【創作羞恥小説】混浴サウナの出来事

お姉さん(CMNF)

フィンランドに住む友人を訪ねて、私は一週間の休暇を利用して旅に出た。

ヘルシンキ大聖堂やマーケット広場、スオメンリンナ島──定番の観光地を巡り、数日でけっこう満足していた。

そんなある日、地元在住の友人が「面白い場所があるんだけど行ってみる?」と誘ってくれた。

着いたのは、観光地から少し外れた静かな町の外れ。古い木造の建物の横には、白い湯気がもくもくと立ち上っている。
「ここ、地元の人しか来ないサウナなんだ。日本の感覚だと驚くかもしれないけど、すごく気持ちいいよ」と友人が笑う。

受付で簡単な説明を受けたあと、ふと渡されたバスタオルに手を伸ばしかけた私に、友人が言った。

「ちなみに、ここではタオル巻くの、マナー違反だから。どうする?」

私は思わず手を止めた。

「……え、ほんとに?」

「うん。でも更衣室は男女別だから安心して。あと、中に入っちゃえば、誰も気にしないよ。旅の恥は掻き捨てって、言うでしょ?」

その一言に背中を押される形で、私は更衣室へ向かった。

案内された更衣室は、確かに男女別だった。
中に入ると、ベンチとロッカー、そしてシャワーがあるだけの簡素な空間。

マリ──友人の名前だ──は当然のように服を脱ぎ始める。

「ね、あんまり変に隠そうとしないほうがいいよ。そっちのほうが逆に恥ずかしいから。」

そう言いながら、全裸でタオルを肩に掛けて、さっぱりした顔で振り返ってきた。

私はといえば、上着を脱いだところで手が止まってしまった。
下着を脱ぐのに、こんなに時間がかかったのはいつぶりだろう。

ちらっと鏡に映った自分を見て──ふと思った。

(下の毛……全部処理しとけばよかったかな。)

なんとなく、気になってしまう。周りの人はきっと金髪なのに、私のは黒くて濃い。
日本では普通だと思ってたのに、ここでは浮いてしまうんじゃないかって。

ごくんと小さく喉を鳴らして、私は下着に手をかけた。

着替えを済ませてシャワーを浴びると、マリは私のほうを軽く手で招いた。

「じゃ、行こっか。」

裸のまま、木の扉を開けてサウナ室へと入っていくマリの後ろ姿は、見慣れたはずの友人なのに、どこかたくましく見えた。

私もその後に続く。
扉を開けると、もわっとした熱気とともに、木の香りが鼻をくすぐった。

中は薄暗い。
裸電球がぽつんと吊るされていて、明るすぎないその光が、蒸気と木の壁を柔らかく照らしている。

段差のあるベンチに数人──男の人も、女の人も。
仲良く話したり、ただ静かに汗を流していたりしていた。

マリは一番上の段に座ると、壁に背を預けて、ふぅ、と深く息を吐いた。
私はというと、どこに座ればいいか戸惑ったまま、お尻にタオルを敷いてそろりそろりとベンチの端へ腰を下ろした。

熱い。けれど、不快じゃない。

木の表面は思ったよりもなめらかで、熱気が皮膚をなでるたび、じんわりと汗がにじんでくる。

全裸で座っていることも、最初のうちは自分の手や足の位置が気になって仕方なかったのに──
数分もしないうちに、少しずつ気にならなくなってきた。

周囲の人たちがまったく気にしていないからだろう。
ちらっと私の方を見た人がいたような気もするけど、すぐに目線は逸れた。じっと見つめてくるような人はいない。

むしろ、私はいま「空気」になっているのかもしれない。

(……なにこれ、けっこう気持ちいいかも。)

木の香り。肌を伝う汗。蒸気のリズム。
ぼーっとしてくる。思考がとけていく。

すると、となりでマリが立ち上がった。

「私、ちょっと涼んでくるね。外のベンチで寝てるから好きなだけ入ってて。」

そう言って扉の向こうへと消えていった。

私は頷くのがやっとだった。汗が首を伝って胸のあたりをつつっと滑り落ちる。
……もう少し、入っていたい。そう思えるくらいには、私は今くつろいでいた。

そのときだった。

「……ここで合ってるよ。」

ふいに、サウナ室の外から声がした。

耳に飛び込んできたその響きは、日本語だった。

「え、マジ?ここ混浴なんでしょ?やばくない?」

「大丈夫。観光客なんていないし、地元の人ばっかりだよ。俺はもう何回も来てるけど、誰も気にしてない。」

一人は落ち着いた口調。もう一人は少し戸惑っているようだった。

私は無意識に息を止めていた。
視線は変えず、体の力を抜くふりをしながら、鼓動だけが早くなる。

重たい木の扉がゆっくりと開く音がする。
中に差し込む明かりとともに、蒸気の向こうから二つの影が入ってきた。

黒髪。浅い肌。体つきも言葉も、まぎれもなく日本人だった。

男性二人は、私の方に向かって歩いてきた。

こっちのほうが空いているから、当然だった。
だが、心の準備はまったくできていなかった。

そして──ついに、目が合ってしまった。

金髪だらけの中、黒髪の私は目立っていたのだろうか。
その瞬間、私は完全に固まっていた。

気まずい沈黙の中、男性二人も足を止める。
そのうちの一人、現地に慣れている方が、やや遠慮がちに口を開いた。

「もしかして、日本の方ですか?」

フィンランド語か、せめて英語が話せれば、ごまかせたかもしれない。
けれど、もう逃げ場はなかった。

「はい、日本から旅行で来ました……」

言葉にしたとたん、さらに恥ずかしさが込み上げてくる。

やはり──日本人に裸を見られるのは、恥ずかしい。

隠すタイミングも、完全に逃してしまった。

私の顔、胸、そして陰毛まで──
彼の目線が順を追うように、静かに下がっていったのが分かった。
そのことが、何よりも恥ずかしかった。

「失礼しました。私たちは向こうに行きますので、ごゆっくり。」

そう言って軽く頭を下げた彼は、落ち着いた口調で礼儀正しかった。
さすがに慣れているのだろう。視線を逸らすタイミングも自然だった。

──紳士で良かった。
そう思い、私は少しだけ肩の力を抜いた。

けれど、もう一人。
日本から旅行で来たらしい男性は、どうやら違ったようだ。

こんな異国の地で、偶然にも裸の日本人女性を見てしまった驚きか──
あるいは、純粋な戸惑いだったのかもしれない。

彼は、私の目の前で──下半身のそれを反応させ始めていた。

私は瞬時に目を逸らしたが、視界の隅で、その変化が確かにわかった。

すると、最初に話しかけてきた男性が、無言でその頭をぺしんと叩いた。

「それは完全にマナー違反だからな。」

ピシャリとした一言だった。

私は経験がないわけではない。
けれど、こんな状況は初めてだった。

目の前に、日本人のそれが二本。
しかも、そのうち一本は、明らかに私を見て反応してしまっている。

熱気。羞恥。視線。

さっきまで平気だったはずの空間が、急に歪んで見えてきた。

サウナに長く入りすぎたのだろうか。
頭がぐるぐるとしてきて──そのまま、私は意識を手放してしまった。


まさか日本人の女性がいるなんて思わなかった。
しかも、けっこうかわいい。
胸の形も綺麗で……ヘアも、整っていた。

友人が話しかけているあいだ、俺はその姿を目に焼きつけていた。
あんなに至近距離で、あんなに堂々と、裸をさらしている女性を見るのは初めてだった。

当然、反応してしまった。

それに気づいた友人が、俺の頭を叩いた。

「それは完全にマナー違反だからな。」

咄嗟に目をそらしたけれど、もう遅かった。
このままじゃ本格的にアウトだ。
早くこの場から離れないと──そう思った、そのときだった。

彼女がふらつき、崩れるように倒れた。

「大丈夫ですか!」

すぐに友人が声をかけた。さすが頼りになるやつだ。
けれど彼女は、完全に気を失っていた。

扉の方で、サウナのスタッフらしき現地の男がこちらに手招きをしていた。
「こっちに連れてこい」とでも言いたげなジェスチャー。

どうすればいいのか、あたふたしていた俺に、友人が声をかけてきた。

「俺が上半身持つから、お前は足を持て!急ぐぞ!」

すでに彼は、彼女の両わきをしっかりと抱えていた。

俺は慌てて足元にまわり、彼女の両足の間にしゃがみこむようにして足を抱えた。

持ち上げようとした、その瞬間──気づいてしまった。

彼女の脚は、自然と開いた格好になっていた。

そして──
Vの形は整えられていたが、Iの部分は、驚くほどツルツルだった。

そのあまりにも無防備な姿に、目が離せなかった。

こんな明るい場所で、女性のあそこを見るなんて、人生で初めてだった。
いや、正直に言えば、暗いところでも見たことはない。

──童貞なんだから、仕方がない。

心の中でそう言い訳しながら、俺は必死にその光景を目に焼きつけていた。

こんなに可愛い女性の、大事なところを見る機会なんて、もう二度と無いかもしれない。
そんなことを、真剣に考えていた。


外に出て、彼女をベンチに寝かせると、すぐに女性が駆け寄ってきた。
さっきサウナで一緒にいた、彼女の友人だろう。

「どうしたの!大丈夫!?」

彼女は動揺した様子で、彼女の顔を覗き込みながら、友人──つまり俺の連れ──から状況を聞いていた。

ベンチに、全裸のままで横たわる彼女。
タオルも掛かっておらず、まぶしいほどの白い肌が露出していた。

(……これは、さすがに可哀想だな)

そう思って、俺は更衣室に向かった。
タオルを取りに行くついでに、自分のカバンに入っていたペットボトルの水も持ってこようと思った。

完全に善意のつもりだった。
何も考えず、ただ「気の毒だから」と思っての行動だった──はずだった。

更衣室に戻り、ロッカーから小さなカバンを引き出す。
その中に入っていた水を取り出すと、視界の端に、自分のスマートフォンが映った。

……一瞬、手が止まった。

(写真──いや、ダメだろ)

けど、頭のどこかで声がした。

(どうせバレない。助けたんだから、それくらい……)

喉が鳴る。
手のひらがじんわりと汗ばんできた。

──結局、スマホをバッグに忍ばせてしまった。
自分でも理由はよくわからなかった。ただ、流されるように、そうしていた。

外に戻ると、友人はまだ説明を続けていた。
周囲の人々は、自分の時間に集中していて、こちらのことなど気にしていないようだった。

(……掛けるときがチャンスかもしれない)

俺はタオルを広げ、彼女の体にそっと掛けようとした。
その一瞬、視線がどうしても逸らせなかった。

まず音が鳴ると不味いので動画モードにしてタオルに隠しつつ体を撮影した。
そのままカメラモードにしつつ綺麗なその部分をアップで撮影した。
そしてバックにスマホをしまい、タオルを掛けた。

我ながら手際の良さに驚くくらいだった。

そのとき、彼女の友人がこちらに振り返った。

「私の友達がごめんね。タオル、ありがとう。」

そう言って、俺の手をギュッと握ってきた。

……心が、少しだけ痛んだ。

俺は水を差し出し、それ以上何も言わず、その場を離れた。

あとは友人と一緒にサウナをもう一度楽しんだ。
整いながら、頭の片隅には、ずっとバッグの中のスマホの存在が引っかかっていた。

帰り支度をして外に出ると、彼女たちは待っていた。

服を着た彼女は、やはり可愛かった。
深々と頭を下げられ、「ご迷惑おかけしました」と礼を言われた。

バレてはいない。
──けれど、胸の奥には何かが残っていた。

その後、日本人同士せっかくなのでと、四人で食事をとり、その場で別れることにした。

サウナで生まれた縁は、そこで静かに終わった。はずだった。


エピローグ

旅先でまさか日本人に会うなんて。
しかもあんな場所で。
流石に裸を見られるのは恥ずかしかったな……。

意識を失っていたときも、見られてしまっていたのだろうか。
考えないようにしていたはずなのに、飛行機に乗る直前になってふと頭に浮かんでしまった。

そんなことを思いながら、私は搭乗口を抜け、機内へと足を踏み入れる。

席に着くと、すでに通路側に男性が座っていた。
私の席は窓際。その人の奥だった。

「すみません、私の席……窓際でして。」

「あ、はい。どうぞ。」

立ち上がった男性と、ふと目が合った。

──サウナで出会った、彼だった。

一瞬で記憶が蘇る。
あの熱気。あの空気。そして、あの視線──

お互い、顔が真っ赤になった。

「あ、あの、ど、どうぞ……」

急に挙動不審になった彼を見て、私は思わず笑ってしまった。

それにつられて、彼も笑ってくれた。

こんな偶然も、悪くないのかもしれない。
旅先で生まれた、ちょっと変な縁。
大事にするのも、ありかな。そう思った。

 

──後日、スマホの中の画像が見つかり、大げんかになるのはまた別の話。

END


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