【創作羞恥小説】開放感の目覚め

OL

今、私は高層ホテルに泊まっている。
このあたりでは最も高い建物らしく、実際に周囲を見渡しても、これより高いビルは見当たらない。

なぜこんなことになっているのか──。
それは、出張でこの地を訪れたときのことだった。

もともと予約していたホテルにチェックインしようとしたのだが、どうやらダブルブッキングが発生していたらしい。
どうしたものかと困っていると、受付の人が「系列の別のホテルでよければ、同じ料金でご案内できます」と申し出てくれた。
今から予算内で新たな宿を探すのは難しそうだと思い、その提案を受け入れることにした。

そして案内された先が、まさかの高層ホテルの最上階だった。
安宿からの思わぬグレードアップに、私はすっかり舞い上がってしまった。

──きっと、あのとき心に隙ができていたのだろう。


打ち合わせは午前中で終わり、午後はホテルで書類作成の予定だった。
もっとも、それも明日の昼までに仕上げておけば十分間に合う。
しかも、ほとんど手直し程度で済むような内容だった。

──というか、もう終わってしまった。

つまり、私は今、完全に自由なのだ。

今日はこの高層ホテルで、心ゆくまでゴロゴロしてやると決めた。
職場ではきっちりとした印象を心がけているが、家ではかなりズボラな性格である。
そして私は、いわゆる“裸族”でもある。
特定の日以外は、パンツすら履かないのが当たり前だ。

そんな私が、誰の視線も届かない高層階で、まる一日を好き放題に過ごせる。
こんなにも気楽で、素晴らしい出張が今までにあっただろうか。

まずは、広々としたバスルームを堪能することにした。
湯船にお湯を張り、アメニティの入浴剤を選ぶところまで済ませる。
表向きはきちんとして見えるよう気を使っているため、脱いだスーツは丁寧にハンガーに掛けた。

……その一方で、肌着や下着はソファの上へと無造作に放り投げた。

「……解放感。」

思わず、ひとりごとのように呟いた。

普段なら体を洗ってから湯船に浸かるのが習慣だが、今日は違った。
ビール片手に、何のためらいもなくそのまま湯船へ飛び込んだのだ。

「実家だったら絶対怒られるヤツだな。」

そう呟きながら缶をプシュッと開け、一口。
グイッと喉を鳴らして飲み干す。

「……プハーッ!昼間に飲むビールって、なんでこんなに美味しいんだろう!」

今ごろ同僚たちは、会社で黙々と仕事に追われているのだろう。
そう思うと、妙な優越感が胸に広がる。
当然ながら、酒も進んだ。

気がつけば、500mlの缶が3本空になっていた。

「さすがに飲みすぎたか……。」

頬がほんのり火照っている。少しのぼせたような感覚を覚えながら風呂を出た。
体を拭き、部屋へ戻る。時刻はまだ昼過ぎ。

窓際に立ち、ぼんやりと街を見下ろす。
全裸のまま、仁王立ちで。

──まさかこんな高層階で、裸の女が立っているなんて誰も思わないだろう。

そう考えると、なんだか可笑しくて笑えてきた。

そして、不意に眠気が襲ってきた。

「今日は朝早かったからなぁ……。」

大きくひとつ欠伸をしてから、ふと呟く。

「晩ご飯まで、少しだけ寝ちゃおうかな。」

そのまま、真後ろにあった大きなベッドへと身体を投げ出す。

──太陽よ、私を照らしてくれ。

そんなことを思いながら、ゆっくりとまぶたを閉じた。


「先輩、一番上の階ってやっぱ怖いっすよ……。」
「運が悪かったな。今日は最上階に誰も泊まらないらしい。だからそのシフトに当たったお前も諦めろってこった。」

二人の男が、屋上で話している。
彼らは今、ゴンドラを下ろす準備の真っ最中だった。

下を覗き込めば、吸い込まれるような景色が広がっている。
「……あんまり覗き込むなよ。引っ張られるように飛び降りちまう奴とか、たまにいるらしいからな。」
そう言いながら、先輩が手際よく安全帯を装着した。

「怖いっすねー……。早く終わらせちゃいたいっす。」
掃除道具を積み込み、二人はゴンドラへ乗り込んだ。

「よし、さっさと終わらせて、メシでも食いに行こうぜ。」

ゴンドラがゆっくりと降下を始める。

「やっぱ誰もいないみたいっすねー。」
一部屋目の窓に差しかかり、淡々と清掃を始める。

「まあ、仮に誰か泊まっててもカーテンは閉めてるだろうしな。……そもそも、人がいたら気まずいから、いない方がありがたいわ。」

世間話をしながらも、二人の手は止まらない。

「しかし、一番上の階だけの掃除って、ちょっと贅沢っすよね。」
「そりゃまあ、高層階は特別扱いされるからな。」

一部屋目が終わり、二人は次の部屋へと移動する。

「……あれ? ベッドに誰かいないっすか?」
「は? そんな馬鹿な。誰も泊まってないから許可が出てるはず……なんだが?」

そこには、大の字でベッドに倒れ込む女性の姿があった。
足をこちらに向け、無防備に寝息を立てている。

「女っすね……しかも、裸じゃないっすか……。」

大胆に開かれた両脚のあいだから、はっきりとその中心が見えてしまっている。
丁寧に処理しているのだろう。
上の部分にはフサッとした毛が残されていたが、肝心なワレメはつるつるに整えられていた。

上から見下ろす形になっていた。
ベッドに大の字で眠る女性の姿は、まるで絵画のように無防備だった。

横に流れきらない、張りのあるバストが呼吸に合わせてゆっくりと上下している。

「……あんま見るな。さっさと終わらせて次行くぞ。」
先輩が低く言った。

「そ、そうっすね。あまり見ないように……するっす。」

そう言いながらも、二人の視線は彼女から外れることはなかった。
息をひそめるようにして、ただその姿を見つめていた。

やがて、女性は寒さを感じたのか、ベッドの上で毛布を手繰り寄せ、体に巻きつけるようにして丸まった。

「……残念っすけど、これで仕事に集中できますね。」
「そうだな。さっさと終わらせよう。……それと、さっき見たことは他で言うなよ?」
「当然っす!」

そんなやりとりを交わしながら、二人の“幸せな時間”は静かに幕を閉じたのだった。


影のような物が何度か目の前を横切ったような気がした。
その感覚で、ふと目が覚めた。

酒が残っているのか、身体は重く、ガバッと起き上がる気力もない。
まぶたをうっすらと開けて、ぼんやりと外を見た。

──そこに、人影があった。

一気に酔いが覚めた。頭が回り始め、状況を理解し始める。
窓の外、ゴンドラらしき足場に、二人の作業員が乗っている。
どうやら窓の清掃中らしい。

誰にも見られないはずの高層階に、まさかの来客。
だが彼らは、こちらを気にする様子もなく、淡々と作業を進めている。

もしかすると、ガラスの反射で部屋の中は見えていないのかもしれない。

──それにしても。

だとしても、うら若き乙女が男性二人に思いっきり足を広げ、内側を見せつけているのはどうなのだろうか。
乙女って年齢でもないが。

さっき目が覚めた時に、すぐに起きておけばよかったと後悔する。
今さら動いて何か事故でも起きたら困るし……。

こういうときに余計なことばかり考えてしまうのが、自分の悪い癖だ。

すると、右手に布団の感触を感じた。
私は、まず最初にピシッとベッドメイキングされている掛け布団を引っこ抜く。
ホテルに入ったときのささやかなルーチンワークだ。
だから、身体の下ではなく右手の辺りに布団があったのは、ある意味幸運だった。

なるべく自然な動きで、そっと身体に布団を巻きつける。
そして、寝続けているフリをしたまま、ひたすら早く終わってくれと祈った。

……いつの間にか、清掃員たちはいなくなっていた。

ようやくガバッと身体を起こすと、窓の外に真っ赤な夕日が見えていた。

「西日だここ。」

そんな、どうでもいいことを呟いていた。


夕食を済ませたあと、もう一度風呂に入りながら考え込む。

「……たぶん、見えてたけど、見てないふりしてただけだよね。」

そんな気がしてならない。
あれだけ明るい部屋で、大の字になって寝ていた自分。
それを真正面から見られていた可能性は高い。

しかも、あの部分は処理したばかりで、遮るものは何もなかった。
どれだけ大胆に“サービス”してしまったのか──想像するだけで背筋がゾクゾクした。

風呂から上がり、再び昼間と同じように窓際に立つ。
裸のまま、仁王立ちで。

外はすっかり暗くなっていたが、周囲の建物の窓は明るく灯っている。
その無数の光の一つひとつが、まるで自分を見つめているように感じた。
私の裸を、じっくりと観察しているかのように。

右手が自然と下腹部へと伸びていた。
そして、ゆっくりとその部分を開く。

“普段は簡単に見せることのない場所”を、今、この瞬間──
すべての光の中にいる“誰か”に、無防備に晒している。

息が荒くなっているのに気づいた。

「……いいよ。見なさい。」

そう小さく呟きながら、中指がゆっくりと動き始めた。

開かれたそこへ、中指が自然と触れた。

くちゅ──

ぬるりと濡れた感触が指先に伝わる。
思っていた以上に、熱を帯びていた。

──普段は自慰行為なんて、ほとんどしないのに。

今この瞬間だけは、どうしても抑えきれなかった。
“見てほしい”。
その気持ちだけが、指を動かす原動力になっていた。

中指をそっと動かしながら、人差し指が敏感な部分に触れる。
気づけば左手は、人並み以上にはある胸の先端をつまんでいた。

「……ああ、見ないで……。」

思ってもいない言葉が口をついて出る。
羞恥の中に、まだわずかに理性が残っている証拠だった。

だが、静まり返ったホテルの部屋に、濡れた指先が奏でる音がこだまする。

「……音も……聞いちゃ、いや……っ」

小さく震える声が漏れた。

もう、手を止めることはできない。
熱を帯びた身体はどんどん高ぶり、呼吸も荒くなっていく。

気づけば左手が窓に映る自分と手を合わせていた。
まるで、後ろから抱きしめられているような体勢で──。
鏡に映る私の顔はみだらに乱れていた。

そして──その瞬間は、あっけないほど突然にやってきた。

「見てぇ……イッ……あぁあっ……っ♥」

ビクッ!ビクッ!と身体が痙攣する。

今まで感じたことのない感覚が、身体中を駆け抜けた。
これまでの自慰でも、そしてセックスでさえも、一度も“そこ”に至ったことはなかった。

だが──今日、初めて知ってしまった。
”絶頂”というものを。

胸が波打ち、呼吸は乱れ、ハアハアと音を立てる。
ふと視線を落とすと、右手は驚くほど濡れていた。

「……見られることが、こんなに気持ちいいなんて。」

自分の中の“何か”が、確かに変わってしまった気がした。
触れてはいけない扉を、自らの意思で開けてしまったような──そんな予感。

ティッシュで拭こうと一瞬思ったが、目に入ったのはまだ湯気の立つバスルーム。

「……もう一回、お風呂入りなおそ。」

そう呟き、火照りを残したまま湯船へと身を投げ入れた。


エピローグ

翌朝、私はぱっちりと目を覚ました。
驚くほど、ぐっすり眠れていた。

「まさか……オナニーでこんなに熟睡できるなんて……。」

ひとりごとを漏らしつつ、朝から羞恥心に襲われる。
とはいえ、やってしまったものは仕方がない。

裸族なので、寝るときも当然私は裸のまま。
全裸でベッドから立ち上がり、そのまま窓際へと向かった。
カーテンをシャッと開け、仁王立ちで外を見下ろす。

下のほうでは、車や人がちらほらと動いている。
それを見ているだけで、心臓がドキドキと早鐘を打ち、息が少しずつ荒くなっていく。

「……私は、パブロフの犬か。」

自分で自分にツッコミを入れつつも、身体はすでに刺激を求めはじめていた。

「……しかたないよね、うん。」

そう言いながら、右手がまたゆっくりと“そこ”へ伸びていく。
開かれた脚、見せつけるような体勢。
そして、朝から──。

「……ふぅ。」

ひとときの余韻を残し、湯船に身を沈める。
朝の風呂は、思考をゆっくりと静めてくれる。

「また来たいけど……普通に泊まったら高いよね。」

今回は偶然の産物だった。
もともと泊まる予定だったホテルがダブルブッキングされていたからこその、棚ぼた。

──まぁ、恥ずかしい部分を見られたのも事実だけど。

「……また来るために、仕事がんばろう。」

変な方向にやる気が出てしまった。
とはいえ、オナニーのために高級ホテルに泊まるのもどうなんだろう。

「……男の人が風俗にお金をかける理由、少しわかった気がする……。」

快楽には、抗いがたい力がある。

「さて、今日の打ち合わせも気合い入れましょうか。」

湯船から上がり、身体を拭きながら窓際に足が向かう。

──そして。

「……あ。」

END


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