目の前に、立派な建物がそびえている。
ここは、女性が作る“女性向けウォシュレット”で大ヒットを飛ばした会社だ。
企画から製造まで、すべてこの建物の中で完結しているらしい。
確かに、事務棟と工場が一体となって併設されている構造のようだ。
なぜ、俺がここにいるのか――
これまでいかなるメディア取材も断ってきたこの会社から、まさかの逆オファーが届いたのだ。
「うまくいけばスクープだ。」
そんな期待を胸に、俺は静かにその建物の中へと足を踏み入れた。
受付に向かうと、美人の受付嬢が出迎えてくれた。
立ち上がり、笑顔で「おはようございます。」と丁寧に挨拶してくれる。
この会社の建物の中でも、外部の人間が入れるのは受付と、すぐ横にある会議スペースまで。
その先は――男子禁制。
働いているのは、ほぼすべて女性。
さらに徹底されているのは、外部業者ですら女性に限定しているという点だ。
受付嬢はにこやかに案内を続けた。
「担当者が参りますので、そちらにおかけください。それと、こちらの書類を読んでいただき、署名をお願いします。」
クリップボードに挟まれた書類とペンを手渡される。
目を通すと、撮影の一切禁止、スマートフォンのカメラ部分の封印など、厳格な規則がずらりと並んでいた。
「なるほど、徹底した機密主義なんだな。」
どうせ個人情報保護や製品技術の流出防止といった類のことだろう。
一通り目を通してから、さっと署名して受付に返す。
すると彼女は笑顔のまま言った。
「では、スマートフォンをお預かりいたしますね。それと、胸ポケットにあるボールペンもお願いします。」
……バレたか。
さすがに、カメラ付きのボールペンは目立ちすぎたかもしれない。
こればかりは仕方ない。
余計な装備は外し、純粋な取材に徹することにする。
大人しくスマートフォンとボールペンを彼女に手渡した。
「申し訳ありません、吉村様。担当の者が少々お時間をいただくようでして。」
受付嬢が、申し訳なさそうに微笑んだ。
まぁ、忙しい会社だ。多少待たされるのは仕方ない。
「その間に、お手洗いなどいかがでしょうか?」
――ん? お手洗い?
受付でトイレを勧められるなんて、初めての経験だ。
「弊社は従業員がすべて女性でして、中に入られると男性用のお手洗いがないのです。
ですので、もしよろしければ、この機会にご案内させていただければと。」
なるほど。
男性が入ること自体が想定されていない構造なのだろう。
「わかった。案内よろしく。」
せっかくの機会だ。
この会社が誇る“女性目線のウォシュレット”――一度、体感しておくのも悪くない。
「ぜひ、弊社自慢のウォシュレットをお試しください。」
受付嬢は相変わらずにこやかに、こちらをトイレへと案内してくれた。
案内されたのは、まるでホテルのように清潔感のある個室トイレだった。
「こちら、当社の最新版でございます。ぜひお試しください。では、ごゆっくり。」
受付嬢はそう言って丁寧に一礼すると、受付へと戻っていった。
――いい匂いだったな。
ふわりと香るアロマを思い出しながら、個室に入る。
洋式の便器に、小さな手洗い場。
広々とした空間は、思いのほか開放的だった。
「なんか、落ち着かないな…。」
独特の清潔さと静けさに包まれながら、ズボンとパンツを下ろして便座に腰を下ろす。
「ついつい座ってしまった。」
普段は立って済ませるところだが、あまりに整えられた空間に、自然とそうしたくなった。
チョロチョロ…と最初の音が響く。
そのとき、ふと我に返った。
「おっと、いけないいけない。」
ルーチンが狂うと、調子も狂う。
一旦中断し、先端をくるっと反転。
皮を剥き、むき出しになった亀頭から、改めて続きのものを排出した。
「ふう…。」
意外と溜まっていたのか、それともこのトイレの不思議な“魔力”か。
普段よりもすっきりと出し切れた感覚があった。
ふと、横に並ぶボタン群に目をやる。
「さて。」
このまま出てもいいのだが――
せっかくだし、ウォシュレットを試してみようか。
特に汚れている感覚はない。
だが、少し汗ばみもしているし、なんとなく気持ち悪さが残る。
こういうときこそ使うべきなのかもしれない。
普段は外のトイレでウォシュレットなんてまず使わない。
だが、ここなら別だ。
なにせ、女性たちが設計し、細部にまでこだわり抜いた最新型なのだから。
お尻を洗うマークのボタンをそっと押す。
「おおっ……!」
とくに設定をいじったわけでもないのに、ノズルが自動で動き、
ちょうど“そこ”に、ぴたりと当たった。
水温も驚くほどちょうどよく、不快感など一切ない。
むしろ、じんわりと心地よさすら感じてしまう。
「なるほど……女性に人気なわけだ。」
そのまま横の操作パネルに目をやる。
“ビデ”。
……と思ったら、その下に男女のマークがある。
「え? 男用もあるのか?」
これは気になる。もしかして新機能か?
思い切って押してみた。
ポチ。
ウィーン……。
「うひゃあっ!」
思わず、妙な声が漏れた。
水が、剥き出しのそれに直撃した。
「え? ちょ、待っ…!」
言い終わる間もなく、二度、三度と連続して水流が襲いかかる。
そして、ピタリと止まった。
「……すごいな。体を動かしたのに、しっかり亀頭を狙ってやがる。」
試しに少し腰をずらしてみたが、確かに当たり所は寸分の狂いもなかった。
便器の内側を見やると、いくつかの小さな“レンズ”のようなものが組み込まれている。
おそらく、そこから得た情報を元に、噴射の位置や角度を微調整しているのだろう。
バカみたいな機能だ。
だが、確かな技術の結晶でもある。
そんな中、目に入ったのが――
“SP”と書かれた、ひときわ目立つ銀色のボタン。
何を意味するのかは分からない。
だが、さっきの水流体験を経たせいか、完全に好奇心の方が勝っていた。
「……押すしか、ないよな。」
そっと指先を、そのボタンへと乗せた。
ポチッ――
再び、ウィーンという控えめな駆動音が響く。
そしてその直後、
「おひょうっ!」
さっきよりも明らかに強い水圧が、的確に先端を撃ち抜いた。
短い間隔で繰り返される水流。
かと思えば、まるでリズムを刻むような振動混じりの刺激。
逃げる暇も、抗う余裕もなかった。
――ただ洗っているだけ。
そう、自分に言い聞かせながらも、反応は正直だった。
みるみるうちに、大きくなっていく。
その事実を止められない。
そして――我に返った。
どうにか中止ボタンを押し、個室に静けさが戻る。
「危なかった……。これから女社長に会うってのに、出てたらシャレにならないぞ……。」
大きくなったそれに向かって、心の中で懇願する。
「……頼むから、早く小さくなってくれ……。」
無事に“問題”も収まり、何事もなかったかのように受付前の待合室へ戻る。
そこには、先ほどの受付嬢がにこやかに立っていた。
「我が社の製品、いかがでしたか?」
その笑顔――どこか含みがあるように思えたのは、気のせいだろうか。
なにか事情を知っているかのような、そんな目にも見えた。
「……なかなか興味深い製品だったよ。」
そうだけ答え、ソファに腰を下ろす。
そのタイミングで、きびきびとした足取りの女性が現れた。
スーツをスマートに着こなし、目元の鋭さが印象的な――
まさに「できる女」といった風貌の美人だ。
「お待たせしました。社長の冨永です。本日はよろしくお願いします。」
そう言って、手を差し出してきた。
なるほど、まずは握手から入るタイプの人か。
「本日は、取材を受けていただき感謝です。」
さて、どんな情報が引き出せるのか――
期待と緊張が、少しだけ混じる。
「まずは、工場の見学からいかがでしょうか?」
そう言って、彼女はすぐに背を向け、案内を始める。
この工場部分も、今までいかなるメディアにも公開されてこなかった“聖域”のはずだ。
「このように、ほとんどの作業は自動化されております。一部だけ、技術者が常駐して管理しています。」
見渡す限り、整然とした現場。
無駄のない動きと静けさが、むしろ高い技術力を物語っていた。
工場の見学を終えると、会議室のような一室へと通された。
さて――
いよいよ核心に迫る時間だ。
なにを、どこまで、聞き出せるだろうか。
まずは、当たり障りのないところから入るのが基本だ。
「なぜ従業員は女性だけなのですか?」
冨永社長は、にこっと笑って答えた。
「はい、我が社は“女性のために、女性が作る”というコンセプトで立ち上がりました。」
……なるほど、ありきたりな答えだ。
だが、どこか腑に落ちない。
その笑顔の奥に、何かを隠しているような気配がある。
それからしばらくは、無難な質疑応答が続いた。
会社の設立経緯、製品理念、今後の展望――
定型文のようなやり取りだ。
……やはり、こんな質問じゃシッポは出さないか。
少し踏み込んでみよう。
「先ほど、ウォシュレットを使わせていただきました。素晴らしい製品だと感じました。あの水温や水の角度、あの辺りはどのように制御されているのでしょう?」
「ありがとうございます。水温に関しましては、外気温と座った方の体温から調整しています。そして水流の角度ですが、トイレ内部のセンサーで制御しております。」
水温については、まあ想像の範囲内だ。
だが――センサー?
そう簡単に作れるものではないはずだ。
これはかなりの技術力があると見ていい。
「センサーを作るには、相当なご苦労があったのでは?」
「ええ。全社員に協力していただきましたから。」
全社員?
「社員全員の許可をいただいて、トイレの内部にカメラを設置させていただいております。その映像データを集めて、センサーの開発に活用しています。」
……さらっと、すごいことを言ってないか?
女子社員しかいない会社。
そのトイレ全てに――カメラ?
「それは……全員、承諾しているのですか?」
「はい、もちろんです。当社のトイレはすべてID認証式になっておりまして、承諾いただいた社員のIDでのみ撮影が行われる仕組みです。みなさん、協力的ですよ。」
おいおい。
この会社、大丈夫か?
全員が、自分の排泄を撮影されることに同意している?
どう考えても、普通じゃない。
そのとき――
「松下さん、彼にタブレットを。」
いつの間にか背後に立っていた女性が、タブレットを手渡してきた。
タブレットを見てみると――
「ちょっと! これ、女性の……!?」
紛れもなく、女性の“それ”が映っている。
いったい何を見せてきているんだ……。
「そちらは、当社の全女子社員の陰部データです。それらをすべて3Dスキャン化し、いつでも確認できるようにしております。」
頭がクラクラしてきた。
何を言っているのか理解が追いつかない。
「今ご覧になっているデータは、松下のものです。好きに動かしてみてください。」
……松下さん。
背後に立つ彼女の顔をちらりと見やる。
整った顔立ちの、かなりの美人――
その美人の“大事な部分”が、ここに……。
つい指が動き、タブレット上で開いたり回したりしてしまう。
「そのように大量のデータを集め、それを元にセンサーの開発に当たっております。我が社はおそらく世界で一番、女性器のデータが集まっていると思われます。」
冨永社長は、終始にこやかに説明している。
――ヤバい会社に来てしまった。
もう一つ、気になっている事があった。
SPと書かれた、あのボタン――
実は、あれこそが女性に売れている最大の理由なんじゃないか。
そんな気がしていた。
「SPボタン、押していただけたのですね?いかがでしたか?」
冨永社長が、少しテンション高めに問いかけてくる。
「吉村様の思っているとおりです。いまや、女性の自慰のための商品は竹の子のように次々と生み出されております。」
……語り出した。
「それでも、まだ堂々と買えるわけではありません。“使ってみたいけど怖い”、“汚いかもしれない”――そういった潜在的な欲望を持っている女性は、実はたくさんいるのです。」
……大丈夫かこの会社。
「そこで!ウォシュレットとして一流!欲望を満たす道具としても一流!しかも水流なので清潔!こんな素晴らしい商品は他にありません!」
バンッ!
机を叩きながら、満面の笑みで叫んだ。
……やばい人だった。
「わ、わかりました……。では、なぜ今回、私を呼んでいただけたのでしょうか?下手に男に取材させるより、女性だけの世界にこもっていた方が売り上げも安定するような気がしますが。」
そのとき――
社長の目が、きらりと光った。
「私は常々思っています。男性は汚いと。」
なんかすごいこと言い出したぞ。
「勘違いしないでください。男性のすべてが汚いとは言っていません。男性器を手で握り、こすり上げ、悪臭漂う体液をまき散らす。それが汚いと言っているのです。」
なんかこの人偏見強くないか?
だんだん面白くなってきたぞ。
「別に全ての男がまき散らしているわけではないと思いますが。」
ギロリと睨まれた。
「あなただって本当はどうせまき散らしているのでしょう!そのために男性用のウォシュレットを作ったのです!全ての男があのウォシュレットで!水流で触らずに自慰をすれば綺麗なはずです!」
面白くはあるが、こんな内容を記事になんてできるわけがない。
三流ゴシップ誌に書いて、「そんなことあるわけない」とバカにされるくらいがオチだろう。
「そ、そうですか。ではそろそろ失礼しようかと……。」
そう言って席を立とうとした、その瞬間――
「松下!」「はい!」
急に、背後から松下さんに拘束された。
そして、なにやらハンカチのような物を口に当てられる。
こ、これは……クロロ……。
意識は、すぐに手放された。
気がつくと、椅子のようなものに拘束されていた。
まわりを見渡すと、女社長、松下さん、受付嬢、その他にも多数の美人たちがこちらを見下ろしている。
「目が覚めたのね。思ったより深く眠っていて少し心配しました。」
冨永社長が、どこかほっとしたような表情でそう言った。
心配していたのは本当なのかもしれない。
「いや、あの、なんですかこれ!早く拘束を解いてください!」
叫んだその瞬間、耳元で声がした。
「おとなしくしてください。」
背後から――さっきまで目の前にいたはずの松下さんの声だった。
いつの間に移動したのか。まるで忍者のようだ。
そのまま、口に猿ぐつわをされてしまう。
「ふふ、テンションが上がって言わなくてもいいことをしゃべっちゃったわ。口止め……しないといけませんよね。」
……正直、あの発言を聞いても、誰も信じてくれないとは思う。
社長も、そのことは分かっているのかもしれない。
「まずはこれを見てください。」
そう言って、目の前に設置された大きなスクリーンに映像が映し出される。
そこに映っていたのは――
包茎の、それもだらしない自分自身の性器だった。
クスクスと、どこかから笑い声が聞こえてくる。
間違いない。さっきトイレで用を足したときの映像だ。
最初はちょろちょろと、だが途中で一度止まった。
そして、自分で剥いて出した瞬間――
「あははっ」と、明らかにさっきよりも大きな笑い声が起きた。
いったい、何がしたいんだ?
こんな映像を流して、なんの意味がある――
画面はそのままウォシュレット、ビデ、そして例のSPボタンまでをすべて映していた。
水流に反応し、みるみるうちに大きくなってしまった自分の姿が、全員に晒されている。
「大きな声、出さない?」
松下さんが、耳元でささやいた。
首を縦に振るしかなかった。
猿ぐつわがようやく外される。
「ぶはぁ……。いったい何なんだよ。こんな映像流して、辱めたいのか?」
美女たちをわざわざ集めて、こんなことを?
悪趣味にもほどがある。
「ふふ、怒らないでください。吉村様は、まだこのウォシュレットを最後まで味わっていませんよね?」
……何のことだ?
まさか、途中で止めたのを咎めているのか……?
「皆さん、彼のまわりに集まってください。」
社長の声に従い、女性たちがこちらに歩み寄ってくる。
困惑する中、松下さんがそっと、下半身にかけられていたタオルを外した。
冷たい空気が、それに触れるのを感じた――
そして、椅子だと思っていた物――それはトイレだった。
そして当然、例のウォシュレットがついていた。
「や、やめろ!こんな事して良いと思っているのか!」
そんな俺を見て、社長はため息をついた。
「吉村様、いい加減素直になってはいかがですか?よっぽど下の方が素直じゃないですが。」
笑い声が上がる。
そう、例の動画を公開されたときから……自分の下半身は大きくなっていた。
「申し訳ないのですが、あなたのことは調べさせていただきました。沢山の女性に見られると興奮するドMだと言うことを。」
うわぁ……と、どん引きしたような声がする。
その声ですら、俺の息子は歓喜する。
「ま、まさかそれがわかってて俺を?」
言った瞬間、目隠しをされた。
視覚を奪われたことで、女性達の声がいっそう鮮明に聞こえる。
「やだ、おっきくなってる……。」「おっきいって……どう見ても小さいじゃない。」「あーひどいんだ。でもこの大きさじゃね。ぷぷぷ。」
俺を馬鹿にする声が、はっきりと届く。
どうしようもなく興奮している自分がいた。
「さて、ではSPボタンのテストといきましょう。」
社長の声がした。
そして……。
しかし、待てども暮らせども何も起こらなかった。
不思議に思っていると、松下さんの声がした。
「やはり社長、これはやり過ぎです。」
どうやら社長を窘めているようだった。
「……そうね、さすがに拘束はやり過ぎたわ。私も誰かを傷つけたいわけじゃないしね。吉村様、申し訳ありませんでした。」
そっと目隠しが外される。
えっ……?
思わずキョトンとする。
あれだけ攻めの姿勢だったのに、急に方向転換されたことで拍子抜けした。
というより、事態がまったく理解できていなかった。
「え? じゃあ、俺はもう帰っていいんですか?」
そう問いかけようとしたときだった。
受付の女性が、すっと前に出てきた。
「ですが、吉村様が望み、ご自分でこのボタンを押すのでしたら……我々は何も出来ません。」
素晴らしい笑顔が、そこにあった。
まさか、自分で押せと?
そんなバカなことをするわけがない。俺は帰る。
……ピッ。
え?
気づかないうちに、自分でSPボタンを押していた。
本能が――こんな状況を逃すはずがない。そう言っている気がした。
水流が当たる。
大きくなってもなお、半分しか顔を見せていないその部分。
そこを狙いすましたかのように、水流が直撃した。
「……うおおおおおおお!」
多くの女性に見守られながら、もっとも敏感な場所を正確に刺激される。
そして——にゅるん。
ついに先端が完全に剥け、皆の目の前にさらけ出された。
「お〜……」
「ぱちぱちぱち」
なぜか拍手と歓声が上がる。
水流は亀頭から裏すじ、そして睾丸へとじらすように移動し、刺激を続けていく。
逃げ場などどこにもない。
あまりに的確で容赦のない刺激に、ついに限界を迎えた。
「きゃっ!」
それは便器の中に収まることなく、勢いよくまき散らされてしまった。
……どうやら、目の前にいた受付嬢さんの顔にかかってしまったようだ。
恐る恐る顔を見上げると、彼女は引きつった笑顔を浮かべていた。
……仕方ないじゃないか。
出したばかりの先端に、再び水がかかる。
それはほんのりと温かく、優しく洗い流してくれていた。
まるで、お掃除フェラを受けているかのような感覚。
目の前には、美人の女性たちがずらりと並んでいる。
その視線を一身に浴びながら、舐められているような柔らかな水流が続く。
……再び大きくなるまで、そう時間はかからなかった。
大きくなったことを確認したように、水流が再び動き始めた。
先ほどとは違い、今度は微細な振動を伴いながら全体を優しく、しかし執拗に刺激してくる。
出したばかりの敏感な状態ではくすぐったくて堪らない。
なんとか逃れようと体をよじるが、あらゆる角度から追いかけてくるように水が当たる。
(……このセンサー、優秀すぎない?)
心の中でそう突っ込みながらも、無防備な場所を責められ続ける。
女性たちは誰一人言葉を発することなく、静かに、しかし興味津々といった表情で見守っていた。
「……っでる!」
抑えきれず、二度目とは思えないほど大量に吐き出してしまった。
先ほどを上回るほどの快感に体が震える。
息を切らし、目を閉じていると――
「……吉村様?」
低く、冷たい声が聞こえた。
ハッとして目を開けると、そこには顔面に白濁とした液体を受けた受付嬢の姿があった。
「わざとですか?ねえ、わざとなんですよね?」
「いやもう……俺の前にいるなよ。そうなるってわかるだろ……」
その場にいた女性たちの笑い声が、明るく響いた。
エピローグ
男性向けのビデ、および水流自慰ウォシュレットの開発は、結局中止となった。
理由は単純。水流でイカせると、辺りにまき散らしてしまうからだった。
特に被害を受けた受付嬢さんが、強く反対したらしい。
「まあ、面白い機械だとは思うけど、男が買うとは思えないよな。」
そう呟きながら、俺は松下さんとお茶をしていた。
前回の件のお詫びをしたいと、彼女から直々のお誘いだった。
もちろん断る理由なんて、あるわけがない。
「今日お呼びしたのはお詫びと、もう一点。ちょっと面白い話がありまして。」
そう言って、彼女はカバンから小さなオモチャを取り出した。
どこかで見たようなフォルム。嫌な予感がする。
「おい、これって俺の……!」
そう。トイレでのデータをもとに作られた、俺の息子のオモチャだった。
「社長が軽い気持ちで作ってみたら、社内で大人気になっちゃいまして。」
彼女はさらっとそう言いながら、先端をくいっと剥いて見せた。
「ほら、ちゃんと剥けるんですよ?」
なんというモノを作っているんだ…。
俺が絶句していると、彼女はさらに衝撃の一言を放った。
「でね、一番気に入ってるのが、あの受付嬢ちゃんですよ。」
意外だった。てっきり、嫌われていると思っていたのに。
「イライラするたびに、壁に全力で叩きつけてるらしいです。何度も叩きつけると壊れちゃうので、今のは確か三個目だったかな?」
前言撤回。盛大に嫌われていた。
「ふふ、言うほど嫌われていませんよ? でも、一度ちゃんと謝った方がいいかもしれませんね。」
そう言って笑う松下さんを見ながら、ふとある記憶がよぎった。
……そういえば俺、この人の大事な部分の3Dデータ、いじったような……?
その瞬間、彼女が使っていたナイフの冷たい刃が、俺の首筋に当てられた。
「……忘れてください。」
「……はい。」
ちなみに俺の息子のオモチャ、販売されることになったらしい。
文句があるなら訴えてもいいと言われたが、その場合、日本中に俺の“短小包茎”がバレるらしい。
別に訴えるつもりはない。
売上の一部はもらえるそうだし、何より――
道行く女性がそれを持っていたら、興奮する。
「はあ……本当、ドMは救えないですね。」
END


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