ力で僕を引っ張った。
弱点を握られたままでは、彼女の後ろをついていくしかなかった。

行き着いた先は、あの因縁のコピー機の前だ。

「……先輩。ここで、一体何をするんですか?」

嫌な予感しかしないのに、何かとてつもないことを期待するように、僕の下半身はますます元気を取り戻していた。

先輩は手を離し、隅にあった小さな踏み台を持ってきた。
そして、コピー機のカバーを迷いなく跳ね上げる。

「じゃ、ここにまたがって。あ、ガラスに体重をかけすぎると割れちゃうかもしれないから、気をつけてね。」

断るという選択肢など、最初から存在しないのだろう。
僕は観念し、下半身裸のまま踏み台を使い、ひんやりとしたコピー機のガラス面にまたがった。

すると、先輩は迷わずスタートボタンを押した。

ピカッ……!

鮮烈なフラッシュが、僕の股間を真下から貫く。
吐き出された紙を手に取った瞬間、先輩は大爆笑した。

「ちょっと見て! 小西くん、お尻の穴までばっちり写っちゃってるよ!」

相当ツボに入ったようで、彼女は涙を浮かべて笑い転げている。
見せられた紙には、僕のお尻の穴から玉袋までが、あまりに生々しく、無残に写し出されていた。 女性がやればエロいのかもしれないが、男がやれば、ただただ滑稽で情けないだけだった。

ひとしきり笑い転げ、先輩はようやく落ち着きを取り戻したようだ。

「ごめんごめん。こんなの、見たことなくて。……ぷぷ。」

……まあ、憧れの先輩がこれだけ笑ってくれたなら、良しとするべきなのだろうか。
僕は、乾いた笑いを浮かべることしかできなかった。

「ふぅ。……では、お待たせしました。お姉さんが、小さくしてあげます。」

彼女は、ガラスの上でなおも元気いっぱいに反り立つそれを、再びギュッと握り締め、ゆっくりと上下に動かし始めた。

冷たいガラスの感触と、先輩の手の温もり。背徳的な快感はある。
だが、ガラスに体重をかけるわけにはいかないという緊張感のせいで、どうしても集中しきれない。

僕の戸惑いを察したのか、先輩が顔を覗き込んできた。

「……あれ? 気持ちよくない? ごめんね、下手くそで。」

下手というわけじゃない。
ただ、状況が状況すぎて、どうにも集中しきれない。

「気持ちいいと言えば、いいのですが……。」

「うーん。もしかして、集中できていないのかな?」

そう言うと、先輩は突然、自分のシャツのボタンを上から順にプチプチと外し始めた。
露わになったのは、鮮やかな水色のブラジャー。

「ありゃ、今日は青かったっけ。……小西くん、青い下着は好き?」

にっこりと、天使のような笑みを浮かべて聞いてくる。
だが、初めて目にする女性の下着。それも、ずっと片思いしていた先輩の……。
僕は声も出せず、ただその光景に目を釘付けにされていた。

「……聞こえてないか。」

先輩はクスリと笑うと、手を上下させるスピードを一気に上げた。
それに合わせて、水色の布に包まれたおっぱいが、ぷるんと揺れる。
視覚と股間。僕のすべての意識が、その二点だけに集約されていく。
先輩の柔らかな掌が、僕を容赦なく絶頂へと導いていく。

「あ……っ、先輩、また……出ちゃいます……!」

「いいよ。……ぜーんぶ、私に出しちゃいなさい。」

グチュグチュという淫靡な水音と共に、さらに扱くスピードが上がる。
その瞬間、先輩は水色のブラジャーを少しまくり上げた。

そこには、驚くほど綺麗な、ピンク色の乳首が見えていた。

「……う、あ……っ!」

ついに、限界が訪れた。 先輩の手の中で、僕はすべてを吐き出した。

だがその直前、先輩はコピー機のスイッチを押していた。

ピカッ……!

まばゆい光が走るのとほぼ同時に、僕はビュッと、熱い液体を放出した。
射精しながらも扱かれ、びゅっびゅと二度ほど先端から吐き出した。
扱くスピードがゆっくりになり、そのまま、根元から絞り出されるように、彼女の指先は僕の中にあるものをすべて出し切らせた。

「……気持ちよかった?」

すべてを終え、聖母のような笑顔を浮かべる先輩。
その姿が、今の僕にはあまりにまぶしすぎた。


先輩は、ドロドロになった手をウェットティッシュで拭いていた。
でも、胸元が少し崩れたままで、おっぱいが出しっぱなしになっていることには気づいていないようだった。

事後の呆然とした頭で、僕はその白く柔らかな光景をジーッと見つめていた。
視線に気づいた先輩が、ハッとして慌ててブラジャーの中に胸を押し戻す。

「おっぱいは、ちょっとサービスしすぎたね。こういうのは、好きな女の子のじゃないと見ちゃだめよ。」

少し顔を赤らめながらシャツのボタンを留める彼女は、すっかりいつもの「優しい先輩」に戻っていた。
……というか、僕が先輩に抱いている好意に、彼女は気づいていないのだろうか?
てっきり、すべてを見透かした上での仕打ちだと思っていたのに。

「ほらほら、小西くんも早くコピー機から降りて。ちゃんと拭きなさい。」

手渡されたウェットティッシュで、精液にまみれた自分のそこを拭う。
すると、背後でまた先輩が紙をひらひらさせて笑い声を上げた。

「見て見て、小西くん! びゅっと出た瞬間のコピー、大成功だよ!」

差し出された紙には、相変わらず丸見えの肛門と玉袋。
そして先輩の指に握られ、先端から白濁した液体を勢いよく放出している僕の陰茎が、あまりに鮮明に写し出されていた。

「……このコピー機、性能良すぎないですか。」

思わず漏れた一言に、先輩はまた「あはは!」とお腹を抱えて笑った。

「本当、小西くんと一緒にいると楽しいな。」

その屈託のない笑顔。弾むような声。
感極まった僕は、あろうことか、つい口を滑らせてしまった。

「あ、あの! ずっと……先輩のことが、好きでした!」

その瞬間、オフィスの時間はピタリと止まった。
……やってしまった。 先輩は目を丸くして、固まっている。
数秒の沈黙が、永遠のように長く感じられた。

やがて、せきを切ったように先輩の口から笑いが漏れ出した。

「私ね、何回か告白されたことはあるの。でもね……おちんちん丸出しで告白されたのは初めてよ。」

その言葉で、自分がまだ下着すら履いていない事実にようやく思い至った。
僕は顔面を火に焙られたように熱くしながら、慌ててパンツとズボンを引き上げた。
羞恥心で、本気で心から「穴があったら入りたい」という言葉の意味を理解した。

これは……この恋は……終わった……。

ガックリと肩を落とす僕を余所に、先輩が壁の時計を仰ぎ見た。

「いけない。もう9時半じゃない。」

気づけば、一時間半もここで彼女と戯れていたことになる。
夢のような、けれど破滅的な時間は幕を閉じた。

絶望に沈む僕の背中を、先輩がポンと威勢よく叩いた。

「よし! お腹空いちゃったから、ご飯食べに行こうか。お肉食べよ、お肉。」


エピローグ

それ以来、仕事終わりに先輩と食事に行く機会が増えた。
そして、二人っきりで残業するときは、今回のような甘美な戯れに身を投じることもあった。

だが、先輩への告白の答えは、まだもらえていなかった。

先輩への想いを断ち切ることもできず、かといって恋人としての確証もない。
僕はどこかモヤモヤとした焦燥感を抱えながら、ずるずるとそんな曖昧な日々を過ごしていた。

先輩は一体、僕のことをどう思っているのか。ただの都合のいい「おもちゃ」なのだろうか。
冬の終わりと共に、僕の心の限界も近づいていた。

そして、二月の最終日。
静かな夜のオフィス。今日も、僕と彼女は二人きりの残業だった。

今日で、すべてのけりをつけよう。

「小西くん、今日も残業終わったら一緒にご飯行く?」

先輩がいつものように、屈託のない笑顔で問いかけてきた。
僕は答えを返す代わりに、先輩の正面に立ち、その両肩を力強く掴んだ。

「小西くん……?」

そして、先輩の目をまっすぐに見つめた。

「先輩は、僕のことをどう思っているんですか。もし……もし、ただからかっているだけなら、もう限界です。僕の気持ちに応えてもらえないなら、はっきりそう言ってください。」

先輩は驚いたように目を見開いた。
だが、僕の指先の震えと視線の真剣さに、彼女もすぐに僕の本気を悟ったようだった。

先輩は何も言わず、僕のネクタイをぐいと自分の方へ引き寄せた。
勢いに任せて顔が近づき、柔らかな唇が僕のそれに重なる。

わずか数秒。けれど、世界のすべてが止まったかのような、永い永い沈黙の交差。

唇が離れると、先輩は頬をほんのり桜色に染め、悪戯っぽく笑った。

「そういえば、返事していなかったね。」

明日から三月が始まる。
どうやら僕の元にも、ようやく本物の春が訪れたようだ。

END


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