PixivFANBOX先行公開【創作羞恥小説】血の契約

創作羞恥CFNM

ポケットの中には、福引きの半券がちょうど10枚。
これで一回だけ、運試しができる。

狙いはもちろん、特賞の電動自転車だ。
……とは言ったものの、たかだか一回の抽選で奇跡が起きるなんてこれっぽっちも思っていない。
せいぜい参加賞のポケットティッシュかお菓子でも貰って、さっさと帰るつもりだった。

「はい、いらっしゃい!一回ね!」

威勢のいい係員に促され、俺は古びた抽選器──ガラガラに手をかけた。
無心で回すと、カラリと乾いた音を立てて青色の玉が転がり出た。

「おめでとうございます!」

カランカラン、と響き渡る鐘の音。
もしかして一等か!?と一瞬だけ心臓が跳ね上がったが、現実はそう甘くない。

「はい、4等のBOXティッシュ5個セットでーす!」

……なんとも紛らわしい演出だ。
期待した分だけ少しがっかりしたが、冷静になれば一人暮らしの男にとってティッシュの備蓄ほどありがたいものはない。
「あればあるほどいい。」と自分に言い聞かせ、俺はその大きな塊を抱えるようにして家路についた。

帰宅し、さっそく一箱取り出してみる。
見たこともない古くさいパッケージだったが、指先に触れた質感は驚くほど滑らかだった。

「……案外、悪くないな。」


その夜のことだ。
奇妙なムラムラに抗えず、俺は一人、欲望の赴くままに耽っていた。
だが、絶頂の寸前で致命的なミスに気づく。──手元に、ティッシュがない。

「……っ!?」

もう止められなかった。
溢れ出したものを咄嗟に掌で受け止め、どうにか周囲を汚さずに済ませる。

「危ない危ない……」

安堵の吐息を漏らすが、両手は白濁した液体でべっとりと汚れていた。
俺は仕方なく、その手のまま、今日貰ったあのティッシュ箱へ手を伸ばした。
その瞬間だった。

箱の取り出し口から、「手」が飛び出してきたのだ。

「うわあああ!」

それは俺の手をがっしりと掴み、強引に握手の形を作った。
あまりの恐怖に腰が抜け、派手に尻餅をつく。
その勢いに引きずられるようにして、箱の中から一人の女がずるりと這い出してきた。

女は俺の手を握ったまま、見下ろすようにニヤリと笑った。

「くくく……やっと現世に現れることができたか。」

女は俺を値踏みするように眺め、鼻で笑う。

「ふむ。なかなか冴えない男だが、貴様との『血の契約』のおかげじゃ。少しだけ感謝してやろう。」

「ち、血の契約……?」

訳が分からず困惑する俺に、女は勝ち誇ったように言い放った。

「理解できぬか。貴様は今、血のついた手で我と握手をしたであろう。それが古より伝わる契約の儀式じゃ。」

女は繋いでいた手を離し、自身の掌をこちらに突きつけた。

「見よこの手を。貴様の血が、しかと付着しておるではないか。」

しかし、そこに付着していたのは、どう見ても血ではなかった。

「あ、あの……それ、血じゃないんですけど……」

おずおずと答える俺に、女は小首をかしげる。

「……じゃったら、なんじゃというのだ?」

「ものすごく言いにくいのですが……精液、かなぁって……」

ちょっとテヘっと言った感じで答えた瞬間、女の顔はみるみるうちに赤く染まっていった。
羞恥か、あるいは怒りか。……どうやら後者のようだ。

「貴様ぁ!なんてことをしてくれたんじゃ!」

まさに鬼の形相。女は恐ろしい気迫で俺に迫ってくる。
そもそも、そんなもので契約が成立してしまうシステムの方が欠陥品な気がするのだが、彼女にそんな理屈は通じない。

「き、貴様の……そんな汚れたモノで……っ!」

散々な言い草だ。その時、彼女の目がふと俺の右腕に止まった。
さっきの転倒で机から物が落ちた際、角で擦ったのだろう。
うっすらと本物の血が滲んでいた。

「ふふ……。ようやく食事にありつけそうじゃ。」

女は表情を一変させ、飢えた獣のような顔で俺の腕に顔を寄せた。
蛇に睨まれた蛙のように体が動かない。
まずい、と思った瞬間、腕にぬるりとした感触が走った。

だが、彼女はすぐに顔をしかめて飛び退いた。

「なんじゃこれは!まずい!貴様、血まで汚れておるのか!」

心が折れそうな暴言が飛んでくる。

「これでは食事が取れぬではないか……。貴様は本当に役に立たぬな……。」

一方的に現れたくせに何を……。
ギャーギャー言いながらも、なぜか彼女は自分の掌をクンクン嗅いでいた。

「あ、すいません……手が汚れてますよね、今これで……」

と、足元のティッシュを差し出そうとした、その時だった。

「……待て。」

彼女は俺を制止し、改めて自身の掌をクンクンと嗅ぎ始めた。
先ほど俺が「契約」してしまった、あの掌を。

「な、なんじゃこれは……。すごく、美味そうな匂いがする……。」

信じられないものを見る目で、彼女は自分の掌をペロリと舐めた。

「うっ!……美味すぎる!」

プライドも怒りもどこへやら、彼女は一心不乱に自分の手を舐めとり始めた。
どうやら契約の狂いのせいで、彼女の主食は「血」から「精液」へと書き換えられてしまったらしい……。


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