【創作羞恥小説】破れたスーツ

先輩(CFNM)

大型連休を翌日に控えた夜、職場で飲み会があった。
部署の全員が参加し、会費はすべて社長のポケットマネー。
年に数回あるかないかという、大盤振る舞いの日だ。
夕方から始まった宴会は盛り上がり、気がつけば日付をまたいでいた。

完全に飲み過ぎた僕は、いま、先輩に肩を貸してもらっている。
なぜか女性の先輩で、すぐ近くからすごく良い匂いが漂ってくる。
不謹慎ながら、僕は密かに幸せを噛み締めていた。

終電はとうに過ぎ、僕たちはタクシーを捕まえようとしていた。
だが、さすがは連休前夜、同じことを考える人間が多すぎる。
流しのタクシーはまったく捕まらない。
たまに空車が捕まっても、「家が遠い女子社員」が最優先で押し込まれていく。
そうして見送りを繰り返しているうちに、結局、比較的家が近い僕と先輩の二人だけが取り残されてしまった。

「……タクシーどころか、車自体がほとんど通らなくなったわね。」

先輩の呟きに、「そうれすねー……」と、ろれつの回らない返事を返す。
アルコールのせいで、頭がまるで働いていなかった。

「先輩、家近いんれすよね?僕なら大丈夫なんで、先に帰っちゃっても良いれすよ?」
「あなたをこのまま放っておけるわけないでしょ。タクシーが捕まったら、あなたを中に押し込んで帰るわよ。」

呆れながらもそう言ってくれる先輩に、優しい人だなあ、とぼんやり感謝しつつ、二人で夜の街を見つめ続けた。
だが、やはり車影すらない。僕の眠気はそろそろピークを迎えようとしていた。

「はぁ、少し休もうか。あそこにベンチがあるし。」

先輩は僕を支えて歩き、近くのベンチに座らせてくれた。

「お水買ってくるから、少し待っててね。」

そう言い残して、先輩は近くの自動販売機へと向かう。
戻ってきた先輩は、ペットボトルのキャップを開けて僕に手渡してくれた。
「ありがとうございます……」と、冷たい水を喉に流し込むみ、ようやく一息つくことができた。

「少し落ち着いた?じゃあ、もう一度タクシーを探しに行こうか。」

先輩が僕の体を支え、立たせようとした、その時だった。
僕のお尻のあたりから、「ビリッ」と嫌な音が響いた。

(……え?)

どうやら、スーツのスラックスのお尻部分が派手に破れてしまったらしい。
ベンチの座面に、小さな釘の頭が飛び出ていたようだった。

「あ、ごめんなさい……!」

先輩が真っ青になって謝る。
いや、完全に僕の不注意だ。先輩が謝ることなんて何一つない。

「だいじょぶです!先輩のせいじゃありませんから!」

慌ててお尻のあたりを触ってみると、思った以上に大きく裂けていた。
とはいえ、時はすでに深夜。
ここから歩いて帰るにしても、こんな時間、誰も男のケツなんて見ていないだろう。
少し気恥ずかしさはあるが、このまま帰るしかない。

「僕、ここから30分くらい歩けば家なんで。もうこのまま歩いて帰りますよ。」

派手な音のおかげで、酔いもだいぶ覚めた気がする。
夜風に吹かれながらのんびり歩くのも悪くない。
しかし、歩き出そうとした僕の腕を、先輩の手が強く掴んだ。

「流石に、そんな格好のまま帰すわけにはいかないわ。」

先輩は真剣な顔で僕の破れたスーツを見つめ、少し考えるそぶりを見せた。
そして、何か大きな意を決したように、じっと僕の目を見つめて口を開いた。

「……絶対に変なことをしないって、約束できる?」
「は?」


気がつけば、僕は先輩の部屋にいた。一人暮らしのワンルーム。
男の一人暮らしとは違って隅々まで綺麗に整頓されており、部屋全体にやけに良い匂いが満ちていた。

「少し散らかっているから、あまり見ないでね。」

先輩はテーブルの上に置いてあった雑誌を片付けながら、少し照れくさそうに言った。

(これで散らかっていると言うなら、僕の部屋なんてゴミ屋敷だ……)

そんなことを考えながら、僕はどこに視線を置いていいか分からず、ただ部屋の真ん中で立ち尽くしていた。

「ズボン縫ってあげるから脱いで。はい、これ巻いておいてね。」

手際よく差し出されたのは、ふかふかのバスタオル。
初めて訪れた女性の部屋で、下半身を晒す――。
いくら不可抗力とはいえ、尋常ではない気恥ずかしさが込み上げてくる。
しかし、選択肢はなかった。
僕は覚悟を決めてスラックスを脱ぎ、腰にタオルを巻きつけると、破れたそれを先輩に手渡した。

「ごめんね、先にメイクだけ落としてきちゃうから、そのソファーに座って待ってて。」

先輩はズボンを受け取ると、そのまま洗面所へと向かった。
何とも言えない居心地の悪さと緊張感を感じつつも、言われた通りにソファーへ腰を下ろす。

だが、それが間違いだった。
上質なソファーは吸い付くように僕の身体を受け止め、忘れていたアルコールの波を全身に呼び戻した。
(ダメだ、起きてないと……)
そう頭では分かっているのに、張り詰めていた糸が切れたように、僕の瞼はどんどん重くなっていった。


洗面台の前でメイクを落としながら、私は自分の無謀さに呆れていた。
いくら何でも、後輩の男の子を部屋に連れ込むなんてどうかしている。
でも、私が座らせたベンチのせいで彼のスラックスが破れてしまったのだ。
そのまま歩いて帰るなんて言うから、見過ごせるはずもなかった。
藤井くんは、私に変なことをしてくるような人ではない――それは分かっている。
けれど、初めて部屋に男性を連れ込んで、どこか浮足立っている自分がいることも確かだった。

会社では「仕事のできる女」を装っている。
まさか私がいい年をして、これまで男性と付き合ったことすらないなんて、同僚の誰も思いもしないだろう。
クレンジングでメイクという仮面を洗い流すと、鏡の向こうから、飾り気のない生身の私が現れる。
私は自嘲気味に、ひとつため息をついた。
ズボンを縫ったら、すぐに帰ってもらおう。
藤井くんだって、私みたいな年上の女と噂になったら迷惑なはずだ。

「よし、笑顔、笑顔。」

両手で頬をパンと叩いて気合を入れる。
部屋着に着替えて、私はリビングへと戻った。

室内を見渡すと、藤井くんはソファーの上で静かに寝息を立てていた。
その姿を見て、少しだけホッとした自分がいた。

「仕方ないわね。少しだけ寝かせてあげるか。」

さすがに少し時間が経てば目を覚ますだろう。
ソファーは彼に占拠されているので、私はローテーブルを挟んでカーペットの上に腰を下ろした。
裁縫セットを取り出し、スラックスの破れに応急処置を施していく。

「家庭的でいい女だと思うんだけどね、私。」

そんな寂しい愚痴をこぼした瞬間、彼が小さく身をよじった。
その拍子に、下半身を覆っていたバスタオルが滑り落ちる。

(あ、トランクスなんだ……)

最近の若い子はみんなボクサーパンツを穿いているものだと思い込んでいた。
タオルをかけ直してあげようと彼の足元へ近づいた時、私はふと、目を留めてしまった。
緩めのトランクスの隙間から、小さな「何か」がのぞいている。

ドクン、と自分の体温が跳ね上がるのが分かった。
初めて生で見る、男性の象徴。
ごくり、と生唾を飲み込んだ。
藤井くんを起こさないよう、息を潜めて足元にしゃがみ込む。
そして、震える手でスマホを構えた。
静寂を切り裂くようなシャッター音が、私の鼓動をさらに加速させる。
画面の向こう、私の手元に収まったおちんちんを凝視しているうちに、さらに興奮が込み上げてきた。

藤井くんの顔を盗み見るが、彼は気持ち良さそうに眠ったままだ。
私は一歩踏み出し、トランクスの裾をそっと持ち上げた。
都合よく開かれた足の間から、さっきよりもはっきりとその全貌が露わになる。
想像していたよりも小さくて、少しだらんと垂れ下がったそれは、恐怖よりもむしろ、どこか可愛らしさを感じさせた。

何枚か写真に収めた後、私は吸い寄せられるように顔を近づけてみた。
鼻をくすぐったのは、モワッとした男性的で独特な匂いだ。
おしっこの残り香に混じる、生々しい雄の香り。
気がつけば、私の指先はそれへと伸びていた。
生まれて初めて触れる感触は、妙にプニプニとしていて心地よかった。

「ふふ、かわい……」

だが、私の指先が与えた刺激のせいだろうか。
それは私の手のひらの中で、急速に熱を帯びて硬くなっていく。
私が慌てる暇もなく、トランクスの隙間から弾け飛ぶようにして、完全に猛り狂ってしまった。
小さなくとも一人前に自己主張するようにそそり立つ塊。
これが「男」なのだと、本能の深いところで思い知らされる。

夢中で数枚の写真を撮った後、私はスマホで「男性器」と検索してみた。
画面に表示される成人男性のサンプル。
だが、それらは藤井くんの形とは少し異なっていた。

「……なるほど。藤井くんは、包茎っていうやつなのね。」

もはや、膨れ上がった好奇心を止める術はなかった。

「藤井くん、これ、剥けるのかな?」

耳元で囁くように問いかけてみるが、当然、返事はない。
私は今度は動画モードに切り替えてスマホを構えた。
そして、指先でそっと彼の先端を摘む。

「痛かったら言ってね?」

届くはずのない言葉を免罪符に、そっと包皮を根元に向けて押し下げてみた。

それは、驚くほど滑らかに剥けた。
包まれていた皮の中から、ニュルっと果実が顔を出すように、艶やかな亀頭が姿を現す。

(これが、亀頭……)

感心しながら、その剥ける瞬間をしっかりと動画に収めた。
あとで一人になった時、じっくり楽しむために。

剥き出しになったそこからは、少しツンとした独特の匂いが漂ってくる。

「仕方ないわね。お姉さんが綺麗にしてあげる。」

そう呟きながら、私は棚からデリケートゾーン用のウェットシートを取り出した。
もう一度藤井くんの寝顔を確認してから、私は自分のパンツをめくり、下着へと手を伸ばす。
まずは一枚取り出したシートで、クパッと開いた自分の粘膜をそっと拭ってみた。

「うん……私のおマンコにしみないし、これなら大丈夫ね。」

お酒のせいで、完全にネジが吹き飛んでいるのだろう。
普段なら死んでもできないような破廉恥な行為を、私は平然とやってのけていた。
自分のそこは、思った以上に熱く湿っていた。
自分の愛液を吸ったシートをローテーブルに無造作に放り出すと、私は新しいシートをもう一枚引き抜いた。
そして、今だにビンビンとそそり立つ彼の先端を、優しく包み込むようにして拭きあげる。
亀頭を拭うたびに、藤井くんの身体がピクピクと敏感に反応するのが、たまらなく楽しかった。

私の手ひとつで、年下の男の子を思うがままに弄んでいる。
目にするもの、触れるもの、そのすべてが、私の人生で初めての経験だった。


僕は今、夢を見ている。
ずっと気になっていた仲村先輩の家に招かれ、こともあろうに寝落ちしてしまった。
だから、これはきっと僕の願望が生み出した夢だ。

夢の中の先輩は、僕のトランクスから躊躇なくおちんちんを引っ張り出し、大きくさせていた。
そして、それを楽しそうにスマホで撮影している。
猛烈に恥ずかしいけれど、所詮は夢なのだから僕にはどうすることもできない。
すると、先輩が僕の耳元に顔を近づけ、吐息混じりに囁いた。

「藤井くんはおちんちん剥けますかー?」

その声に刺激され、僕のそれはさらに硬度を増した気がした。
そして、先輩の指先によって、ニュルっと皮を剥かれてしまう。
初めて女性の手に触れられ、剥き出しにされた僕の象徴。
なぜだか、気恥ずかしさと同時に、少し誇らしいような奇妙な気持ちが胸に込み上げていた。

すると、仲村先輩は何やらウェットシートを取り出すと、おもむろに自分が穿いているショーツをめくった。
初めて網膜に焼き付ける、本物の女性の秘部。
黒々とした陰毛の隙間、見えそうで見えない肉の裂け目。彼女はそれを、自らの指で躊躇なくクパッと押し開いてみせた。
そして、シートで秘部を拭い、何事かを確認しているようだった。

夢とはいえ、こんなところで憧れの女性の、一番大事なところを見てしまった……。
もしかしたら、僕はもう死んでいて、ここは天国なのかもしれない。

だが、彼女は自分の愛液で湿ったシートをローテーブルに放り出すと、新たな一枚を引っ張り出した。
そして、僕の剥き出しになった亀頭を、優しく愛おしむように拭き始めた。
ひんやりとしたシートの感触が、アルコールで火照った身体にひどく心地いい。

(夢って、こんなに現実的な感覚まで再現できるんだな……)

酔った頭で、僕は妙に感心していた。

シート越しに伝わる手のひらが、敏感な部分に触れるたび、僕の身体は抗えずにピクピクと跳ねる。
そんな僕の反応を、先輩はどこまでも楽しそうに、愛おしげに見つめていた。


藤井くんのそこを拭いていると、先端の割れ目からじんわりと透明な液体が溢れてきた。
なるほど、これががまん汁とか、カウパー氏腺液とかいうやつか。
……それにしても、カウパー氏って誰だろう。
覚えていたら後で調べよう。そんな場違いな思考が頭をよぎる。

気がつけば、彼のおちんちんはさっきよりもさらにパンパンに膨れ上がっていた。
もしかしたら、このまま射精してしまうかもしれない。
でも、私は決して悪戯をしているわけではない。
あくまで彼の汚れた部分を拭いて、綺麗にしてあげているだけだ。
完全に親切心であり、やましい気持ちなんて一切ない。
誰に聞かれているわけでもないのに、心の中で必死に言い訳を綴る。
そんな私は、きっととても醜いのだろう。

彼の睾丸が、限界を察知したようにきゅっと引き締まった。
もうすぐだ。もうすぐ、彼は達してしまう。
まだ、今なら止められる。
理性を司る、清廉な私が頭の中で大声で叫んでいた。
けれど、脳を支配した好奇心という名のドス黒い狂気は、その悲鳴を無慈悲に踏みつぶした。

「……もう少しで、綺麗になるからね。」

その都合のいい言い訳が、私の指先の愛撫をさらに加速させた。
そして、その瞬間は訪れた。

「ッ――!」

藤井くんの身体が大きく痙攣し、私が拭いていたその先端から、思いっきり精を吐き出した。
ビクンビクンと激しく脈打つたびに、勢いよく飛び出すそれに対して、私はなすすべもなかった。
止めることもできず、白濁した液体が彼のシャツを汚していく。
私はその光景に、畏怖のような、小さな恐怖を覚えていたのかもしれない。

やがて痙攣が収まった頃、私は自分がしでかしてしまったことの重大さに、一気に血の気が引いていくのを感じた。
どう考えても、これは性暴力だ。
悪戯の範疇なんて、とうに超えてしまっている。
どんな言い訳も、もう通用しなかった。
慌ててティッシュを引き抜き、必死に拭き取ろうとするが、どうしても綺麗に拭いきれない。
焦りで手元が激しく震える。

「……先輩?」

その時、頭の上から、いま最も聞こえてほしくない声が聞こえた。


夢というには、あまりにもリアルすぎる絶頂感だった。
激しく痙攣する身体と、自分でも驚くほどの勢いで溢れ出た精液。
そして、必死に僕のシャツを拭き取ろうとしている先輩の姿。

(これ……もしかして、現実なのか?)

ゆっくりと目を開けると、そこには必死に手を動かす仲村先輩の顔があった。
今にも泣き出しそうなほど、余裕のない表情をしている。

「……先輩?」

声をかけた瞬間、しまった、と思った。
もしかしたら、このまま寝たふりを続けることこそが正解だったのかもしれない。
だが、間近で見てしまった先輩のその顔に、声を引き留めることはできなかった。

「ち、違うの!これはその、ただ綺麗に拭いてあげようとしただけで……!」

普段は冷静沈着で、誰に対しても物怖じしないあの先輩が、見たこともないほど慌てふためいている。
その姿が、不謹慎にもたまらなく可愛く見えてしまった。

「……ごめんなさい。」

言い訳の言葉を失ったのか、先輩は項垂れるようにして小さく謝った。
もう一押しでもしたら、本当に泣き出してしまうかもしれない。
そんな先輩を見つめているうちに、僕は、胸の奥から突き上げてくる自分の感情を止めることができなくなった。

「先輩、好きです。僕と付き合ってください。」
「……え?」

先輩の動きが完全に静止し、その瞳が信じられないものを見るように見開かれた。
金魚のように口をぱくぱくと動かしているが、脳の処理が追いつかないのか、一言も音声になって出てこない。

彼女の沈黙が長引くほど、僕の頭は急速に冷や水を浴びせられたように冷えていく。

(……そりゃそうだよな。いい大人が、こんな状況でいきなり告白なんて、意味が分からないよな……)

自分の圧倒的な恋愛経験のなさが、今更ながら激しく恨めしかった。


藤井くんに、「好きだ」と言われてしまった。

何か言葉を返したいのに、喉が張り付いたように何も出てこない。
意味が分からない。
本当に、何が起きているの?
どう好意的に解釈したって、私は今、寝ている後輩の男の子を弄ぶという、嫌われて当然の裏切り行為をしたのだ。
どの口が「何もしない?」なんて聞いたのか。
彼が目を覚ました瞬間なんて、最悪の事態――警察に通報される未来まで覚悟して血の気が引いていた。
それなのに、まさかの告白?

私が一言も発せないでいると、みるみるうちに藤井くんの表情が曇っていく。
もしかすると、私のこの沈黙を、無言の「NO」だと受け取ってしまったのかもしれない。

(違うの!違うのよ藤井くん!私はただ、生まれて初めて男の子から告白されて、脳みそが完全にテンパっているだけなの……っ!)

パニックになりながら、私はどうにか喉の奥から声をひねり出した。

「こ、交際を前提に……まずは、お友達から、お願いします!」

……我ながら、おかしな返事をしてしまった。
案の定、藤井くんも喜んでいいのか分からない、という何とも言えない困惑した表情をしている。

仕事を通じて、藤井くんの誠実さや優しさはよく知っている。
だけど、私はプライベートの彼を、まだ何一つ知らない。
大人の余裕なんて微塵もない、こじらせ処女による、こじらせの極みのような返事だった。


エピローグ

あの夜から、何度か仲村さんとデートを重ね、僕たちは晴れて恋人同士になることができた。
だが、彼女の強い希望もあって、しばらくの間は会社で付き合っていることを隠そう、という話になった。
色々と噂が立ちやすい社内恋愛の煩わしさを思えば、大人の選択として当然かもしれない。

だが、頭では分かっていても、仕事中に仲村さんの姿を見かけるだけで、どうしても口元が緩んでしまう。
そんな僕の視線に気づくと、彼女も周囲にバレないような絶妙なタイミングで、僕に向かって悪戯っぽくニコッと微笑んでくれるのだ。

(早くみんなに、胸を張って公表できるようになると良いな……)

そんな甘い未来を思い描きながら、僕は充実した日々の中で楽しく仕事に励んでいた。

* * *

「……あのふたりさ、あれで付き合っていることを隠しているつもりなのかね。」
「いいじゃない、まるで中学生同士の初々しい恋愛を見てるみたいでさ。見てるこっちが和むわよ。」
「はぁ……仲村のこと、実は俺も密かに狙ってたんだけどな……」
「先輩、元気出してください!今日は私が飲みに付き合いますから!」
「ここにもまた一組、新しいカップルが誕生しそうだな……」

END


ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

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