社会人になって数年。
恐ろしいほどに出会いがない。
今の職場は男ばかり。職場恋愛なんて夢のまた夢。
学生時代の友人とは疎遠になり、ナンパなんてとてもできる性格じゃない。
「はぁ……子どもの頃は、大人になれば自然に結婚できるもんだと思ってたのになぁ。」
外を歩けば、そこかしこにカップル。
みんなどこで出会ってるんだろうか。
大学時代、もう少し頑張っておけばよかった。
そんな中、同僚が結婚した。
俺と似たような環境だったはずなのに、一体どこで相手を見つけたんだ?
後日、そいつと飲みに行く機会があったので、思い切って聞いてみた。
「お前さ、どこで出会ったんだよ……。しかも、奥さん結構美人だったじゃん。」
正直、結婚式では嫉妬で心が燃えた。
「いやいや、俺の結婚式にうちの嫁の友達けっこう来てただろ?独身の子も多かったぞ。誰一人連絡先交換しないお前が悪い。」
そんな正論聞きたくない。
「だってさ……お前の嫁さんの友達、美人多かったじゃん。俺が話しかけられるわけないだろ……。」
「はぁ……分かった分かった。じゃあ、お前でも結婚できるかもしれない情報をひとつ教えてやる。」
その一言で、酔いが一気に覚めた。
やっぱり、持つべきものは仕事ができる同僚だ。
「お願いします!今日の代金は俺が出しますから!」
「気持ち悪いから敬語やめろ。」
同僚は苦笑いしながら、ポケットからメモを取り出し、電話番号を書いて渡してきた。
「ここに電話しろ。結婚相談所なんだけど、今のお前でもなんとかなるかもしれん。」
結婚相談所か……。
正直、一度くらい行ってみようかと思っていたところだった。
結婚できた同僚が勧めるなら、ちょっとは期待していいのかもしれない。
よし、明日電話してみよう。
電話をかけると、女性の声が返ってきた。
「一度、当社にいらっしゃいませんか?」
どうやら、ネットで完結するタイプではなく、実際に会社へ出向いて、そこで個人情報の登録をするシステムらしい。
今どきとしては、ちょっと珍しいかもしれない。
とはいえ、どうせ暇だし──行ってみるか。
教えられた住所をWEBマップで確認してみる。
「結構近くだな。」
そう思って、早速、次の日曜日に予約を入れた。
当日、指定された住所のビルに着いた。
各フロアに別々の会社が入っている、よくある雑居ビルだ。
その中のひとつに、件の結婚相談所がある。
「ちょっと緊張してきたな……。」
エレベーターで目的の階に上がると、「結婚相談所」とだけ書かれたシンプルな扉が目の前に現れた。
「怪しいな……大丈夫かこれ。壺とか買わされたら同僚恨むぞ?」
そんな冗談混じりの警戒心を抱きつつ、恐る恐る扉を開けてみる。
──思っていたより、ずっとキレイな内装だった。
というより、完全に女性向け。
明るくて清潔感があり、落ち着いた雰囲気が漂っている。
「こんにちは。」
柔らかい声で迎えてくれたのは、30歳前後に見える美人の女性。
落ち着いた雰囲気と優しげな笑顔が印象的だ。
「中村様ですね。お待ちしておりました。」
そう言って、丁寧に頭を下げられた。
つられて、こちらも思わずぺこりと頭を下げてしまう。
「本日は私、横山が担当させていただきます。」
――さて。
ここから、どんな展開が待っているのだろうか。
「中村様はご結婚をご希望ですね。それでは、こちらのプロフィールの入力をお願いします。」
そう言って、横山さんはタブレット端末を差し出してきた。
名前に住所、最終学歴、現在の職業、年収──
ごく一般的な内容から始まるプロフィール。
ぽちぽちと入力を進めていくうちに、次第に項目はよりプライベートなものに変わっていった。
恋愛経験、性経験──
「……あの、このあたりも、やっぱり入力しないとダメでしょうか?」
思わず尋ねると、横山さんはそっとタブレットをのぞき込み、落ち着いた口調で答えた。
「はい、できる限り正直にお答えください。嘘をついて、後々お相手の心証を悪くすることは、結果的に中村様にとってもマイナスになってしまいます。」
――まぁ、それはそうか。
仕方ない。ここは腹を括るしかない。
恋愛経験「なし」。
当然、性経験も「なし」。
……虚しい入力だ。
だが、そんな気配を察したのか、横山さんはふっとやわらかく微笑んで言った。
「ご心配なさらないでくださいね。実は20代男性のうち、30〜40%は童貞というデータもありますし、童貞の男性を好まれる女性もいらっしゃいますよ。」
……はっきり“童貞”って言われてしまった。
そのうえでフォローはしてくれるけど、実際のところ、最終的には“頼りがいがない”って思われるんじゃないか……そんな不安がよぎる。
でも、もうここまで来たら、横山さんに任せるしかない。
全ての入力を終えて、タブレットを返す。
横山さんは確認しながら、ふと顔を上げて尋ねてきた。
「念のために確認ですが、ソープなどの“挿入を伴う風俗”に行かれたことはありますか?」
「……ないです。」
「なるほど。純粋な童貞ですね。」
……そうか、“純粋な童貞”って言うんだ、これ。
もちろん、行こうと思ったことくらいは何度もある。
でも、いつもギリギリで勇気が出なかった。
──そういうところも、きっと、彼女ができない原因なんだろうな。
「はい、ありがとうございます。では、続いて“身体測定”に入らせていただきますね。」
そう言って、横山さんは手元のベルを“チリーン”と鳴らした。
すると、横の扉が静かに開き、紺色のスクラブを着た若い女性が現れた。
爽やかな笑顔で、一礼。
「山田と申します。本日の身体測定を担当させていただきます。どうぞ、こちらの部屋へ。」
身体測定……なんてものが、あるのか。
部屋に通されると、椅子に腰かけるよう促された。
それほど広くない部屋だが、清潔感があり、やはり女性向けの空間という印象が強い。
「まずは、詳しくお話を伺いますね。えっと……あら、童貞さんですね。」
──また、言われた。
コンプレックスではあるが、こうもあっさり言葉にされると、何とも言えない気分になる。
「ご安心ください。こちらにいらっしゃる男性の半分は童貞さんです。それでも、皆さん満足のいく結果を迎えられていますよ。」
そう言われると、少し気持ちは軽くなる。
……もう、信じるしかない。
「はい、よろしくお願いします。」
「では、いくつか質問させてください。
最近、いつ射精されましたか?」
一瞬、言葉の意味が飲み込めなかった。
射精……?今、それを聞くのか?
「童貞さんですので、最後に自慰された日ですね。──オナニーです。」
にこやかな笑顔のまま、さらりと告げる。
「あ、夢精の可能性もありますね。でも、オナニーで射精されていますよね?だいたいいつ頃でしたか?」
可愛らしい顔立ちの女性に、そんなことを聞かれるとは思っていなかった。
こっちが恥ずかしくなってくる。
「え、えっと……昨日です。」
「そうですか。でしたら、少し“薄い”かもしれませんね。」
……薄い?精子が?
「それで、オナニーの方法ですが、手ですか?床ですか?それとも、オナホールなどをお使いですか?」
仕事とはいえ、この人……すごいな。
録音しておけば、あとでネタになったかもしれない。
「あ、はい。手で……。」
「やり方は、握って上下に動かす感じですか?それとも、両手でこするようにされますか?」
両手でこする?
そんなやり方があるのか?初耳だ。
「あっ、えっと……普通に右手で握って、上下に動かします……。」
──本当にこれが、結婚に繋がるのだろうか?
藁にもすがる思いとはまさに今のことだが、
それでも、この“藁”を掴んで本当にいいのか、不安になってくる。
「ありがとうございます。では、身長と体重を測ります。靴下だけ脱いでください。」
ようやく、問診が終わったらしい。
……結局、射精のタイミングとオナニーの方法しか聞かれていない気がする。
困惑しながらも指示に従い、靴下を脱いで身長計のほうへと歩き出した。
身長と体重の測定は、あっさり終わった。
ようやく少しホッとできるかと思ったその時──
「では、続きまして“陰茎”のデータに入らせていただきますね。」
……い、陰茎?
「陰茎……ですか?」
思わず聞き返してしまった。
「はい、ペニス……おちんちんですね。ちんこ、とか、ちんぽこ、とか言われたりもします。人によっては、“おちんぽ”って言うと喜ばれる方もいるみたいですよ。」
笑顔。
本当に、満面の笑顔で、彼女はそう言った。
──何を言ってるんだこの人は。
陰茎が“ちんこ”だってことくらい、さすがに俺だって知ってるわ。
「いや、そうではなくて……。その、“そこ”の検査なんて、本当にするんですか?」
思わず言葉を選びながら尋ねると、山田さんは少し照れたように、右手を頬に添えて答えた。
「あっ、すみません。勘違いをしておりました。中村様は“お子様をご希望”とのことでしたので、きちんと子どもが作れる状態かどうかの検査をさせていただきます。同時にお相手の女性に、安心していただくためでもあります。」
──たしかに、それは理にかなっている。
最近では、不妊の原因が男性側にあるケースも珍しくないと聞く。
相手のためにも、自分のためにも、知っておくべきことかもしれない。
「わかりました。よろしくお願いします。」
「ここからは、私と──横山の二人で検査を担当いたします。」
……二人?
あの横山さんって、さっきの……あの、美人の?
「山田さん一人ではダメなんですか?」
そう尋ねると、山田さんは少し申し訳なさそうな表情を浮かべながら答えた。
「はい、実は以前、私ひとりで対応していた際に“暴走”された方がいまして……。」
なるほど……そういうことか。
たしかに、密室で一対一の空間は、状況によっては危険を孕むのかもしれない。
──とはいえ、病院なんかでは、普通に女医さんと一対一になることもあるんじゃ……?
そんな疑問が浮かびかけたその時。
ガチャッという音とともに扉が開き、横山さんが入ってきた。
──もう、これ以上の質問を挟む余地はなさそうだった。
「ここからは、私と山田の二人で検査に入ります。その前に、こちらを読んでサインをお願いします。」
そう言って、渡されたのは一枚の紙──同意書だった。
要するに、個人情報の取り扱いについての説明書きってやつだな。
一応、ざっと目を通しておくか。
……ん?
「……あれ? これ、写真や動画の撮影をするんですか?」
視線が止まったのは、少し気になる一文。
「はい。場合によっては、お相手にお見せする可能性もございます。もちろん、拒否していただいても問題ありません。」
なるほど……そう来たか。
まぁ、撮られて困るほど立派な身体でもないけど、
変な使われ方をしたらたまったもんじゃない。
「ちなみにですが、お相手の女性が閲覧を希望された場合は、中村様にも“お相手女性の画像や動画”をご覧いただけます。」
……なるほど。
見るには、見られるリスクを背負え、というわけか。
てことは、女性側も、同じような検査を受けてるってこと?
「これって、女性も“身体測定”を受けてるってことですか?」
「はい。男女問わず、同様に受けていただいております。」
そういうことか。よし、それなら──
「画像と動画の撮影、許可でお願いします。」
もしかしたら、なんてね。
「ちなみにですが、男性側が希望しても、女性側の画像や動画を一方的に見ることはできません。あくまで、女性側が希望した場合のみ、男性もご覧いただける形となっております。」
……まぁ、そりゃそうだ。
そういう制度にしておかないと、片っ端から覗こうとする男も出てくるだろうしな。
「はい、問題ありません。」
そう答えながら、心のどこかで――
いい人と、出会えたらいいな……そんなことを思っていた。
「では、こちらでズボンと下着を脱いでください。」
そう言って差し出されたカゴ。
脱いだ衣類は、そこに畳んで入れろということらしい。
よし。
恥ずかしいけど……ちゃんと調べてもらって、きちんと子どもを作れることを確認しよう。
そう思って意を決し、山田さんと横山さん、二人の女性に見守られるなか──
後ろを向いて静かに、ズボンとパンツを下ろした。
パンツを下ろした瞬間、ぷるんと音を立てるように現れた、自分の陰茎。
「はぁ……。」
思わず、小さくため息が漏れた。
──やっぱり、小さい。
しかも、しっかり皮もかぶっている。
女性に対して積極的に出られない理由は、たぶん、ここにもある。
いざそういう場面になって、がっかりされたら……
それどころか、笑われたり、バカにされたりしたら──もう、立ち直れないかもしれない。
手で前を隠しながら、そっと二人の女性のほうを振り返った。
「あのですね、出来れば……笑ったりしないでください。」
精一杯の、勇気を振り絞った言葉だった。
山田さんは、変わらぬ笑顔でやさしく答えた。
「大丈夫ですよ。そこも、ちゃんと“個性”です。もし本当に問題があるようでしたら、専門の病院もご紹介できますから。」
……病院か。
できれば、それは避けたい。
でも、もしこれで“子作りに問題がない”とわかれば、
ほんの少しだけ、自信が持てるかもしれない。
がんばろう。
ここで逃げてたまるか。
深く息を吸って──二人の前で、そっと、手を離した。
人生で初めて、自分のそれを女性に見せた。
しかも相手は、美人の女性が二人。
目をギュッと閉じて、反応を待つ。
「見せてくれてありがとうございます。かわいいおちんちんですね。」
山田さんの、やさしい声が耳に届く。
……かわいい、か。
ありがたいような、素直に受け取れないような、なんとも言えない気持ちになる。
「では、こちらに来てください。サイズの計測から入らせていただきます。」
横山さんが声をかけ、手で軽く誘導してくれる。
「足のマークに合わせて立ってください。撮影も開始します。」
床には、肩幅くらいに足を開くための“足跡マーク”が描かれていた。
……いざ撮影となると、やっぱり恥ずかしい。
でも、ここまで来たらもう仕方がない。
指示どおり足跡に立つと、山田さんが軽く身体の向きを調整してくれた。
彼女の視線の先には、今まさに“ちんちん”があるわけだが──
その様子に、まったく動揺は見られない。
まるで、日常の業務であるかのように淡々としていた。
……やっぱり、たくさんの“本数”を見てきたんだろうな。
自分より年下に見える山田さんが、
なぜか、とても“大人”で“上の立場”に見えてしまった。
「撮影、開始しました。では、サイズの測定に入りますね。まずは“通常時”です。」
山田さんは素手で陰茎をつかみ、定規のような器具をあてて計測をはじめた。
──これが、はじめて女性に触られるというやつか。
しかも、年下の、かわいらしい女性に。
妙な満足感のようなものが、じわりと込み上げてくる。
「5cmなのですが……中村様は“包茎”ですね。しかも、皮が少々“あまり気味”です。」
皮が……あまり気味。
分かっていたことだが、あらためて“かわいい女の子”に指摘されると、やはりダメージが大きい。
さっきまで触られて浮かれていたのに、
今は指摘されてしょんぼりしている。
──我ながら、メンタルが不安定だなぁ……。
その様子を見ていた横山さんが、ふっと笑みを浮かべて口を開いた。
「ごめんなさいね。この子、真面目すぎて、気になるところはすぐに指摘しちゃうの。でも、それだけ真摯に取り組んでる証拠だから、許してあげてくださいね。」
「ご、ごめんなさい!つい……!」
山田さんも、つられて慌てて頭を下げる。
「でもですね、中村様。これは、良い機会だと思いますよ。ご自分の“ペニス”と、一度きちんと向き合ってみてはいかがでしょうか。」
──たしかに、そうかもしれない。
小さいとか、皮をかぶっているとか、悩んでばかりいるよりも、今こうして客観的に“知ること”が大事なのかもしれない。
「……わかりました。山田さんも横山さんも、気になったことは遠慮なく言ってください。」
少しだけ、自分自身に向き合える気がした。
そして、ほんの少しだけ──自分に自信が持てたような気もした。
山田さんの視線が、再び俺の“ちんちん”に注がれる。
「こちらは、剥けますか?」
「はい、手でなら……剥くことができます。」
そう答えた瞬間、山田さんがすっと手を伸ばし──
包皮を、くるっとめくった。
「おふっ!」
変な声が漏れてしまった。
少し腰が引けてしまうが、山田さんの手はしっかりと掴んだまま。
彼女は真剣な表情で、それをじっと見つめている。
くるっ、くるっ──
包皮を戻したり、また剥いたり。
そして再び、定規があてられた。
「剥くと4cmですね。やはり平均よりはだいぶ小さいですが、問題はなさそうです。」
……やっぱり、小さいのか。
心が折れそうになる。
でも、なんとか堪える。
そんな俺の気持ちを察したのか、山田さんは顔を上げて、にこりと優しく微笑んだ。
「包茎の程度も、手でツルッと剥けるので“仮性包茎”ですね。日本人で一番多いタイプです。全く問題ありません。」
……これは、良いことなのかもしれない。
小さいけど──一応、“健常なちんちん”ではあるのか。
「通常時の大きさはわかりました。では、次は“勃起時”の大きさなのですが……私が触っても、特に反応はなかったですね。」
たしかに。
ここまでの状況を考えれば、
かわいい子に触られて、剥かれて、見られて──
勃ってもおかしくないはずだ。
「昨日、自慰をなされたんですよね?でしたら、肉体的な問題ではなく“精神的な要因”かもしれませんね。」
横山さんもじっと見つめながら、落ち着いた声で言う。
……二人の美人に見られて、剥かれて、触られて──なのに、反応がない。
──ムスコよ……頼む。
今こそ……その力を見せてくれ。
「反応、なさそうですし……ローション、使いましょうか。」
山田さんが静かにそう呟いた。
ローション……使ったことはない。
正直、少し楽しみな自分がいた。
彼女の手に、とろりと透明なローションが垂らされる。
「では、いきますね。刺激が強いようでしたら、遠慮なくおっしゃってください。」
そう言いながら、山田さんの細い指がふたたび俺の“それ”に触れる。
そして今度は、包皮をしっかりと剥き──
亀頭を、くるくると撫で始めた。
普段、厚い皮に包まれているあの場所が、
ローション越しにダイレクトに刺激を受けている。
「ちょっ……ちょっと、まずい!」
一瞬で反応が出た。
まるで反射のように、陰茎はぴんと勃起してしまった。
「あらあら。」
山田さんが少し驚いたように、しかし笑うでもなく落ち着いて呟く。
……精神的な要因とは、なんだったのか。
さっきまで動かなかった“それ”が、今は完全に硬くなっている。
我ながら──困惑してしまった。
「では、勃起時のサイズを測りますね。えっと……8cmですね。やはり平均よりは小さいです。それと──」
そう言いながら、山田さんは包皮を先端にふわりと被せた。
「やはり“重度の仮性包茎”ですね。手術の必要はありませんが、清潔さはしっかり保ってくださいね。」
……重度。
その言葉に、胸が少し締めつけられた。
「あの、重度って……大丈夫なんですか?」
思わず、確認するように聞き返す。
「はい。先ほども申し上げた通り、手で剥けますので、問題はありません。」
──そうか。
問題ないのか。
それは……よかった。
でも、“重度”という言葉が、じわじわ心に刺さる。
すると今度は、横山さんがそっと手を添え、
自然な動きで包皮を下げて、先端をむき出しにしてくれた。
「ちゃんと剥けるんですから、こちらが“当たり前”だと思った方がいいですよ。勃起したら剥ける、でも被せることも可能──と。」
確かに、その通りかもしれない。
少しずつ、気持ちが整理されていく。
……にしても、今、普通に触られたな。
しかも、自然すぎて変に意識しそうになる。
──正直、ちょっと気持ちよかった。
剥いてもらえるなら、包茎でもいいんじゃ……いやいや、そういう話ではない。
「ありがとうございます。もっとポジティブに考えていきます。」
ようやく、少しだけ前向きな気持ちになれた気がした。
「では、最後ですね。“射精機能”の確認と、“精子の検査”になります。」
──まぁ、そうなるよな。
結婚を前提とした検査なら、避けて通れない。
「昨日自慰をなされたようですので、少し“薄い”かもしれませんが、問題はなさそうですね。」
……問題ない、のか?
少し気になるけど、そう言うなら、まぁいいか。
「では、こちらにお願いします。」
そう言って、山田さんが差し出してきたのは──
小さなトレイ。
……これって、つまり──自分で出せってことか?
そりゃそうだろうけど……
思わず、あからさまにがっかりした表情をしてしまったらしい。
山田さんは、そんな俺の顔を見て、クスッと笑った。
「横山さん、たしか郵便局に行くご用事がありましたよね?」
え……?
突然の話に“?”を浮かべていた横山さんも、すぐに察したようだった。
「あー、そうですね。郵便、出さなきゃいけませんでしたね。少し外しますね。」
そう言って、少しわざとらしく部屋を後にする。
……え?
「本来は“ご自身”でしていただくのですが、今回は“特別”に、私が“触らせていただきます”。」
──まさか、山田さんが?
まさか、そんな──
……テンション、上がる。
「カメラが動いていることは忘れないでくださいね?」
そんな期待を射抜くように、山田さんが軽く釘を刺してきた。
──はい、気をつけます……!
再び、山田さんはローションを手に垂らした。
「気持ちよくしてあげたい気がないわけではないんですが……それは、将来の彼女さんにお任せしましょうね。」
そう言いながら、彼女の手が静かに触れてくる。
「あらあら、こんなに硬くなって……。平均よりは小さいけど、硬さは抜群ですね。将来の彼女さん、きっと喜びますよ♡」
その言葉とともに、彼女の手の動きが速くなる。
親指で亀頭の先端を軽く押さえ、残りの指で竿を包み込みながら、上下に滑らせていく。
ローションが潤滑を高め、動きに引っかかりはない。
摩擦がちょうど良い刺激になり、快感へと変わっていく。
息が荒くなり、身体が勝手に震える。
耐えようとしても、もう限界が近い。
「で、出そうです……。」
そう告げると、山田さんは手を止めず、むしろさらにテンポを上げながら微笑んだ。
そして、ちょうどその瞬間──
耳元で、囁くように言った。
「いいわよ、出して。小さいおちんちんから出すところ、見せなさい? 全部、ちゃんと私に見せて♡」
その言葉が引き金になった。
短小なペニスがビクビクと痙攣し、8cmの先端から白濁が勢いよく迸る。
一度、二度、三度……銀色のトレイの上に、すべて吐き出された。
山田さんの手はその間も優しく動き続け、
最後の一滴までしっかりと搾り取るように、根元を包み込む。
「お疲れ様でした。」
そう言って、天使のような笑顔でこちらを見た。
「たくさん出ましたね。よく頑張りました♡これで検査は完了です。少しは、自信……持てましたか?」
──十分すぎるほどだった。
「あ、ありがとうございました。」
そう答える声が、少しだけ震えていた。
まるで待っていたかのように、横山さんが部屋に戻ってきた。
手には洗面器とタオルを持っている。
「私がキレイにしてあげるわ。山田さんは手を洗って、精子の検査に移ってください。」
──郵便局に行く、っていう設定はもうどうでもよくなったらしい。
横山さんはタオルを湿らせ、丁寧に拭き取ってくれた。
その手つきはどこまでも落ち着いていて、どこか優しさすら感じる。
「気持ちよかったですか?今回限りの“内緒”ってことで、よろしくお願いしますね。」
……まぁ、言えるはずもないよな。
口が裂けても。
それにしても──
横山さんも、やっぱり美人だ。
そんな人に“ちんちん”を洗ってもらえるなんて……
幸せすぎるシチュエーションだ。
そっと顔を見上げるようにすると、
自然と視線は彼女の胸元に向かってしまった。
──あ。
制服の胸元が少し開いていて、そこからブラジャーが見えている。
それだけならまだしも、あまり大きくない胸のせいか、
ブラの隙間から……“先端”まで、わずかに見えてしまっていた。
「……中村さん?」
ふいに名前を呼ばれる。
……気がつくと再び、大きくなってしまっていた。
そのタイミングで、山田さんが戻ってくる。
まさに“絶妙”と言うべきか、“最悪”と言うべきか──
「あら、また大きくしているんですか?今度は“ご自分で”お願いしますね。」
──さすがに、二回目はなかった。
それから、しばらく落ち着くのを待ってもらい──
精子の検査結果を聞かされることになった。
「精子は元気いっぱいでした。全く問題ありません。」
その一言に、思わず肩の力が抜けた。
……ホッとした。
「これで、今回の検査はすべて終了になります。
この情報をもとに、マッチングを進めていきますね。」
──そうだった。
ここは、結婚相談所。
本来の目的は、出会いを見つけることだったんだ。
途中、色んな意味で濃すぎる体験をしたけれど、
今は、ほんの少しだけ自信が持てた気がする。
「マッチングが完了しましたら、あらためてご連絡いたします。」
そう言われ、丁寧に頭を下げてから、相談所を後にする。
頬をなでる風が、少しだけ心地よく感じられた。
──希望を胸に、俺は家路についた。
エピローグ
マッチングが成功し、ついに女性と会うことになった。
──結婚相談所のケアは、想像以上だった。
ファッションの基礎からデートコースの選び方、
エスコートの仕方や会話の流れまで、徹底的にたたき込まれた。
もちろん、「自分で継続できるように」と。
一時的な変化ではなく、根本から変われるように。
……その分、料金はとんでもなかった。
検査の段階ではさほどでもなかったが、
マッチング後のサポートとデート指南は、目玉が飛び出るような金額だった。
それでも──ちゃんと、自分で了承して、払った。
以前の俺とは違う。
そう思えるだけの自信が、今はある。
ちなみに、お相手の女性は俺の“画像や動画”を確認してくれたらしい。
だが、俺は“見る権利”を放棄した。
──きっと、大丈夫。
あの恥ずかしい経験があったからこそ、今、こうしてここにいられる。
そろそろ、待ち合わせの時間だ。
腕時計を見ながら、ソワソワと胸が騒ぐ。
そして──
「あの、中村さんですか?」
END


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