お酒を飲みながら何気なくネットを見ていたら、ふと目についたサイトがあった。
「ヌードヨガ? なになに……日頃のストレス発散に、自分を解放しませんか?」
普段ならスルーするような内容だ。
だが今夜は、ストレス発散のために酒をあおり、すでに顔が火照るほど酔っている。
画面から目が離せない。
「へぇ……男女別コースと、男女混合コース?」
思わず笑ってしまう。
「混合なんて変態しか行かないだろ。」
軽口を叩きつつ写真をスクロールすると、意外にも女性が多い。
むしろ半分以上が女性だった。
「……すごいな。私には無理だけど。」
そう言いながらも、画像に映る開放的な笑顔に、なぜか胸がざわつく。
ヌードヨガのページを肴に、酒はさらに進んだ。
そして、酔いが回った頭で──。
「よし! 混合は無理でも、女性コースならいける!やってみよう!」
気づけばサイトに登録し、参加希望のボタンを押していた。
「さて、お風呂入って寝よっと。」
酒に飲まれた勢いのまま、ヌードヨガ参加が決まっていた。
翌日、見覚えのない番号からスマホが鳴った。
「誰だろ……。」
最初は無視していたが、数回立て続けにかかってくる。
流石に気になり、通話ボタンを押した。
「もしもし、ヨガスクールですが。」
……ヨガ? なんでヨガ?
そもそも私はヨガなんて一度もやったことがない。
「先日ご応募いただいた、ヌードヨガの件です。」
──ヌード…ヨガ?
頭の奥底に沈んでいた言葉が、無理やり引きずり出される。
そういえば、あの日……酔いつぶれる前に、そんなサイトを見ていたような……。
「は、はい…えっと、ヌードヨガの件ですか?」
「はい。今週の土曜日、夜8時からのコースになりました。遅刻の際は必ずご連絡くださいね。詳細はメールでもお送りします。」
こちらが何かを言う間もなく、流れるように話し終えると電話は切れた。
家に帰ってメールを開くと──本当に申し込んだ形跡と、細かい会場案内が記されていた。
「……酔ってた自分、恨むぞ。もう逃げられないじゃないか。」
そう心の中でぼやきながら、当日を迎えることになった。
当日の朝、鏡の前で全裸になって自分の体を確認する。
「ワキは……綺麗に剃った。下は……。」
視線を下ろすと、下半身にはポツポツと短い毛が生えてきていた。
そういえば──あの日、泥酔してお風呂に入ったときに剃ってしまったのだった。
それまで理由が思い出せなかったが、ヌードヨガの電話が終わった辺りで記憶の欠片が蘇えっていた。
「はぁ……これじゃ丸見えじゃない……。」
深いため息が漏れる。
酔った自分は一体、ヌードヨガに何でそこまで惹かれていたのか。
「ポツポツじゃ、かっこ悪いから……しっかり剃るか。」
せっかく伸ばそうと開き直っていたのにこれだ。
「あの日の自分を殴りたい……。」
そうつぶやきながら、風呂場へと足を向けた。
午後7時45分、私は件のヨガ教室の前に立っていた。
「……来てしまった。」
手ぶらでも良いらしいが、念のためタオルと水筒だけは持参している。
意を決して中へ入ると、受付には整った顔立ちの女性が立っていた。
「こんにちは。」
「あの、予約した鈴崎ですが。」
「はい、承っております。本日、8時からの混合コースですね。」
──は? 混合コース?
「いえ、あの……女性コースだったと思うんですが。」
「そうですか? 少々お待ちください。」
女性はパソコンとタブレットを操作し始めた。
心臓が妙に早く打つ。混合なんて……無理だろ。
「あの……確認しましたら、やはり混合コースで登録されていますね。」
そう言ってタブレットの画面をこちらに向ける。
確かに、そこには私のマイページと『混合コース』の文字があった。
「どうなさいますか? キャンセルの場合は、キャンセル料が発生してしまいますが。」
キャンセル料か……もったいないな。
ふと、あの日サイトで見た写真を思い出す。
確か、半分以上は女性だったはずだ。
──せっかく来たんだ。もう覚悟を決めるしかない。
「……わかりました。混合コースで大丈夫です。」
「では、こちらの参加承諾書をご記入いただき、料金をお願いします。」
承諾書には『裸になるが接触は禁止』『カメラ・スマホ持ち込み禁止』『お互いの個人情報の詮索禁止』などの注意事項が並んでいる。
サインをして料金を支払うと、スポーツブラと短パンのような運動着、タオル、ペットボトルの水を渡された。
「最初は裸ではなく、こちらの服を着てからスタートになります。」
なるほど──いきなり全裸よりは、少し心の準備ができそうだ。
更衣室に案内され、ロッカーの使用を促される。
「スマホの持ち込みは禁止ですので、後ほど受付にお預けください。」
撮影トラブル防止か。しっかりしているのは安心できる。
着替えを済ませ、スマホとロッカーの鍵を受付に預けた私は、ついにヨガルームへと足を踏み入れた。
ヨガルームに入ると、視界に入ったのは四人の男性。
女性の姿は……ない。
(もしかして、女性は私だけ……?)
軽く会釈して、少し距離を取った場所に腰を下ろす。
男性たちは皆、タンクトップに短パン姿だった。
(男の人は、それがレッスン着なのかな……。)
観察していると、どこかよそよそしい雰囲気が漂っている。
(もしかして、みんな初対面同士なのかも……。)
そんなことを考えていたとき、扉が開き、一人の女性が入ってきた。
私より少し年上の、整った顔立ちの美しい人だ。
「皆さん、こんばんは。今日は女性の参加者がいつもより少なくて、一人ですね。」
そう言って、彼女は私の方を見やる。
「安心してください、私も一緒ですから。」
柔らかな笑顔に、少しだけ緊張がほぐれた。
「ではまず、ストレッチから始めます。みんな、広がってくださいね。」
さすがに前列に出る勇気はなく、男性の後ろに位置を取った。
体を伸ばし始めると、運動不足のせいかすぐに息が上がり、室内の熱気も相まって汗が滲んでくる。
ウェアの背中や胸元がじわりと湿っていく感覚がわかる。
(……ちょっと恥ずかしいかも。)
ストレッチが終わると、軽いヨガの動きに移った。
片足でバランスを取りながら手を伸ばすポーズ、背中を反らしてお尻を高く上げるポーズ……見覚えのある姿勢がいくつも続く。
そして──その時が来た。
「では皆さん、円になってください。まずは、上だけ脱いでみましょう。」
先生を中心に、私たちはぐるりと円を描いて立つ。
(脱いだら……見られるよね……。)
一瞬ためらっていると、先生が迷いなくスポーツブラを外した。
そのバストは、いやらしさよりも先に、美しさを感じさせるものだった。
私もその動きに引きずられるように、上を脱いだ。
視線が胸元に集まる気配が、はっきりと伝わる。
もう……進むしかない。
全員が上半身裸になり、胸を張るようなポーズが続く。
腕を大きく開いて背筋を反らす「ラクダのポーズ」や、胸を突き出す「コブラのポーズ」。
動作のたびに、隠すというより「見せる」ことを意識させられる。
視線を集めているようで、やはり少し恥ずかしく、体がこわばった。
「そろそろ羞恥心もなくなってきたでしょう。──下も脱いでしまいましょう。」
そう言いながら、先生はためらいもなく短パンを下ろした。
目に飛び込んできたのは、つるりとした肌と、わずかに覗く割れ目。
──下を脱ぐのは……やっぱり勇気がいる。
周囲を見渡すと、男性たちも同じく躊躇している様子だった。
「はい、先生だけ裸にしておくつもりですか? 恥ずかしくないから、みんな脱ぎましょう。」
先生の明るい声に押され、一人、また一人と短パンが床に落ちていく。
あっという間に、男性陣は全員が全裸となり、残っているのは私だけ。
「大丈夫、恥ずかしくないですよ。」
その笑顔に、少しだけ背中を押され、私はスッとウエアを下ろした。
室内の空気が一気に肌に触れる。
凝視はされないが、ちらちらと視線が向けられている気配は確かにあった。
──男性の前で全裸になるなんて……人生で初めてのことだった。
再びヨガのレッスンが始まった。
だが、誰も集中できていない。
互いの下半身がどうしても視界に入り、すぐにバランスを崩したり、ポーズが中途半端になったりしていた。
見かねた先生が口を開く。
「みんな、自分の裸を気にしすぎです。──仕方ないので、横一列に並んでください。手は後ろで組んで。」
言われるままに横一列に並び、腕を背中で組む。
もう、隠す術はない。
先生は私たちの前に立つと、両手を胸の前で合わせ、祈るような形を作りながら足を大きく開き、そのまま腰を落とした。
自然と視線は股間へと引き寄せられる。
恥ずかしいほどに、そこははっきりと開かれていた。
つるりとした恥丘がわずかに前へ突き出し、脚の間には細く浅い溝が影を落としていた。
その奥では、わずかに開いた花弁のような皮膚の隙間から、小さなひだが顔を覗かせている。
さらにその上には、ぷっくりと盛り上がった小さな突起が、はっきりと形を見せていた。
「これが花輪のポーズです。──これから、一人ずつ前に出てやってもらいます。」
一瞬、意味が理解できなかった。
あんな大胆な姿勢を……私が?
混乱する私の横で、先生は一人の男性を指名した。
どうやら端から順に進めていくらしい。
(……私は、最後か。)
一人目の男性が前に出て、花輪のポーズを取った。
彼のそれは大きいとは言えず、しかも皮を被っていた。
(……大人の人も皮って被ってるんだ。)
初めて間近で見るそれに、目が離せない。
すると先生が何を思ったのか、指先で皮をスッと剥いた。
薄い皮の下から、淡いピンク色の先端が露わになる。
「はい、よく頑張りました。これでもう恥ずかしくないですね。」
男性の表情を見ると、先ほどよりも堂々としているように見えた。
二人目は、一人目よりも大きく、最初から皮が剥けていた。
三人目は大きさこそ二人目と変わらなかったが、皮を被っており、やはり先生の手で剥かれてしまった。
(あの二人くらいが、平均の大きさなのかな……。)
そう頭の中で比べながら見ていると、次は四人目だった。
最初から気づいてはいたが、人一倍大きく、しかも剥けている。
彼が花輪のポーズを取ると──変化が見えた。
皆の視線を浴びたせいか、ゆっくりと首をもたげ、形を変えていく。
そして、見る間にさらに大きく、硬くなっていった。
(……いやいや、あんなの絶対入らないって……。)
思わず心の中でつぶやく。
「はい、これは生理現象ですからね。自然なことです。」
先生の説明は耳に入ったが、右から左へと抜けていった。
ついに、私の番が来た。
ただ皆の前に立つだけで、全身が熱くなる。
胸にも、そして股間にも視線が集まっているのが、いやというほどわかる。
(……みんな、これを乗り越えていったのよね。私も負けられない。)
胸の前で手を合わせ、祈るような形を作る。
私は先生ほど胸も大きくないし、あそこも綺麗じゃない──でも、やるしかない。
足を開き、ゆっくりと腰を落としていく。
閉じていたそこが、じわりと開いていく感覚。
同時に、視線が一点に集まっていくのがわかる。
(……私の恥ずかしいところ、初めて見せるんだから。変だなんて思ったら許さない。)
そう心で呟きながら、花輪のポーズが完成した。
その瞬間、先生の手が伸び、わずかに開いていた口を──思い切りクパッと広げられた。
「ひっ!」
意図せぬ声が漏れる。
きっと、先ほどの男性が皮を剥かれたときもこんな感じだったのだろう。
「はい、綺麗ですね。皆さん、よく見てあげてくださいね。」
注がれる視線で、そこが熱を帯びていくのがわかる。
そして──ひとしずく、つうっと垂れた。
「あらあら、見てもらえて嬉しかったのね。」
先生はティッシュを取り、優しく拭ってくれた。
その一部始終を見られ、羞恥心の向こう側に突き抜けていた。
今までの恥ずかしがりようが、馬鹿らしく思えるほどだった。
──もう、大丈夫。
そう思いながら、再び皆で円を作った。
皆、すっかり吹っ切れたのだろう。
どんなポーズも、ためらいなく積極的にこなしていく。
背を反らせて胸を突き出す「橋のポーズ」、腰を高く上げる「ダウンドッグ」。
そのたびに、視線が交差し、誰も隠そうとはしなかった。
やがて「ハッピーベイビーのポーズ」に移る。
仰向けになって両足を抱え、大きく開いた股間が全員にさらされる。
恥ずかしさはある──だが、それ以上に心地よさが勝っていた。
もう、エロい気持ちなどどこかへ飛んでしまっていた。
そして、終了の時が来た。
「皆さん、よく頑張りました。シャワーを浴びて、少しゆっくりしてからご帰宅ください。」
パチパチと拍手が起こる。
不思議と、少し名残惜しくすら感じた。
「先に男性から退出をお願いします。」
男性たちは服やタオルを手に、ぞろぞろと部屋を出ていった。
「どうでした? 恥ずかしかったですか?」
「はい……最初は恥ずかしかったけど、みんなの前でポーズをとってからは、開き直れました。」
「それはよかったです。また参加してみてくださいね。」
私は曖昧な笑顔で返した。
エピローグ
シャワーを浴び終えると、女性専用の控え室に通され、お茶が出された。
「男性のご帰宅が確認されるまで、こちらでごゆっくりしてください。」
帰り際に顔を合わせるのは気まずい──きっと、そのための配慮なのだろう。
ありがたいと思いながら、お茶を口にする。
そして今日のことを思い返していた。
(……いや、やっぱり花輪のポーズのとき、あれだけ開かれたのっておかしくない?)
思い返すと頬が熱くなる。
でも、あの瞬間に開き直れたのも事実だ。
先生なりの荒療治……なのかもしれない。
ふと、あのとき注がれた視線を思い出す。
下腹部がじんわりと熱を持ち、わずかに疼いた。
恥ずかしさと、不思議な満足感が混ざり合った感覚──。
そして、レッスン中に見た男性たちの姿が脳裏に浮かぶ。
(……かわいいのも、大きいのもあったな。でも……あのサイズは流石に入らないよね。)
自分の彼氏になる人があの勃起したサイズだと勝手に想像してしまい、慌てて首を振る。
(いやいやいや、何考えてるのよ私……。)
変なことを思い出してしまった自分が、少しおかしかった。
トントンとノックの音がし、扉が開いた。
「鈴崎さん、いつでもお帰りいただけます。よければまた参加してくださいね。」
笑顔でそう言われ、私は軽く会釈する。
「……気が向いたら、来ます。」
控え室を出るとき、ほんの少し足取りが軽くなっている自分に気づく。
もしかしたら、意外と早く来ることになるかもしれない。
もちろん、そのときも混合コースで。
(……みんな、恥ずかしがるといいな。)
そんなことを小さく呟きながら、夜風の中を帰路についた。
END


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