【創作羞恥小説】羞恥の除霊

同僚

僕は今、肝試しに来ている。
古びた廃神社の中に置かれたお札を取ってくる。それが今回のミッションだ。

男女ペアで挑むこの肝試しは、なかなか進展しない僕と雪乃ちゃんの仲を見かねた友人が、気を利かせて仕組んでくれたものだった。

「賢人くん、よろしくね。」

そんなふうに可愛く笑われてしまったら、張り切らないわけがない。
僕たちはさっそく、懐中電灯を片手に廃神社へ向かった。

道中は林の中の遊歩道を進んでいく。
やがて視界が開けた先に、朽ち果てた社が姿を現した。

「あそこだね。行こうか。」

懐中電灯の明かりを頼りに、二人で廃神社の中へ入る。
そして、テーブルの上に置かれていたお札を手にした。

意外と怖くないな。
そう思った、そのときだった。

「キャ!」

背後で雪乃ちゃんの短い悲鳴が響く。
振り返ると、腐食した床に足を取られた彼女が、バランスを崩して僕の方へと倒れ込んできた。

「危ない!」

慌てて彼女を支えようとしたが、勢いに押されて僕も後ろへとよろめく。
尻餅をつきそうになり、とっさに背後の壁に手を伸ばしたその時、静まり返った社殿に「ベリッ!」という不吉な断裂音が響いた。

地面に倒れ込んだ僕の腕の中には、雪乃ちゃんの柔らかい温もりがあった。
本来なら夢心地になってもおかしくない状況だが、それ以上の違和感が右手に残っている。

「ご、ごめんなさい!大丈夫?」

雪乃ちゃんは慌てて身を起こした。

「大丈夫、大丈夫。」

そう言って手を振ると、雪乃ちゃんが怪訝そうな顔をした。

「賢人くん、何掴んでるの?」

見ると、僕の手の中には紙のようなものが握られていた。
さっき取ったお札かと思ったが、それは反対の手に持っている。

恐る恐る手元を見てみると、それは掛け軸のようなものの半分だった。

慌てて壁の方へ目を向ける。
そこには、無惨に破れた掛け軸が残っていた。

「……やば。」

暗闇の中で、二人の間に凍り付くような沈黙が流れた。

「……やってしまったものは、しょうがないよね。」

真っ二つになった掛け軸を前に、僕たちは顔を見合わせた。放置して逃げるわけにはいかない。
僕たちはその残骸を抱え、重い足取りで仲間たちの待つ集合場所へと戻った。

「ごめん。僕が転んだ拍子に、備え付けの掛け軸を破っちゃったんだ。」

隣で雪乃ちゃんが「私が転んだせいで……」と口を開きかけたが、僕はそっと手で制した。
少しぐらい、格好をつけさせて貰ってもいいよね。

「そうか。ちょっと持ち主に連絡してみるよ。」

幹事の一人がスマホを取り出し、どこかへ電話をかけ始めた。
廃墟とはいえ、ここは管理されている私有地だ。
今回の肝試しも、事前に許可を得て行っていたものだった。

しばらくの沈黙の後、電話を終えた彼が戻ってきた。

「別に何壊してもいいってさ。なんか、三か月以内にあそこ更地にしちゃうらしい。」

その言葉に、僕と雪乃ちゃんは同時にホッとため息をついた。
最悪の事態は免れた。だが、手元に残されたこの掛け軸の残骸はどうすればいいのか。

「今さら戻しに行くのも変だしな。ここに置いておいてくれれば、後で業者がまとめて処分するそうだよ。」

その言葉に従い、僕たちは申し訳なさを感じつつも、破れた掛け軸をその場に預けることにした。

こうして、波乱含みの肝試しは終わりを迎えた。
結果的に、雪乃ちゃんとは少しだけ距離が縮まった気がした。


家に帰り、荷物を整理していると、カバンの中に入れた覚えのないものがあることに気づいた。

なんだろうと思って広げてみる。
すると、それはあのとき確かに現場へ置いてきたはずの、掛け軸の半分だった。

「え?なんで?」

思わず声が漏れる。

自分で持ち帰った覚えなんてない。
誰かのいたずらだろうか。
だとしたら、ずいぶん趣味が悪い。

そう思った、そのときだった。
スマホが鳴り響いた。

慌てて手に取ると、相手は雪乃ちゃんだった。

「あの、変なこと聞くけど……私のカバンに掛け軸入れた?」

その瞬間、背筋がすうっと冷たくなるのを感じた。

「雪乃ちゃんも?実は僕のカバンの中にも……。」

どうやら、こちらだけの話ではないらしい。

結局、捨てるのも気味が悪いし、次の土曜日に一緒に神社へ戻しに行こうという話になった。

二人きりで出かけるなんて、傍から見ればデートみたいなものかもしれない。
けれど、そんなふうに浮かれる気分にはとてもなれなかった。

「また、あそこに行くのか……。」


電車を乗り継ぎ、数日前と同じ林の入り口に立った。
昼間に見るそこは、近隣住民が利用する穏やかな散歩コースに過ぎない。
心霊スポットなどという噂も、本来はないはずだった。
あの日、僕たちが「神社」だと思い込んでいた場所も、実際はそれらしい形をしただけの古い空き家だったはずなのだ。

だが、目的地に近づくにつれ、僕と雪乃ちゃんの足が止まった。

「……ここ、こんなに綺麗だったっけ?」

目の前に現れたのは、夜に見た朽ち果てた廃神社とは似ても似つきぬ、凛とした佇まいの社だった。
朱塗りの柱は鮮やかで、手入れの行き届いた境内には清浄な空気が満ちている。
狐につままれたような気分で立ち尽くしていると、拝殿の扉が音もなく、スッと開いた。

逆光の中に、一人の女性が立っていた。
古風な装いを纏った彼女は、僕たちの顔を交互に見据えると、静かに口を開いた。

「待っていたぞ。」

その声は、拒絶を許さない不思議な響きを持っていた。
彼女に促されるまま、僕たちは吸い込まれるように社の中へと足を踏み入れた。

社の中は、驚くほど清浄な空気に満ちていた。あの夜の、鼻をつく埃っぽさや腐朽した木の匂いは微塵もない。隣に立つ雪乃ちゃんが、不安げに僕の袖を引いて囁く。

「ここ……本当に、あの時の場所かな?」

信じがたい光景だが、僕の目はある一点に釘付けになった。
壁の剥落した箇所――そこには、あの日僕が引きちぎった掛け軸があったはずの場所に、四角く日焼けしたような跡がくっきりと残されていた。

「あそこを見て。……間違いないよ。」

僕は覚悟を決め、カバンから「掛け軸の半分」を取り出した。
雪乃ちゃんも震える手で、もう片方の欠片を差し出す。

「すみませんでした!僕が不注意で、この掛け軸を破ってしまいました。弁償と言っても難しいかもしれませんが、僕にできる限りのことは何でもします!」

二人で深く、畳に額がつくほど頭を下げた。
最悪の事態を想定して身を硬くする。

だが、返ってきたのは、拍子抜けするほど穏やかで慈愛に満ちた声だった。

「顔を上げなさい。掛け軸を損なったこと自体を、咎めるつもりはありません。ただ……」

女性の言葉が途切れる。その一瞬の「間」に、僕は言いようのない不安を覚えた。

「そろそろ、異変が出てくる頃だとは思います。」

「異変……?」

聞き返そうとした瞬間、身体の奥底から得体の知れない熱がせり上がってきた。
熱に浮かされたような感覚。
それと同時に、最悪のタイミングで「それ」に気づいてしまった。

僕は、自分が勃起していることに気づいてしまった。


それは、もはや生理現象の範疇を超えていた。
ズボンを突き破らんばかりの勃起に、僕は思わず下腹部を押さえてうめいた。

「大丈夫?賢人くん……お腹痛いの?」

顔を青くして屈み込む僕を、雪乃ちゃんが心配そうに覗き込む。
だが、その純粋な気遣いに、目の前の女性が冷や酷な事実を突きつけた。

「腹痛ではない。もう少し下――その者の『イチモツ』が猛り狂っておるのだ。」

「えっ……!?」

雪乃ちゃんは弾かれたように手を引っ込め、顔を真っ赤にして数歩後退した。
ショックだったが、弁明の余地もない。
僕は脂汗を流しながら、絞り出すような声で問うた。

「なんなんですか、これ……。あの掛け軸と、関係があるんですか?」

女性は無言で、僕たちが持参した二つの欠片を合わせた。
そこに現れたのは、片手に男根を、もう片方の手に血に染まった包丁を握りしめた凄惨な女の姿だった。
暗闇で見たときは気づかなかったが、その表情は怨念に歪み、見る者を射抜くような殺気を放っている。

「この掛け軸の女は、かつて男に裏切られ、その『イチモツ』を切り落として殺したのだ。」

女性の淡々とした解説が続く。
男への恨みはその男を殺してもなお消えず、さらに多くの男のイチモツを切断した。
結局死罪になったが、「男のイチモツを勃起させ、そのまま壊死させる」という、執拗かつ卑劣な悪霊と化したのだという。

「……つまり、僕のは今、壊死の危機にあるってことですか!?」

「左様。放置すれば、腐り落ちるであろう。」

冗談ではない。あまりに悪質すぎる。
女性によれば、その悪霊を封じていたのがあの掛け軸だったのだ。
それを僕が雪乃ちゃんを守るためとはいえ物理的に「破って」しまった。

「あ、あの!どうにかならないんですか!?」

必死に縋る僕に対し、女性は雪乃ちゃんへと視線を移した。

「そちらの娘の協力が必須だ。これほど都合よく『汚れなき清らかな娘』が居合わせたのは、幸運であったな。」

「汚れなき……?」

その言葉の持つ意味を理解したのか、雪乃ちゃんはあわあわと手を振り乱した。

「な、何を……変なこと言わないでください!」

その過剰なまでの狼狽ぶり。
それはつまり、彼女がまだ「処女」であることを証明しているも同然だった。

(雪乃ちゃん、やっぱりそうだったんだ……)

極限の激痛と恐怖の中にいながら、僕は不謹慎にも頬が緩むのを感じていた。

「……ちょっと。なんでこんな状況でニヤニヤしてるのよ。」

顔を真っ赤にした雪乃ちゃんにジトッとした目で睨みつけられる。
だが、猶予はない。

「時間はないぞ。娘よ、協力するのか、それともこの男のモノが腐り落ちるのを見届けるのか。はっきりせよ。」

女性の詰め寄るような問いに、雪乃ちゃんは覚悟を決めたように僕を、そして僕の「それ」を凝視した。

「……わかりました!やります、やりますから!賢人くんを助けてあげてください!」

羞恥に震えながらも放たれたその宣言に、僕は痛みも忘れて心の中で小さくガッツポーズを決めていた。


「ではそこの者、履き物を脱ぎこちらへ参れ。」

女性の静かな、だが拒絶を許さない声が響く。
……やっぱり、脱がないとダメだよな。もちろん覚悟はしていた。
していたはずなのに、いざ意中の雪乃ちゃんの前で、しかもこんな神聖な場所で「それ」を晒さなければならない現実に猛烈な羞恥が込み上げてくる。

とはいえ、股間の痛みはもう限界だ。
僕は雪乃ちゃんに背を向けるようにして、震える手でベルトを解き、ズボンとパンツを膝まで下ろした。

「……っ」

冷たい空気に触れた瞬間、自分でも見たことがないほど大きく、岩のように硬く反り上がったイチモツが跳ね起きた。
呪いの熱でパンパンに膨れ上がっているが、悲しいかな、それでも元々のサイズが「物足りない」ことに変わりはなかった。
おまけに、これほど勃起しているというのに先端は厚い皮に包まれたまま顔を出してはいなかった。

「ふむ。なかなか、かわいらしいイチモツじゃな。」

目の前に女性が立っていることを、完全に失念していた。

「うわああっ!?す、すいません!」

雪乃ちゃんから隠そうとした結果、儀式を取り仕切る彼女の鼻先に、僕の無様なモノを突き出す形になってしまったのだ。
慌てて身体をひねったが、今度はその反動で、背後にいた雪乃ちゃんの視界に真正面から「それ」を晒してしまう。

急に目の前に現れた異様な光景に、雪乃ちゃんは目を丸くして固まっていた。
僕はあわてて両手で股間を隠した。

「ご、ごめん!違うんだ、わざとじゃなくて!」

「う、ううん……大丈夫、大丈夫だから……。」

何が大丈夫なのか自分でも分かっていないだろうに、彼女は顔を真っ赤にしながら蚊の鳴くような声で僕に応えた。
お互いに顔を見られず、ただただぺこぺこと頭を下げ合う。

「二人が仲睦まじいのは分かったが、あまり時間は無いぞ。こちらへ来い。」

女性の声にハッと我に返り、僕は促されるまま彼女の元へと進み出た。
そこには、小ぶりな陶器の器がポツンと置かれていた。

「これからやることは簡単だ。この器に、その者の『精液』を溜めるだけで良い。……ただし、その娘の手で出させねばならぬ。」

やはり、そういうことか。
僕がどう思おうと構わないが、雪乃ちゃんにそんなことを……。

雪乃ちゃんは、潤んだ瞳でじっと足元の器を見つめ、それから僕の顔を、最後に僕の股間を一度だけ見て、小さく息を呑んだ。だが、彼女の迷いは一瞬だった。

「やります。……やりますから、賢人くんを助けてあげてください。」

一点の曇りもない、真剣な眼差し。
その純粋な自己犠牲の精神を前にして、一瞬でも「ラッキーだ」などと下心を持ってしまった自分を、僕は心の底から恥じた。


「ただ溜めるだけではないぞ。三種類の快楽を与えねばならぬ。まずは……『手』じゃな。」

三種類?それに、手……。要するに、雪乃ちゃんに手コキをさせるということか。
僕が困惑と興奮の渦に呑み込まれていると、雪乃ちゃんが消え入りそうな声で白状した。

「あ、あの……もうバレているから言いますけど、私、そういうことしたことがなくて……。正直、どうやればいいのか……」

不安げに俯く彼女。やはり、その手の経験は一切ないらしい。
そんな彼女に、女性は慈しむような、だが抗いがたいトーンで告げた。

「安心しなさい。私が共にやろう。そなたは私の言う通りに進めれば良い」

いつの間にか、部屋の中央には手すりの付いた奇妙な椅子が置かれていた。

「まず男よ、こちらに座りなさい。」

促されるまま腰を下ろすと、即座に両手両足が固定された。
手すりに腕を縛り付けられ、足は大きく開かされたまま抵抗すら許されない、完全な「曝露」の体勢だ。

「では娘よ、この男の前に跪きなさい。」

雪乃ちゃんがおずおずと、椅子の前に用意された座布団に正座した。
彼女の目の前には、僕のそれがそそり立っている。
本当に初めて見るのだろうか。彼女は真っ赤な顔で、食い入るように僕の股間を凝視していた。

「お、お、思ったより、かわいいね……。こ、これなら、私でも大丈夫だ……」

声は震えている。自分に言い聞かせるような虚勢だった。
だが、ずっと好きだった女の子にそんな至近距離で見つめられ、僕のイチモツは期待と興奮を隠しきれず、先端から透明な先走りの液を滴らせていた。

「では、まず握るが良い。」

女性が雪乃ちゃんの手を取り、僕のモノへと誘導していく。
そして、彼女の柔らかく暖かい指先が、僕の熱い塊をギュッと握りしめた。

「っ!?」

あまりの衝撃に、脳が真っ白になった。
そのまま射精してしまいそうな感覚に襲われ、腰がビクンと跳ねる。
驚いた雪乃ちゃんが、反射的に手を離してしまった。

「ごめん!痛かった?大丈夫?」

心配そうに僕の顔を覗き込む。
その無垢な表情があまりに愛らしくて、僕の意識は、いや、雄としての本能が雪乃ちゃんへと向かおうとした。
だが、固定された拘束具がそれを強引に押し留める。

「男よ、落ち着くんじゃ。欲望に負けて、万が一この娘が清らかでなくなったら、そなたのそこは壊死するしかないぞ。」

穏やかな、だが逃げ場のない忠告。その言葉で、沸騰しかけていた頭が急速に冷えていく。
僕は今、恩人である彼女に対してなんて不埒なことを……。

「雪乃ちゃん、ごめん……」

情けなくて消え入りそうな僕の頭を、雪乃ちゃんは優しく撫でてくれた。

「大丈夫だよ。私が、絶対助けてあげるからね。」
彼女はもう一度座り直し、今度は迷いのない手つきで僕のそれを掴んだ。

「えっと、これからどうすればいいですか?」
「うむ。まずは包皮を剥き、亀頭を露出させよう。」

女性が雪乃ちゃんの手の上に自分の手を重ね、ゆっくりと皮を引き下げていく。
溜まりに溜まっていた我慢汁が、皮の隙間からどろりと溢れ出した。

「ふむ、潤滑剤は必要無さそうじゃな。では、ゆっくりとイチモツを扱くのじゃ。」

雪乃ちゃんの手が、ゆっくりと上下に動き始める。
彼女の手のひらが、剥き出しになった亀頭を、敏感な裏筋を、そして膨張しきった全体を刺激するたびに、脊髄を突き抜けるような快感が襲う。耐える間もなかった。

「ゆ、雪乃ちゃん!もう、出ちゃう……っ!」

僕の悲鳴のような声に合わせ、女性が小さな器を亀頭の先にぴたりと添えた。

「賢人くん、いいよ。出しちゃって。」

脳内に響く彼女の優しい声。
我慢汁でぬるぬるになったそこが、グチュグチュと卑猥な音を立てて扱きあげられる。
そして――。

「出ます……っ!」

ビュビュビュッ!と、猛烈な勢いで白濁液がほとばしった。
女性が手際よく器を操り、一滴も漏らさずに受け止める。
二人の女性に見守られ、晒されながら、僕の人生で最も恥ずかしく、そして凄まじい一回目の射精が終わった。

「まずはお疲れ様。」

女性は器の中身を確認し、満足そうに頷いた。
初めて他人の手で果てさせられた僕は、息も絶え絶えになり、ぐったりと椅子に身体を預けることしかできない。

これが、あと二回も続くのか……。
嬉しさと、あまりの過酷さに、意識が遠のきそうだった。
そんな僕の、ドロドロに汚れたイチモツを、雪乃ちゃんは濡れたタオルで甲斐甲斐しく、丁寧に拭き取ってくれていた。


普通なら、これほどの勢いで射精してしまえば男としての機能は一時的に沈静化するはずだった。
だが、股間の「それ」は萎えるどころか、先ほどよりもさらに充血し凶暴なまでの硬度を増してそそり立っている。

「……すごいね。おちんちんって、一回出したら小さくなるんだと思ってたけど……」

雪乃ちゃんが、信じられないものを見るような目で僕の股間を見つめる。
すると、小さな器の精液を確認していた女性が、重々しく口を開いた。

「これが、この悪霊の恐ろしさじゃ。三度の射精を完遂するまで、この強制的な昂ぶりは止まぬ。もし三度出し切れねば……このまま、この男の機能は文字通り『終わる』ことになる。」

機能の消失――。
女性の宣告に背筋が凍るが、僕のイチモツはそんな脅しなどどこ吹く風と言わんばかりに、ずっしりとした重量感を増していく。
僕の荒い呼吸がようやく整いかけたのを見計らい、彼女は次なる試練を口にした。

「次は『口淫』じゃ。つまり、口での射精を試みよ。」

口……?まさか、フェラチオ?あの清らかな雪乃ちゃんの口で、僕のこんな無様なモノを?
頭が拒絶反応と倒錯した興奮でパニックになる。
当の雪乃ちゃんも、あまりに飛躍した要求に言葉を失い、呆然と立ち尽くしていた。

「娘よ、この男を見捨てて帰ってもよいぞ。そなた自身は悪霊に取り憑かれてはおらぬ。形としては、ただ巻き込まれたに過ぎんからな。」

女性の言葉は冷酷なまでに正論だった。
いくら僕を心配してくれているとはいえ、好きでもない男のイチモツを口に含むなんて、嫌悪感以外の何物でもないはずだ。
助けてほしい、壊死したくないという本音はある。
けれど、ここで彼女に拒絶されたとしても、僕は彼女を責めるつもりはなかった。
さっきの射精感だけで、もう十分すぎるほど報われた……。

そう自分に言い聞かせ、諦めの境地に達しようとした時だった。

「いいえ……帰りません。」

雪乃ちゃんの、震えているけれど芯の通った声が静寂を切り裂いた。

「この掛け軸が破れたのは、私のせいなんです。賢人くんが私を庇ってくれたから、こんな目に遭っているんです。だから……最後まで、私がやります。」

彼女は再び僕のイチモツをギュッと掴み、退路を断つように、その覚悟を証明するように――熱を持った先端を、ぺろりと舌で舐め上げた。

「やり方を……教えてください。」

女性を見据える彼女の目は、羞恥を越えた決意に満ちていた。
情けなさと、申し訳なさと、それでも救われるような気持ちが一度に押し寄せてきて、ただ彼女を見つめることしかできなかった。

「では、竿の下から上まで舌で舐め上げるのじゃ。」

女性の淡々とした指導に、雪乃ちゃんは意を決したように「フーッ」と深く息を吐いた。
そして、ゆっくりと顔を近づけ、僕の竿の根元にその舌を這わせた。

「っ……!」

柔らかくて、温かい未知の感触。それが徐々に、じりじりと裏筋をなぞりながら上がってくる。

「亀頭の少し下に筋があるじゃろ?そこを舌先で何度も舐めるのじゃ。」

言われるがまま、彼女の舌がチロチロと裏筋を刺激する。
初めて味わう、脳を直接かき回されるような快感に身体が激しく震えた。
ついさっき放出したばかりだというのに、早くも二度目の射精の準備が整い始める。

「頃合いじゃな。思い切って亀頭をくわえ込むんじゃ。」

雪乃ちゃんは一瞬だけ、戸惑うように眉を寄せた。
けれど、小さく「えいっ!」と気合を入れるような声を漏らすと、意を決してパクッと僕の先端を咥え込んだ。

あの、ずっと遠くから眺めていた雪乃ちゃんが、僕のイチモツを口に含んでいる。
あまりの光景に呆然と彼女の顔を見つめていると、不意に上目遣いで、鋭く睨みつけられた。

(見るんじゃない!)

言葉には出さないが、その瞳がそう叫んでいる。僕は慌てて天井へと目を逸らした。
……だが、この光景だけは、脳内メモリーの最深部に永久保存しておこうと心に誓った。

「そのまま、くわえ込めるだけくわえ込むんじゃ。」

視界の端で、雪乃ちゃんが少しずつ、僕のモノを飲み込んでいくのが見えた。
ぬめぬめとした、熱い粘膜の感触がイチモツ全体を包み込む。
……雪乃ちゃんの口の中に、僕のすべてが収まっている。
この時ばかりは、自分のモノが小さくで本当に良かった、と本気で思った。

「くくく。小さいゆえに、余すところなく飲み込んでしまったな。」

女性が口元を押さえて、楽しそうに笑う。
雪乃ちゃんが頬を膨らませ、僕のモノを咥えたまま抗議するように女性を睨みつけた。

「すまんすまん。そのまま口でイチモツを出し入れするのじゃ。唾液はたっぷり出すんじゃぞ。」

じゅぼ、じゅぼっ……。

静かな社殿に、卑猥な水音が響き渡る。脳みそがとろけて、自分という存在が消えてしまいそうなほど気持ちがいい。
両手両足を固定されているのに、腰が勝手に、吸い込まれるように雪乃ちゃんの口へと動き出してしまう。

もう、限界だ。

「よし、先端部分を出し入れするように、唇を使って扱き上げるのだ。」

彼女の柔らかい唇が、何度も何度も亀頭を通過し、締め付ける。

「あ!出る……っ!」
「そのまま口で受けるんじゃ!飲み込むんじゃないぞ!」

女性の指示通り、僕は雪乃ちゃんの口内へ、二度目の衝動をすべて吐き出した。
雪乃ちゃんは一瞬、嫌そうな、苦悶するような表情を見せたけれど、決して口を離さず僕の熱い塊を受け止めてくれた。
腰が二度、三度と跳ね、ようやく長い射精が終わった。

雪乃ちゃんがそっと口を離すと、例の器に「……おえっ」と、溜まった精液を吐き出した。

「もー……まずいよぉ……」

涙目になりながら、ちょっと怒られてしまった。

「お疲れ様。これで二回目じゃな。」

女性は器の中身を確認し、淡々と告げた。
あと一回。
手、口……ときて、次は一体何が待っているのか。
すると、女性は僕の背後から、目隠しの布を回した。

「これは、見られると恥ずかしいからのう。」

視界が真っ暗に閉ざされる。
何も見えない不安と、それ以上の期待が、僕の胸の中で激しく波打っていた。


目隠しの向こうで、こそこそと密談するような低い声が鼓膜を揺らす。

「えっ!?そんなこと、するんですか?」

驚愕に震える雪乃ちゃんの声。それに対し、あの女性が淡々と、だが抗いがたい響きで追い打ちをかける。
「ここまで来たんじゃ。最後までやってしまっても良いのではないか?」

――最後。その言葉の意味するところを考え、心臓が爆ぜるほど跳ね上がった。まさか、本当に?

「……うぅ……」

雪乃ちゃんが唸るような声を漏らす。
そして、ついに彼女は腹をくくったようだった。

「……わかりました。やります。」

直後、僕の熱り立ったそこに、冷たくてぬるぬるした液体がたっぷりと塗布された。

「痛いといけないからのう。潤滑剤は多めじゃ。」

女性の指示に従い、雪乃ちゃんが僕のイチモツを愛撫するように何かを塗り込んでいる。
視界を遮られている分、肌に伝わる感覚は研ぎ澄まされ、期待と興奮が限界まで膨れ上がっていく。

そして、耳元で雪乃ちゃんの甘い吐息が聞こえた。

「賢人くん……いくよ?」

次の瞬間、僕のちんちんを、柔らかくて暖かい「何か」が包み込んだ。

「……動くよ?」

彼女の声と共に、その温もりがゆっくりと、粘り気のある摩擦を伴って上下に動き出す。

クチュ……クチュッ……。

静かな社殿に、密やかな水音が響く。
この滑らかな締め付け、そして熱。

(本当に……雪乃ちゃんと繋がっているのか……?)

まさか、こんな状況で童貞を喪失することになるなんて。
もう、今ここで死んでもいい。

「賢人くん、気持ちいい?」

少し荒くなった彼女の呼吸が、僕の首筋をくすぐる。

「う、うん……。最高に、気持ちいいよ……」

ピッチが速くなる。
三度目の、そして最後の射精に向かって、快楽の階段を一気に駆け上がっていく。
クチュクチュと卑猥な音が加速し、脳が真っ白に染まる。

「ごめん……雪乃ちゃん、出ちゃう……。」

一瞬の間。そして…。

「うん、いいよ……。出して。」

その一言が、最後のトリガーだった。
外に、外に出さなきゃいけない。そう思っているのに、快楽の奔流には勝てなかった。

「い、イクッ!!」

全身が激しく痙攣し、どくん、どくんと精液が尿道を駆け抜ける感覚が全身に伝播する。
僕は、雪乃ちゃんの中に、すべてを吐き出してしまった。

「気持ちよかった?」

雪乃ちゃんの声。それと同時に、目隠しが外された。
光に慣れない目で見たのは、儀式の前と変わらず、服をきちんと着たままの彼女の姿だった。

(え……?)

頭が混乱する。よく見ると、雪乃ちゃんの手には、何かグニグニとした肉色の物体が握られていた。

「そ、それは……?」

彼女が右手のそれを器に傾けると、トロリと僕の精液が流れ出した。

「それはな、女陰に似せて作られた道具じゃ。」

女性の言葉に、呆然と口を開けることしかできない。
つまり、僕が「彼女」だと思い込んで絶頂を迎えたのは、ただの……オナホ?

「もしかして、本当に私とエッチしてると思った?」

雪乃ちゃんが少し顔を赤らめ、悪戯っぽく笑う。

「だとしたら、大成功じゃな。」

女性も満足げに器に蓋をした。

「忘れたのか?この娘が清らかでなくなったら、お前に取り憑いた悪霊を引き剥がすことはできぬと言ったはず。」

……確かにそうだ。
最初から雪乃ちゃんと…繋がれるわけがなかったんだ……。

「だがな、本当に性交していると錯覚させる必要があったのじゃ。精神的な満足感がなければ、呪いは解けぬからな。だからこその目隠しじゃよ。」

「はぁー……っ……」

本気でがっかりしてしまった。
期待が大きかった分、全身の力が抜けて、椅子にぐったりと沈み込む。

「……そんなに、私とエッチしたかったの?」

雪乃ちゃんのストレートな質問に、僕は答える言葉を持たなかった。
ガックリと頭を落としたとき、ふと気づいた。

「あ、小さくなってる……」

あんなに頑強で、二度放っても収まる気配がなかったイチモツが、今は見る影もなく小さく萎れ、皮の中に身を潜めていた。

「本当だ。」

雪乃ちゃんが覗き込む。

「ふふ、本当に小さきイチモツじゃな。呪いが解ければ、本来の姿に戻るというわけか。」

女性まで器をいじりながら観察してくる。

「あ、あんまり見るなよ……っ!」

急に恥ずかしくなり、手で隠そうとして……自分がまだ両手両足を固定されていることを思い出した。

「おっと、忘れておった。もう外して良いぞ。」

女性の許しを受け、雪乃ちゃんが拘束を解き始めた。……なぜか、足のほうから。

「私だって、相当恥ずかしい思いしたんだからね。もうちょっと、その小さいの晒しておきなさい。」

そして、両手の自由を取り戻す直前。彼女は思い出したようにスマホを取り出した。

「はい、チーズ。」

カシャッ。

「お、おい!何やってるんだよ!」

慌てる僕に、雪乃ちゃんは悪戯っぽく画面を見せてきた。
見せられた画面には、股間を無防備に晒した情けない僕の姿が映っていた。

「私が恥ずかしいことしたとか、まだ経験してないとか言いふらしたら、これバラまくからね?」

そう言って笑う雪乃ちゃんの顔は、困るくらい楽しそうだった。

どうやら、呪いからは解放されたようだ。
ひとまず、命に関わるような危機は去ったらしい。


事後処理を終え、僕は改めてその女性に向き直った。

「……本当に、呪いは解けたのですか?」

問いかける僕に対し、彼女は先ほど三度の射精を受け止めた器を静かに差し出した。

「うむ。そなたに取り憑いていた悪霊は、三回の精液に分けてこの中に封印することができた。」

あの中に、自分の精液が溜まっている。
そう思うと、少し……いや、かなり気まずく、どこか汚らわしいような感覚が拭えなかった。
だが、彼女の次の言葉がその疑念を吹き飛ばした。

「あとはこれを浄化すれば、無事、成仏させることができるじゃろう。」

彼女は器を傍らに置くと、僕の手をそっと、だが力強くギュッと握りしめた。

「本当に、ありがとう。そなたのおかげで……掛け軸に封じられ、成仏できずにいた私を救ってくれた。」

え……?私?

「それって、どういう……」

「すまんが、時間が無いのじゃ。少しだけ、お使いを頼まれてくれ。」

僕の質問を遮るようにして、彼女は古びた一枚の紙を差し出してきた。
そこには、ある寺の名前と住所が記されている。偶然か、それとも何かの因縁か――。

「ここに、この器を持って行ってくれ。この手紙と共にな。」

彼女が手渡してきた器は、中身が漏れないよう、そして二度と開かぬよう、厳重な封印が施されていた。

「別にかまいませんけど……」
「はい。住所を見ると、私たちの家からも近いみたいですし。」

雪乃ちゃんも横からスマホで位置を確認し、頷いた。

「ありがとう。……くれぐれも、その器を開かぬようにな。」

それが、彼女の最後の言葉だった。
言い終えた瞬間、彼女の姿は陽炎のように「すっ」と掻き消えた。
それと同時に、清浄だった社殿の空気が一変する。

「え……っ!?」

雪乃ちゃんの短い悲鳴。
目を開ければ、そこはあの肝試しの夜に見た、埃っぽくて薄汚れた廃屋に戻っていた。
鮮やかだった朱塗りの柱も、今では色褪せ、朽ち果てている。

僕と雪乃ちゃんは、顔を見合わせたまま立ち尽くした。
手元に残された、ずしりと重い「封印された器」だけが、先ほどまで起きていた出来事が夢ではなかったことを物語っていた。


エピローグ

雪乃ちゃんと共に、地図が示す古刹の門をくぐった。
境内を包む静謐な空気の中、現れた住職にあの女性から託された手紙を差し出す。

「なるほど……。左様でございましたか。」

手紙を一読した住職は、深く納得したように頷いた。

「では、そちらの器をお預かりいたしましょう。」

ずっしりと重い、三度の射精を封じ込めた器を住職の手へと渡す。
「少々お待ちください」と言い残して奥へ消えた住職が、やがて古い和紙に包まれた「何か」を手に戻ってきた。

「こちらをお受け取りください。あの方からの預かりものでございます。」

促されるまま包みを開くと、そこには鈍い黄金の輝きを放つ一枚の「小判」が鎮座していた。

「これは……?」

「はい。当寺には代々伝わる話がございます。かつて、男の性器を切り裂き人をあやめる『鬼』となった女の物語です。」

やはり、あの掛け軸の……。

「その者は鬼と化す直前、当寺に駆け込んだと伝えられています。『私はやがて鬼になる。もし私が死んだ後、私を成仏させてくれる者が現れたなら、これを渡してほしい』と。」

ゴクリと唾を呑み込む。
彼女は自分が呪いの元凶になることを悟りながら、未来に現れる「救い手」を信じて、この報奨を遺していたのだ。
だからこそ、あの器をここに届けるよう仕向けたのか。

だが、僕と雪乃ちゃんは、示し合わせたように顔を見合わせた。
浮かんだ思いは、二人とも同じだった。

「……いえ、これは受け取れません。どうか彼女と一緒に、手厚く埋葬してあげてください。」「……ええ。きっと、あの世でもお金は必要でしょうから。」

少しだけ「もったいないかな」という俗世の未練がよぎらなかったと言えば嘘になる。
けれど、それ以上に彼女の魂が安らかであってほしいと、心からそう思えた。

「左様でございますか。では、先ほどの器と共に、責任を持って浄化し、供養させていただきます。」

住職は深く、深く頭を下げ、小判と共に本堂の奥へと消えていった。

「……さあ、帰ろうか。」

隣に立つ雪乃ちゃんに声をかける。

「そうね。さすがに疲れちゃった。」

ふっと肩の力を抜いた彼女が、僕の手を不意にギュッと握りしめた。

「その前に、お肉でも食べにいかない?賢人くん、さっき『いっぱい』出して、精力が足りなくなっちゃったでしょ?」

ドキン、と心臓が跳ね上がる。
耳元で囁かれた小悪魔的な言葉に、顔が熱くなるのを感じた。

あんなに恐ろしく、恥ずかしい出来事の連続だったけれど、気がつけば僕と雪乃ちゃんの心の距離は、以前とは比べものにならないほど縮まっていた。

繋いだ手の温もりを確かめるようにギュッと握り返し、僕たちは夕暮れに染まる帰路へと歩き出した。

END


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